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ウッドゴーレム出現!! SSS級インビジブルマントの反撃

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 違和感の正体は不明だ。
 今考えるのは止そう。それよりも今はダンジョン攻略だけに集中すべきだ。

 とにかく、ローザを風呂に入れてやらないと動いてくれそうにない。

「じゃあ、俺とミランダで壁になってやるから」
「ありがとうございます! まさか、こんな素敵なお風呂に入れるとは感激ですよ。さすがアビスさんです!」

「いや、なんとなく思いついたんだ。それじゃ、俺前を向いているから」
「こっち見ないで下さいね」

 俺の背後で服を脱ぎだすローザ。……さすがにちょっとドキドキするな。少し振り向いてやろうかなと悪戯心が働く俺。

 首を動かそうとした瞬間、ミランダに手で首を固定されて邪魔された。

「ぐっ! ミランダ、何をするぅ!?」
「いけません。アビスさんは前を向いて下さい」

「ちぇー」


 それから直ぐにローザから「入りましたので、振り向いていいですよ~」と合図があった。だから俺は振り向いた。

 すると、肩までドラム缶風呂に浸かるローザの姿があった。なんだ、気持ちよさそうだな。

 そんな光景が大手ギルドのヴァナルガンドにも異様に映ったらしく、大注目。全員がこちらに駆け寄ってきた。


「これ、アビスくんが作ったの!?」「な、なんだこの製造スキル、聞いたことないぞ!」「え、あの職人の建築スキルじゃね?」「ガチィ~? 何者だよぉ」「おにーさん、ダークエルフなのー?」「こりゃ驚いた。ダンジョンで風呂とはな」「素晴らしい能力だ。これで金儲けできるぞ」


 なんだか知らんが絶賛されとる。
 あのヘルですら珍獣でも見るかのようにしていた。


「いったい、何なんですの」
「風呂だよ、風呂。ヘルも入るか?」

「お風呂ですって!? そ、それは興味がありますわね。いちいち帝国へ帰るのが面倒だと思っていましたし」


 そうか、大手ギルドですら帰還するのって面倒に思えるんだな。ということは……まてよ。このドラム缶風呂をいくつか設置して商売ができるんじゃ。

 ダンジョン温泉――とか。

 いいね、無事に辺境伯になったら事業を始めてみようかな。

 とりあえず、残り二つは作れるから俺は設置した。


「ほれよ。ヘルのギルドも入ればいいさ」
「いいのですか?」
「構わんよ。お近づきの印っていうかな」
「ありがとうございます、アビスさん。お優しいのですね」

「ま、まあな……」


 ヘルの笑顔に俺は胸がドキッとした。


 ▼△▼△▼△ 


 地下十六階。
 背景がガラリと変わり、通路は緑の自然によって支配されていた。そこら中コケだらけ。


「溶岩、氷の次は……自然?」
「アビスさん、ここはどうやら『ウッドゴーレム』の生息地のようです」


 警戒しながら進んでいると、正面から巨大なウッドゴーレムが出現。全身が“木”で出来ていた。それと少々の緑。草が生い茂っていた。

 なんだ、たいしたことなさそうだぞ。

 今までのゴーレムと比べれば迫力不足。ぜんぜん強そうに見えなかった。

 俺はいつものように『インビジブルスクエア』を取り出し、構えた。


 余裕、余裕。


 ――そう思っていた。



「うおッ!!」



 突然、俺は吹き飛ばされて固い壁に衝突しそうになった。けど、踏ん張って壁に着地。

 ……な、何が起きた?


 ウッドゴーレムを見る。
 すると、ヤツは枝とかつたを触手のように伸ばしていた。ウネウネと。

 まるでタコかイカ系モンスターだな。

 そうか、あれで攻撃されたらしい。


「まずいですよ、アビスさん!」
「どうした、ローザ」
「あのウッドゴーレムですが、とんでもなく強いです!!」


 モンスターの詳細が飛んできた。



【ウッドゴーレム】
【Lv.90】
【地属性】
【詳細】
 HP:60200。
 攻撃力が高く、枝による遠距離物理攻撃が非常に危険。レアアイテム『ユグドラシルの葉』を落とすと言われている。



 なるほど、枝攻撃か。
 しかも、遠距離物理攻撃扱いなのか。そりゃ厄介だ。

 接近するのは難しい。
 近づく前には枝でやられる可能性が高い。


「ミランダ、魔法は何が使える?」
「わ、わたくしは基本的に水と風魔法だけなんです~…ごめんなさい」


 やっぱり、火とかそれ以外は習得していないんだ。


「分かった。――って、ぐっ!!」


 また凄まじく重い枝攻撃が向かってきた。俺は咄嗟とっさの判断で“ソード”に切り替え、防御ガードした。

 やべえ、防御したのに反動で吹き飛ばされそうだ。


『ブォォォォォォ……』


 ウッドゴーレムの威圧感も、今までのゴーレムと桁違い。恐ろしいスピードで動き、針のように鋭い枝を何十本も俺に向けてくる。

「こ、これでは、さすがのわたしも接近できません!!」
「ローザ、お前は後方支援に回れッ!!」

「で、でも……」

「死ぬぞ!! お前だけが頼りなんだ。俺が死んだら『リザレクション』してくれ!!」
「は、はい……分かりました。でも、なるべく死なないで下さい!」


 変わったことを言う。けどな、ローザがいるから死んでも安心感があった。体の原形さえ残っていれば幽霊となり、蘇生の可能性があるのだからな。

 幸い、あの攻撃なら死体になるだけで済みそうだが――。


 俺は、枝を叩き切ろうとしたのだが、別の触手によって足をからめとられた。……くそっ! 絡みついてきやがった!


「こんなものォ!!」


 インビジブルアックスで――なッ!

 やっべ、両手も両足も枝でグルグル巻きにされた。脱出できない。このままでは殺される……。


「スプラッシュ!!」


 ミランダの水属性魔法が飛んでいくが、効果はいまひとつ。地属性に有効なのは『火』だからだ。


 枝が俺の胸を貫く。


「がはっ!!」


 体力を一気に削られ……死ぬ――ものかぁ!!

 こんなところで死んでいられるかってーの。俺のアイテムボックスには、初回ログインボーナスでゲットした大量の回復アイテムがある。

 今こそ『レッドポーション改』を連打する!!


「ちょ、アビスさん……まさか!」
「心配するな、ローザ! 今、俺は全力で残り少ないレッドポーション改を使いまくっている!!」


 だが、そんな間にもウッドゴーレムの枝はローザを狙い始める。


「とぅ! こんな単純な枝攻撃!!」


 ローザは、ぴょんと華麗に飛び跳ね、後退していく。へえ、やるな。さすが“殴り大聖女”だな。

 だけど、ミランダは自分の身を守れるほど強くは無かった。


「きゃあ!!」


「ミランダ!!」
「ミランダさん!!」


 俺もローザもなんとかミランダを守ろうと藻掻もがく。だが、枝が図太くて脱出できない。ローザも枝で攻撃されまくって回避でそれどころではない。

 なら、俺が守ってやる!!


【インビジブルマント】
【レアリティ:SSS】
【部位:外套】
【詳細】
 防御力DEF:100。
 ダメージを受けた時、一定の確率でオートスキル[ダークネビュラ]Lv.5を発動する。(闇属性攻撃1000%~10000%のランダムダメージおよび全種類の状態異常を与える)

 このアイテムの精錬値が +7 以上のとき、全ての種族から受ける物理攻撃・遠距離物理攻撃・魔法攻撃のダメージを30%軽減する。


 ダメージを受け続けた俺は、オートスキル[ダークネビュラ]Lv.5が発動。禍々しい闇属性攻撃が拡散し、枝を一斉に弾く。それどころか消滅させた。


『ブォオオオオオオオ!!』


 今だ!
 俺はミランダの方まで向かい、彼女を己肉体で庇った。枝が俺の腹部を貫く。


「アビス様、お腹に穴が!!」
「大丈夫か、ミランダ。……いや、いいんだ。ミランダが無事ならそれで」
「で、でも……でも」

「俺はこのダンジョンに来て分かったことがある」
「え……」

「大切な仲間を傷つけられたら、嫌だって思うようになった。前まで何もかも失い、ひとりぼっちで身も心もボロボロで……なにもなかった。空っぽだった。
 でも、今は違う。俺には守るべき仲間ができちまった。だから――」


 インビジブルスクエアを“アーバレスト”へ


「ミランダ、エルフの矢をくれ!!」
「あああああああああ!!」

「!? どうした、ミランダ! 矢をくれ! 今こそトドメを……」
「ご、ごめんなさい。エルフの矢は在庫切れですぅぅ……」

「な、なんだってえええええええ!!」


 せっかくカッコよく決まるところだったのに! 焦っていると、いきなり矢が飛んできた。


「やれやれですね、アビスさん」
「こ、この矢って!?」
「それ、十階で拾ったやつです。おそらく、犯罪者ギルドの誰かが弓職だったのでしょう。何かで使えるかなぁと回収しておいたんです」

「ナイス、ローザ!!」


 しかも『猛毒の矢』じゃないか。
 地属性相手には、なにげに弱点属性。


 俺は、インビジブルアーバレストで矢を放つ。


 疾風しっぷうとなった矢は、ウッドゴーレムの頭に命中。見事なヘッドショットを決めた。



『ガアアアアアアアアアア…………』



 なんとウッドゴーレムは一撃で消滅した。

 た、倒した……。

 倒したぞ!!

 おっしゃあああああ!!


【EXP:26,800】
【ITEM:ユグドラシルの葉×1】
【ITEM:未鑑定アイテム×3】
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