あなたのレベル買い取ります! 無能と罵られ最強ギルドを追放されたので、世界で唯一の店を出した ~俺だけの【レベル売買】スキルで稼ぎまくり~

桜井正宗

文字の大きさ
147 / 319

【147】 魔法使いの想い(ミーティア視点)

しおりを挟む
 クラールハイト家から旅立ち、一年。
 世界各地を巡って、セイフの街で偶然出会ったソレイユさんからカイトの噂を聞いて、私は『イルミネイト』へ入った。

 怨敵おんてきである【共和国・ブルームーン】のファルベ家から二億の借金を背負わされたからだ。だから、レベルを売るために彼の元を訪れた。けれど、カイトが二億の借金を肩代わりしてくれて――今があった。


 目を閉じ、ここまでの道のりを改めれば、苦労が浮かんで来るようだった――。


 あれから一ヶ月あまり、気づけば故郷である【帝国・レッドムーン】へ戻っていた。城門前では、大賢者パラディ・アプレミディ卿と偶然(?)出逢い、変わった形の杖を貰った。その名も『インフィニティ』という。


 もともと、彼の賢者の杖なのだが、何故か私に託してきた。――いや、理由はあった。

 カイトを守れと。


 この先に訪れるであろう『原初』の戦いに備えよという、ある種の警告を受けた。その意味は今の私には分からない。


 何にしても、この杖はカイトだけではなく――みんなを守る力となる。


 私は、大切なみんなを、イルミネイトを守りたい。



「――さてと」



 考えはまとまった。
 貰った自室、四階にある部屋は広くて、落ち着いて物事を思案できる。広すぎて、ちょっと寂しいけど……。やっぱり、ソレイユさんと一緒にしてもらおうかな。


 これまた広すぎるベッドから降りて、スリッパを履く。このまま、五階にあるという『温泉』を目指す。こんな深夜帯ならば誰もいないだろうし、同時に温泉の独占権を獲得できるチャンス。


「楽しみ~♪」


 寝間着姿のまま長い通路を歩いてゆき、魔導式のエレベーターで五階へ。やはり、長い通路をテクテク歩いて、やっと大浴場の前。ここだけ何故か落ち着きのある木造の扉。それをガラっと開けて中へ入った。

 まずは、脱衣所。
 急いで寝巻を脱ぎ捨て、籠へ。下着もぽいっと。

 裸になって向かって第二の扉へ行く。
 そこもガラっと開けて入れば――


「――――」


 ――驚いた。

 深夜とはいえ、帝国の夜景が広がっていた。

 淡いネオンが微かに明滅めいめつを繰り返す。


 その四階とはまた違った、心を打たれる俯瞰ふかん風景ふうけいに魅入られながら、暗闇を進み――私はマナーを守って、きちんとかけ湯を済ませた。幸い、赤の月明かりがある程度の範囲を照らしてくれていた。それから、正方形に広がる大浴場へ足をつけていく。


「あったかい……」


 ほのかな温かさを感じた。
 その時、視線も感じた。


「え……」


 まさか、誰かいる?

 幽霊!?


 だとしたら、まずい……私、幽霊は大の苦手。怖くなって、風属性魔法・ライトニングボルトで明かりを灯した。

 バリバリと私の掌の上で雷が唸る。

 その光によって、大浴場全体が照らされて――


「カ……カイト……?」


 そこには見知った顔が。
 割と堂々と穏やかに私を見ていた。


 それから、彼は短く反応した。


「お、おう……ミーティア」


 そして気づけば、私は裸。それを思い出して、赤面して叫びそうになったけど――自身の口を両手で無理やり押え込み、声を押し殺した。

「…………っ」

 危ない……カイトの信用を失墜させてしまうところだった。もし叫んで、ルナさんとソレイユさんにこの現場を目撃されると大変だ。
 一日目にしてイルミネイト解散なんて……イヤ。


 逃げ出したいくらいに激しい羞恥心はあったけれど、でも、そんな単純な行動すらも思うようにいかなくて、頭が真っ白になった。だから、立ち尽くすしかなくて――。


「ミーティア、ごめんな。俺が先に入っていたんだが……明かりを付けておくべきだったな。でもほら、夜景が綺麗だろう」

 その通り、今もキラキラと宝石のようにネオンが輝いている。明かりを付けてしまうのは勿体ない。そんな事を思えば、不思議と緊張感が解れていた。

 腕で上手く胸を隠して、私はゆっくりお湯に浸かって――背を向けた。


「…………」


 少し沈黙。
 ちょっと時間が経過して、カイトはこう言った。

「叫ぶの我慢してくれたんだな」
「カイトは悪くありませんよ、私の不注意です」
「だが……」


「……私にとってはカイトは特別な存在なんです。だから、叫ぼうとしたのは申し訳なかったです。男の人とお風呂なんて初めてだったから……心が驚いちゃっただけなんです。もちろん、これが他の男性であったのならば問答無用で叫んでいましたし、魔法をぶち込んでやったでしょう。でも、一番信頼しているカイトだから問題ありません」


 だって、私はカイトを上司として尊敬しているし、好きだから。なので問題はない。蔑むことも恐れる必要もない。

 少しずつ彼に寄っていく。


「ミーティア……」


 彼も察して、顔に緊張が走る。


「いつも通りにお話をしましょう、カイト」
「分かった」


 そのまま肩をぴったりくっ付け、距離を縮めた。そこでトクンと心臓が高鳴った。段々、ドキドキに変わっていき、自身でもヤバイほどに緊張しているのが分かった。

 好きな人だから余計に。

「あの……カイト、あんまりジロジロ見ないで下さいね……」
「知っての通り、俺は女体耐性はゼロに等しい。ルナで多少マシになったとはいえ、ダークエルフは格別……今もギリギリだ」


 ――と、カイトは鼻を押さえ、顔を赤くさせた。そんな面白おかしくされると、悪戯したくなった。立ち上がって、彼の股に挟まれるようにして身を委ねてみた。


「――――」


 カイトは固まって、顔を更に赤くさせ、目をグルグル回していた。今にも鼻血を噴き出しそうな……そんな予兆が。
 もう勢いでやっちゃえと、背中を預けて密着。

 なんだろう、この圧倒的な安心感。

 最初こそ動揺とか羞恥心とかで混乱したけれど、今は嬉しいって感情で満たされていた。――そっか、こうして好きな人といると、こんなにも楽しいんだ。だから、ルナさんはいつも楽しそうに。
 やっと理由が分かった。


 ふと、私はラズベリーの事を思い出して、


「お兄ちゃん……」


 って、カイトを呼んでいた。



 ――――ガタッっ、と、彼は失神してしまった。私の方に大きな身体がもたれ掛かってくる。



「カ、カイト! カイト!? カイトってば……!」



 や、やりすぎちゃった……みたい。

 急いで杖・インフィニティを召喚し、魔法でカイトを脱衣所へ運ぶ。身体を乾かして、服も着させた。


 まさか、倒れちゃうなんて……。


 でも、


 今夜月で色々分かった事がある。

 私はカイトが上司としてではなく、異性として好きなんだと気付かされた。……カイトにもっと私を見て欲しい。感じて、欲しい。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

処理中です...