上 下
122 / 308

【122】 フレッサー商会

しおりを挟む
 現在、帝国の『N地区』を歩いている。
 此処ここは、たくさんの冒険者も行き交って活気があった。何故なら露店街・・・に指定されており、商人も多く存在したからだ。
 遠路えんろ遥々はるばるやって来る冒険者にレアアイテムを売る為、商人たちは必死に客寄せをしている。見知った顔もチラホラいるな。

 にぎやかでいいなぁ。
 俺も早く商売しないとな。

 みんなを連れて、新生イルミネイトの候補地を探し求め露店街を歩く。そのついでに噂の『殺人鬼・ディスガイズ』の情報も入手したいところ。


 そんなわけで、まずは信頼できる知り合い『フレッサー商会』を訪ねてみた。今はその建物の前に到着した。


「……フレッサー商会?」

 ポツリとルナがつぶやく。

「あ、このお店の名前、聞いた事があるような」

 ミーティアも反応を示し、店の看板を見上げた。
 吹き抜ける風によって金の髪がなびく。
 何かの名シーンのようになっているな。

「これアレじゃない。セイフの街でシャロウに襲われた時、駆けつけてくれたギルドよね」

 冒険者の目に触れないよう、フードを深く被るソレイユは正解を答えた。そう、その通り。あのシャロウ襲撃事件で助力してくれた商会ギルドだった。


「そんなワケで入るぞ」


 歩き出すと直ぐに異変が。店の奥から大きなが飛び跳ねてきて――それが地面にズサッと倒れた。しかも丁度、ルナの目の前に。

「え……なんでしょう?」

 目の前の物体に、ルナは一歩引く。
 それから両手で口をふさいだ。

「カイト様……」

 困惑してルナは立ち止まった。

 ふむ……吹っ飛んできたのは男の人間・・だった。仰向けに倒れ、目をパチクリしているところ意識はあるらしい。とりあえず、何よりも一安心したのが、ルナのスカートが長くて良かったこと。ソレイユのようにミニスカだったら丸見えだったな。

 ――いや、それはいいな。

 それから男はヨロヨロと立ち上がり……突然、ルナを押し倒そうとした。


「ふざけんな!!」


 俺は咄嗟とっさに男の手をはたいた。

「……ぐっ」

 あっぶねぇ……!
 ていうか、汚い手で触れるんじゃねえ。

「ルナ!」
「……はいっ」

 何故かしがみついてくるルナ。手に力は入っておらず、やや震えているように見える。……怖かったのかな。よし、この俺が守ってやる。


「何なんですか、この男」


 ミーティアも警戒し、俺の方へ。いや、ソレイユも。なんか知らんが皆に寄られている俺。そんな寄られると、いざという時に守り辛いのだがヨシとしよう。

 ちょいと焦っていると、フレッサー商会の奥からゴツゴツと足音が。誰か出てきた。それは……黒髪の紳士だった。


「…………まったく、我が盟友の情報を盗もうなど、片腹痛い。――おや、これはこれは! 我が友・カイトではありませんか!」


 超ビッシリ決まっている高級スーツ姿の男。
 そんな場違いな男がこちらへ向かってくる。――間違いない、あのオールバックのスーパー紳士にして『死の商人』、『鬼畜商人』、『世界最高のアイテム鑑定師』、『天才モンスターテイマー』、『爆薬類取扱保安責任者』などなど肩書をアホほど持つ有能は――。


「よう、トニー! やっぱり、お前も帝国の本部に戻っていたんだな」
「そうともです。あのシャロウ襲撃の一件後、僕は帝国に帰還しました。そして、最高の友である貴方の帰りを待っていたのですよ、カイト」


 ニカッと白い歯を見せびらかして笑うトニー。
 まったく、変わらんなコイツは。


「カイト、そのイケメン誰よ」


 珍しくソレイユが反応した。

「ほう? ソレイユ、俺以外には興味なかったんじゃないのか?」
「……うっ、うっさいなぁもう」

 顔を赤くしてぷいっと膨れた。しかも赤青のオッドアイが潤んでいる。そんな子供みたいに……でも、たまに可愛いなソレイユ。ちょっと、からかいすぎたか。


「紹介する。このオールバックの兄ちゃんは『トニー』だ。俺の昔からの盟友でね。フレッサー商会の社長だ。こいつなら、新生イルミネイトの家とか土地とか何とかしてくれる」


「「「おおお~~~!!!」」」


 みんなが歓声を上げた。
 でもその前に――倒れている謎の男だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

処理中です...