上 下
21 / 38

SSS級の弓・インビジブルアーバレスト

しおりを挟む
 順調に進んでいくと、地下十三階まで降りて来られた。
 アイスゴーレムの脅威度は依然いぜん高い。油断をすれば『ブリザード』を受けて氷漬け。状態異常の『凍結』になる。

 更に、十三階からモンスターの種類が増えた。

 エルダーメイジという“魔法使い”が現れた。人型のモンスターが出現するとは。しかも強力な魔法を浴びせてくるし。


【エルダーメイジ】
【Lv.79】
【念属性】
【詳細】
 HP:12333。
 ゴーレムを作り続ける魔法使い。
 ダークエルフの思念体。


「まったく、ゴーレムダンジョンに他の種族のモンスターがいるとはな」

「もともとダンジョンを作ったのはエルフらしいです。事故とかで亡くなったダークエルフの怨念があの“エルダーメイジ”だとか」


 エルフ族であるミランダの説得力ある説明に俺は納得。そうか、ダンジョンとはエルフが作った物だったんだな。

 だから、あんな風にモンスターとなって化けているわけか。氷の通路を歩いていくと、先行していたパーティが苦戦していた。


「あのエルダーメイジってヤツ、念属性のせいか攻撃が当たらないぞ!」「無属性じゃダメだ。属性付与するんだ!」「魔法でいきましょ!」「なら、俺が壁となろう」


 マジかよ。物理攻撃は効かないのか。


「念属性ってなんだ?」
「教えて欲しいですかぁ~、アビスさん!」


 ローザが聞いて欲しそうに笑顔になる。まあ、いつもの事だから良いけどさ。


「教えてくれ、ローザ」
「アビスさんって、案外素直なんですね。昔はツンツンだったのに」
「な、なぜそれを……ああ、そうか」

 俺とローザは子供の頃に会ったことがあるらしい。俺は覚えてないけどな。
 俺にはその記憶がない。
 曖昧どころか空っぽ。

 本当にあった過去なのかすら怪しいけど――俺の脳に問題あるのかもしれない。いつか、思い出す日が来るのかな。


「大丈夫。その日はいつかきっと訪れますから、ご心配なく」
「どういう意味だ?」
「さあ、それは運命が導いてくださいます。それより、念属性ですよね」

「あ、ああ……」

「まず、属性ですが、無、火、水、風、地、闇、聖、不死、念の九種類があるんです。それぞれに特性があり、弱点もあります。
 ――で、念属性の場合、無属性が効かないんです」

「つまり?」
「念とは“幽霊”みたいなものと考えて下さい」
「なるほど、分かりやすい」

 そりゃ攻撃が当たらないわけだ。
 けど、無属性以外なら攻撃が当たるようになるようだ。なら、俺は攻撃を当てられるな。

「アビスさんの場合、聖属性攻撃が可能ですし、倒せると思いますよ」

 その通り、俺は余裕でエルダーメイジを倒せた。ただ、敵は射程のある魔法を使ってくる為、接近攻撃はリスクが高い。だから俺は槍を投げて倒した。

 ひたすらエルダーメイジを排除していると、さっきのパーティが悲鳴をあげていた。……なんだかヤバそうだぞ。

 仕方ない、俺が助けに行ってやるか。

 地面を蹴り、苦戦しているパーティの元へ向かう。すでに三人が死亡。蘇生不可能なほどやられていた。リザレクションは無理だな。


「……た、助けて!」


 残ったのは男だけか。
 せめてあの人だけでも助けるか。

 コールブランドを放ち、エルダーメイジを撃破した。


『――ギャアアアア!!』


 雄叫びをあげ、消滅。
 俺は男の元へ向かい、ケガの状態を確認。


「大丈夫かい、君」
「……た、助けていただきありがとうございます。でも……仲間が……」
「ああ……魂も残らずか。蘇生は無理だな」

「そんな、そんな! あんた、S級冒険者だろ!? なんとかならないのか!」

「無茶言うな。そんな奇跡を起こせるのは神様くらいだ」
「そうだ、君のパーティのカーディナル様なら蘇生できるんじゃないか!」

 男は、ローザを頼る。
 近寄っていくが、俺が阻止そしした。

「辛いだろうが、ローザには近づくな」
「話だけでも!」

「諦めろ。蘇生は不可能なんだ。そうだろ、ローザ」


 俺は、一応ローザに訊ねた。
 すると反応は思っていた通り、首を縦に振った。つまり、蘇生不可能。そもそも、霊魂がないんだ。どうしようもない。


「そんなのウソだ! そこの銀髪の女の子は、何人も蘇生していただろ!」
「それは蘇生可能な霊魂がいたからだ。今の状態とはまるで違う。帝国へ送ってやるから、せめて仲間をとむらってやれ」

「ふざけるな!! 僕は諦めない!」


 男は、ローザの腕を引っ張り走っていく。……野郎、俺の仲間ローザを連れていく気か。


「アビス様、ローザ様が!!」
「ああ、あの男……。ミランダ、行くぞ」
「はいっ」


 * * *


 男を追っていくが、どんどん離れていく。なんてこった、あの男の移動速度早いな。ついに見失ってしまった。

「どこへ行った?」
「あっ、アビス様。地下十四階へ行ったみたいです。足跡が」

 地下階段の近くに複数の足跡。他の冒険者のも混じっているが『A級ガラハッド社製ブーツ』は、独特な足跡をしていた。実に分かりやすい。

 ミランダを守りつつ、地下十四階へ。

 どうやら、ここもアイスゴーレムとエルダーメイジがうようよしているようだ。まずいな、ローザの身が心配だ。


「あ! そうでした!」
「どうした、ミランダ」
「大変重要なことを失念しておりました。アビス様、パーティを組んでいる場合、仲間の位置が分かるのです!」

「え、マジ?」


 教えて貰うと――まず、左手でバッテン×を切る。そして、例のマップボタン【MAP】を押す。

 すると、青く点滅していた。

 そうか、これがローザの位置情報というわけか。


「ごめんなさい。わたくし、もっと早く気づければ……」
「いや、ミランダはよくやってくれた。急ごうか」

「あ、あの……」
「ん?」

「わたくしって歩くのが遅いですし、その……アビス様がよろしければなのですが、抱えてくださると……嬉しいかなと」


 顔を真っ赤にして、そう提案するミランダ。あまりに可愛くて、俺は……頭が真っ白になってしまった。
 そんなクネクネと照れられると、こっちまで照れるって。

 いやいや、動揺している場合ではない。一刻も早く、ローザを助けないと。


「わ、分かった。今はあれこれ言っている暇はないよな」


 ドキドキしてヤバいけど、俺はミランダをお姫様抱っこした。……体重、軽っ。まるで紙のようだな。


「こ、こうされるの憧れだったんです。それがアビス様だなんて、幸せすぎてどうかなりそうです」

「……っ!」


 俺の方こそこんな美しいエルフを抱えられて……だめだ。頭がどうかなりそうだ。前だけを向け、俺よ。


 ただひたすらに前進あるのみ。


 マップの点滅を追っていく。
 襲ってくるモンスターは基本的に無視し、倒せるものは倒した。ミランダを抱えていても、なんとかなるな。

 どんどん先へ進むと、ようやく男の後ろ姿を捉えた。


「あれは、ローザ様!」
「あれか。しかし追いつけんな。ヤツの足を止める方法はないのか。インビジブルランスではローザを巻き込むかもしれないし」

「そういえば、アビス様は弓も使えるのですか?」

「あ、ああ、インビジブルアーバレストだな。そういえば、まだ一回も使ってないや」
「では、矢はありますので、一緒に矢を放ちましょう」


 ミランダは、アイテムボックスから『エルフの矢』を取り出した。矢尻が“エクサニウム”で出来ているようだ。


「どうすればいい」
「弓を出していただけますか?」
「分かった」


 俺は、はじめて『インビジブルアーバレスト』へ変形させた。これが弓か。貴族時代、親父にやらないかと誘われて少しだけ触れたことがある程度だが。


「そ、それが弓……素晴らしい造形です」

 同じパーティのミランダには、俺の“弓”が見えている。


「かなりデカイし、ゴツいな。で、どう射ればいい?」
「では、わたくしがアビス様のお手に添えますので……その、よろしいですか」

「あ、ああ……頼む」


 かなり密着してくるミランダ。
 良い匂いがする。
 心なしか、背中に柔らかいものも当たっている気がする。だけど、そんな感触を味わっている暇もない。

 重ねてくれるミランダの手に身を任せ、俺は弓を引く。

 すると、エルフの矢が凄まじいスピードで飛んでいった。それはあの男の足へ見事に命中。転倒させた。


「うあああああああああ!!」


 その隙に俺は、ローザを救出した。


「ローザ! 無事だったか!」
「アビスさん!! 必ず見つけ出してくれると信じておりました」

 鼻水を垂らしてわんわん泣くローザを俺は受け止めた。

「すまないな、まさか連れ去られるとは思わなかったんだ」
「わたしも驚きました。でもですね、この男性……えっと、アーリーという方なんですが、なんと――」


 俺は、ローザから意外な真実を聞かされて驚いた。……そうか、それでローザを連れ去ったのか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!

高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーのララクは、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった! ララクは、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく!

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

異世界を【創造】【召喚】【付与】で無双します。

FREE
ファンタジー
ブラック企業へ就職して5年…今日も疲れ果て眠りにつく。 目が醒めるとそこは見慣れた部屋ではなかった。 ふと頭に直接聞こえる声。それに俺は火事で死んだことを伝えられ、異世界に転生できると言われる。 異世界、それは剣と魔法が存在するファンタジーな世界。 これは主人公、タイムが神様から選んだスキルで異世界を自由に生きる物語。 *リメイク作品です。

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

処理中です...