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【179】 見極め
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騎士団長ノエルは去った。
トラモントの件は見逃して貰えたらしい。
「強い人だったな」
ソレイユに抱きつかれながらも、率直な感想を漏らした。
「ええ。ノエルは、あたしよりも強くて最高の騎士だと思う」
「そうかもしれない。でも、俺はソレイユこそが最高の騎士だと信じているよ」
「…………」
ソレイユは耳まで真っ赤にして、顔を俺の胸に埋めた。その桃色の髪を優しく撫でていれば、ミーティアの羨ましそうな視線が向けられていた。
……あ。
「ミーティアも後でな」
「うん。絶対だよ! ところで、トラモントさんどうしよっか」
おっとイカン、忘れていた。
気づけば、執事のダンさんやメイド達も異常を察知して、駆けつけていた。事情を話して、対応してもらおう。
「ダンさん、実は――」
これまでの経緯を簡潔に説明した。
ダンさんは渋い顔で理解し、俺を見つめた。なんて気迫だ。
「成程。……その話からしてノエル様は、カイト様がベルガマスク・セルリアンであるのかどうか見極めに来られたのかもしれませぬな」
……そうか。
その為に……わざわざ一人で。
敢えて俺ではなく、ソレイユと衝突する事で真意を確かめたに違いない。そうでなければ、最初から騎士団を連れて来ていただろう。そして、俺はとっくに捕まって――処刑されていたはず。
俺から離れるソレイユも納得して、腕を組んだ。
「有り得そうね。ノエルのヤツ、それほど本気じゃなかったし……戦地でのノエルはあんなものじゃないわ。あたしは何度も戦地で、彼女の傍で、その実力を目の当たりにしているんだから」
なんだって……あれで本気じゃないって……。やはり、伝説は伝説なのだな。いつか、その本気のノエルを見られる時がやって来るのだろうか。
勝手なイメージを膨らませていれば、ダンさんが前へ。
「ソレイユ様、私共は瓦礫の撤去作業へ参ります。御入用であればいつでもお申し付け下さいませ」
一礼し、崩壊した壁の方へ向かって行った。俺も後で手伝おう。エクリプス家には、随分とお世話になっているしな。
◆
トラモントは、別室へ運ばれたようだ。
凄まじい一撃を受けたようで、彼の腹の肉は、酷く抉れていたようだ。それは、ノエルの剣撃がどれほど凄まじいか物語っていた。
「俺が受けていたら……死んでいたかもな」
自室からオルビスの塔を眺めていれば、背後に重みを感じた。これは、最近甘えん坊のミーティアだな。
「約束でしょ、カイト」
「おう、そうだな」
小さなダークエルフを抱きかかえ、そのままベッドへダイブ。ぼぅんと跳ねた。それから俺は仰向けになり、身体の上へミーティアを乗せた。
「あはっ、カイトってば……擽ったい」
「ミーティアは柔らかいな。肌もツヤツヤしているし、この金の髪も溜息が出る程に美しい……こんな世界一可愛いダークエルフが妹とか俺は幸せ者だな」
「うん、ありがとねっ」
向日葵のような笑顔を向けてくれ、俺はドキッとしてしまった。可愛すぎるだろう……この妹。
ついでにこの角度なので、谷間が眼前に迫っていた……。ミーティアは、小柄の割に胸が大きいので目のやり場に困る。ダークとはいえ、さすがエルフ。素晴らしいモノをお持ち……うぐッ、馬鹿か俺は! 義理とはいえ、妹に発情してどうするッ、抑えろ俺。煩悩退散…………喝ッ!
べ、別の話題を。
「……今頃ルナは、どうしているだろうな……心配だ」
「ルナさんは、オルビスにいるんだよね」
「ああ、俺の為にな。どうにか状況を知る方法とかないのかな」
「状況を? それなら私が何とかしてあげよっか」
「え……出来るのか!?」
「今は『太陽』だから……そうね、お日様の目を借りれば見られるかも。一番視認し易いのは『月』だけどね」
そういう遠見スキルがあるらしい。
「じゃあ、映し出すけど寝たままで視聴出来るから、そのままね」
「分かった。ミーティアをこのまま抱いてるよ」
「うん」
このゴロ寝体勢でも見られるとはな。
それから、ミーティアは杖をベッドの前に召喚させ、自立させた。本来なら倒れる筈なのだが、杖はそのまま直立不動だった。
「――アデッソ」
ミーティアがスキルを使うと、目の前に大きな画面がフワッと現れた。……なんだこりゃ、ホログラムか。なんて迫力のある大画面だ。
そこに映し出されるオルビスらしき城内。赤い絨毯の敷かれた通路を歩くメイド――ではなく、皇女。腰まで伸びる月夜のようなクリーム色の髪。赤黒のドレス。目を奪われるような装飾は間違いない。
「……ルナ」
トラモントの件は見逃して貰えたらしい。
「強い人だったな」
ソレイユに抱きつかれながらも、率直な感想を漏らした。
「ええ。ノエルは、あたしよりも強くて最高の騎士だと思う」
「そうかもしれない。でも、俺はソレイユこそが最高の騎士だと信じているよ」
「…………」
ソレイユは耳まで真っ赤にして、顔を俺の胸に埋めた。その桃色の髪を優しく撫でていれば、ミーティアの羨ましそうな視線が向けられていた。
……あ。
「ミーティアも後でな」
「うん。絶対だよ! ところで、トラモントさんどうしよっか」
おっとイカン、忘れていた。
気づけば、執事のダンさんやメイド達も異常を察知して、駆けつけていた。事情を話して、対応してもらおう。
「ダンさん、実は――」
これまでの経緯を簡潔に説明した。
ダンさんは渋い顔で理解し、俺を見つめた。なんて気迫だ。
「成程。……その話からしてノエル様は、カイト様がベルガマスク・セルリアンであるのかどうか見極めに来られたのかもしれませぬな」
……そうか。
その為に……わざわざ一人で。
敢えて俺ではなく、ソレイユと衝突する事で真意を確かめたに違いない。そうでなければ、最初から騎士団を連れて来ていただろう。そして、俺はとっくに捕まって――処刑されていたはず。
俺から離れるソレイユも納得して、腕を組んだ。
「有り得そうね。ノエルのヤツ、それほど本気じゃなかったし……戦地でのノエルはあんなものじゃないわ。あたしは何度も戦地で、彼女の傍で、その実力を目の当たりにしているんだから」
なんだって……あれで本気じゃないって……。やはり、伝説は伝説なのだな。いつか、その本気のノエルを見られる時がやって来るのだろうか。
勝手なイメージを膨らませていれば、ダンさんが前へ。
「ソレイユ様、私共は瓦礫の撤去作業へ参ります。御入用であればいつでもお申し付け下さいませ」
一礼し、崩壊した壁の方へ向かって行った。俺も後で手伝おう。エクリプス家には、随分とお世話になっているしな。
◆
トラモントは、別室へ運ばれたようだ。
凄まじい一撃を受けたようで、彼の腹の肉は、酷く抉れていたようだ。それは、ノエルの剣撃がどれほど凄まじいか物語っていた。
「俺が受けていたら……死んでいたかもな」
自室からオルビスの塔を眺めていれば、背後に重みを感じた。これは、最近甘えん坊のミーティアだな。
「約束でしょ、カイト」
「おう、そうだな」
小さなダークエルフを抱きかかえ、そのままベッドへダイブ。ぼぅんと跳ねた。それから俺は仰向けになり、身体の上へミーティアを乗せた。
「あはっ、カイトってば……擽ったい」
「ミーティアは柔らかいな。肌もツヤツヤしているし、この金の髪も溜息が出る程に美しい……こんな世界一可愛いダークエルフが妹とか俺は幸せ者だな」
「うん、ありがとねっ」
向日葵のような笑顔を向けてくれ、俺はドキッとしてしまった。可愛すぎるだろう……この妹。
ついでにこの角度なので、谷間が眼前に迫っていた……。ミーティアは、小柄の割に胸が大きいので目のやり場に困る。ダークとはいえ、さすがエルフ。素晴らしいモノをお持ち……うぐッ、馬鹿か俺は! 義理とはいえ、妹に発情してどうするッ、抑えろ俺。煩悩退散…………喝ッ!
べ、別の話題を。
「……今頃ルナは、どうしているだろうな……心配だ」
「ルナさんは、オルビスにいるんだよね」
「ああ、俺の為にな。どうにか状況を知る方法とかないのかな」
「状況を? それなら私が何とかしてあげよっか」
「え……出来るのか!?」
「今は『太陽』だから……そうね、お日様の目を借りれば見られるかも。一番視認し易いのは『月』だけどね」
そういう遠見スキルがあるらしい。
「じゃあ、映し出すけど寝たままで視聴出来るから、そのままね」
「分かった。ミーティアをこのまま抱いてるよ」
「うん」
このゴロ寝体勢でも見られるとはな。
それから、ミーティアは杖をベッドの前に召喚させ、自立させた。本来なら倒れる筈なのだが、杖はそのまま直立不動だった。
「――アデッソ」
ミーティアがスキルを使うと、目の前に大きな画面がフワッと現れた。……なんだこりゃ、ホログラムか。なんて迫力のある大画面だ。
そこに映し出されるオルビスらしき城内。赤い絨毯の敷かれた通路を歩くメイド――ではなく、皇女。腰まで伸びる月夜のようなクリーム色の髪。赤黒のドレス。目を奪われるような装飾は間違いない。
「……ルナ」
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