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【164】 最後のカギ

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 一歩、また一歩と近づいて、問い詰める。

「……ブラック卿、何を知っておられるんですか。俺に何をした……全てを教えて戴きたい」


 卿は椅子いすから立ち上がり、後退していく。
 いやな汗を垂らして表情も硬い。


「まあまて、落ち着け。いいか……カイト、ミーティアと結婚すれば全てを教えてやろう。クラールハイト家に婿入むこいりするのだ。さすれば、キミは……パライバトルマリンを上回る無限の力を……この私は皇帝の座を手に入れられる……どうだ、話に乗らないか! その古き遺物……オルビスを絶やさねば、帝国・レッドムーンに未来はないのだからな!」


 無限の力? 皇帝の座? オルビスを絶やすだって!? そんな事の為に俺とミーティアをくっ付けたがっているのかよ。ふざけんな。

 それをずっと聞いていたルナも、また一歩前へ。その眼差しは赫怒かくどに満ちていた。その様子に、ブラック卿はこれまでになく慌てる。


「……ひっ! カイト、よく聞け! お前の記憶を操作したのは、確かにこの私だ……だがな、これは全て、帝国・レッドムーンの為なのだ。私の計画ならばこの帝国は……いや、この世界を治められよう……!」


「やっぱりアンタが!」


「ああ、キミにもいつか分かるさ……クラールハイト家が正しかったとな! 我が計画こそが未来を切り開くとな。……さあ、まだ遅くはない。カイト、我が息子になれ! お前の『レベル売買』は、当初は使えぬゴミと思うていたが……大きな間違いだった。それは全てを終わらせるカギだったのだよ。言ってしまえば……神の力さ」


 ……なんだって、俺の力が?
 確か、以前にも誰かが『最後のカギ・・・・・』と――そうだ、エキナセアか。どうして、俺のスキルがそれほど重要視されているか分からん。だから、結婚させたがっているのだろう。我が物にしたいのだろう。でもな、俺は誰のモノでもねぇよ。俺には俺の意志がある。


「お断りだ」
「だろうな。いやいいさ、その時は必ず来るのだからな」


 じわじわと後退していくブラック卿、それに対し、俺とルナも彼を追い詰めていく。逃がすワケにはいかない。特にルナは、今にも飛び掛かりそうな勢いだった。


「ブラック卿……弁明は大監獄にてこう。今素直に投降するのであれば痛い目は遭わないで済む」
「生憎ですが、捕まる気はないのですよ、ルナ様」


 ついに窓にまで追い詰められるブラック卿。
 もう後がない。

 だが、ヤツは尋常じゃない汗を流しながらも……ニヤリと不気味に笑った。……なんだこの感じ。いや、気配……!



「……フフ、これで追い詰めたつもりか? こんな事もあろうかと、ある男を雇っておいた。来い! トラモント!!」



 バコォっと壁が激しく突き破られる。
 まずいと思って、俺はルナ抱えて後ろへ。


「カイト様、これは……」
「ああ、ヤツだ」


 巨体が目の前に現れた。……おいおい、あの分厚い壁をブチ破って……! ムチャクチャな! てか、この山のような大男は、トラモントかよ。


 手にはあの大戦斧・エンディミオン。ブラック卿を守るように俺たちの前に姿を現した。……最初からそのつもりだったか。


 けどな、その男を逃がすワケにはいかん。


「レベルアップ開始……!」
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