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氷の神殿とダークポーション

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 B級以下の不要アイテムは売却。その結果、手持ちが『6,380,000ベル』となった。思ったよりも金も増えたし、必要な装備もかなり増えた。

 特に、ローザの装備は大幅に変化した。


【ローザ】
 種族:人間
 年齢:16歳
 性別:女性
 職業:カーディナル
 クラス:大聖女
 冒険者ランク:3603位(A級)

【上段頭装備】A級セイントヴェール
【中段頭装備】B級極小ピアス
【下段頭装備】A級セイクリッドロザリオ
【鎧】S級アクアローブ
【右手武器】+9SSS級ディバインフィンガーグローブ
【左手武器】+9SSS級ディバインフィンガーグローブ
【右腕】なし
【左腕】なし
【外套】S級フリフリケープ
【靴】A級ガラハッド社製ブーツ
【アクセサリー①】S級聖母の涙
【アクセサリー②】S級大賢者の指輪


 ようやくローザのスペックも開示してくれた。装備のおかげか冒険者ランクが高いな。
 けど、それよりも『武器』だ。
 こんなSSS級の武器を装備していたのかよ。しかもフィンガーグローブって……。そういえば、気になってはいたけど戦闘中は手袋をしていたな。

 支援職が、グローブねえ。


「な、なんです。その疑うような目線」
「ローザ。お前、武器だけ異様に強いな」
「……っ! い、いいではありませんか。女の子がグローブをつけていたって」
「いや、構わんけどさ。普通、杖とか本が武器じゃないの?」

「それは偏見へんけんですよ。いいですか、プリースト系の中にも戦闘タイプ・・・・・がいるんです。それが、わたしなんですよ~」


 そうだったのか。ていうか、ローザって戦闘系なのか。にしては、後方支援ばかりな気がするけど――もしかして、俺に気をつかってくれていたのかな。


「ミランダの方はどうだ?」
「種類が多すぎてどの装備すればいいのか迷いますね。しばらくは試行錯誤を繰り返したいと思います」

 ミランダは、ジプシーでありソーサラーというダブルジョブだから、バランスを取るのが難しそうだ。俺にはそっちの知識はないからなあ……彼女自身の手で装備を調整してもらう他ない。

 で、最後に俺。


【アビス・ウィンザー】
 種族:人間
 年齢:15歳
 性別:男性
 職業:なし
 冒険者ランク:889位(S級)


 装備は前と変わりないので――以下略。
 冒険者ランクが地味にアップしている。というか、俺って“職業なし”だったのかよ。

「アビス様、職業は“転職試験”を受けないとダメなんですよ~」


 ミランダが補足を入れてくれた。なるほど、転職試験か。剣士とか魔術師ウィザード鍛冶屋ブラックスミス錬金術師アルケミストになるには冒険者ギルドの試験に合格しないといけないようだ。

 そうか、俺はずっと貴族だったから……むぅ、そのうち気が向いたら試験を受けてみようかな。今は時間がないので“なし”でいいけど。


「よし、細かいことはダンジョンで進めながらでいいだろ。いったん、地下十階へ戻ろう」
「そうですね、アイテムも十分補充できましたし」


 ローザに続いてミランダも「わたくしは、いつでもワープポータルを開けます!」と準備万端だ。よし、ならば再びダンジョンへ――!


 ▼△▼△▼△


 メテオゴーレムダンジョン地下十階。
 もう冒険者はまばらで、それほど残っていない。引き上げた者や先へ進んだ者が大半なんだろうな。

「俺らも地下へ向かうか」

 不気味な階段を降りていく。
 前と違って冒険者の渋滞じゅうたいはない。

 けれど、凍てつくような冷気が頬をでる。妙に寒い。

 ローザはともかく、ミランダは薄着で震えていた。息が白いな。……って、まさかこの先は――。

 地下十一階に出ると、そこは“氷の神殿”だった。

 全てが青白い氷でおおわれたダンジョン。恐ろしいことに、敗北した冒険者が氷漬けになって放置されていた。

 そうか、この先は。

 直後、上から大きな氷塊が降ってきた。
 俺は緊急回避し、ローザとミランダも抱えて飛び跳ねた。

「きゃ! アビスさん! そ、そこは敏感びんかんなところです! えっち!」
「馬鹿、恥じらっている場合か。モンスターに襲われたんだから我慢しろ、ローザ」
「え……あれって」

 まずいな。アイアンゴーレムもラヴァゴーレムもやばかったけど、今度は桁違いにやばそうだ。

「アビス様、あの氷のバケモノ……」
「ああ、ミランダ。あれは『アイスゴーレム』だ。ローザ、モンスター解析を頼む」

 指示すると、ローザはモンスターの詳細を見せてくれた。


【アイスゴーレム】
【Lv.88】
【水属性】
【詳細】
 HP:39998。
 氷塊のゴーレム。
 全身が分厚い氷で出来ているので防御力は、恐ろしく高い。S級以上の武器を推奨。また、アイスゴーレムの水属性スキル『ブリザード』は、大ダメージを被るだけでなく、状態異常の『凍結』になる場合がある。
 このモンスターは、自己再生スキル『リペア』を持つ。撃破後、体を再生して復活する。


「これがアイスゴーレムの詳細です!」
「――な、なんだこりゃ。とんでもない強さだな」


 目の前には、今までのゴーレムの更に大きい氷のバケモノ。腕や足が図太いだけでなく、ボディも分厚そうで、そう簡単には砕けそうにない。

 しかも、自己再生する?
 どいうことだ?


「敵は一体だ。まずは様子見で俺がやる」
「アビスさん、支援魔法・イントロイトゥスです!」


 ローザから支援を受け取り、俺はステータスが上昇。インビジブルスクエア――“アックス”を生成し、突撃。

 だが、アイスゴーレムは予想を遥かに超えるスピードで“殴る”という単純シンプルな物理攻撃を繰り出してきた。

 俺はそれを回避。


「――あっぶねえ! ヒヤっとしたよ、氷だけにな!」


 よし、ここだ。
 この瞬間を狙って、俺は斧を強く振るう。

 剛腕をくぐって大戦斧の大ダメージを与えると、アイスゴーレムの氷の体が地面に砕け散ってバラバラになった。


「さすがアビス様。お見事な動きです! カッコ良すぎて、わたくし、胸の高鳴りが収まりません……」
「マジ? ミランダから褒めて貰えて嬉しいよ。よし、どんどん倒していくか」


 和やかな雰囲気になっていると、地面がガタガタ揺れ始めた。……え? 地震か? いや、違う。地面に落ちている氷が集まり始めていた。


「アビスさん! まだ終わっていないようですよ!!」


 ローザが顔を青くしてその現場を指をさす。視線を向けると、そこにはどんどん氷の塊が集まっていた。やがて、それはまた『アイスゴーレム』となった。


「マジだ! これが自己再生スキル『リペア』なのか!」
「そうらしいです。アイツは、二度倒さないといけないようです」
「んな厄介やっかいな!」


 ここは、アックスよりもソードの方がいいかもしれない。物理攻撃力ATKもだが攻撃速度ASPDも高くなる。それに、専用スキルもある。

 思案しているとミランダがS級アンブローズという“魔導書”を持ち、魔法陣を展開。大魔法を放った。


「サンダーボルト!!」


 おぉ、これは風属性魔法か。
 アイスゴーレムの頭上から、激しい稲妻いなずまが落ちていく。バリバリと全身を駆け巡って、強固なボディを破壊していく。

 弱点属性だから、ダメージは三倍。


「いいぞ、ミランダ!」
「お役に立てて嬉しいです!」


 だけど、まだトドメには至っていない。こうなったら、俺の剣で――ん? 何か降ってくる。俺は飛んでくる『小瓶』をキャッチ。


「アビスさん! それは『ダークポーション』です!」
「へ? ローザさん? なんか禍々まがまがしい色をしているんですけど!?」

「大丈夫です! それを飲むと一定時間、攻撃速度が大幅にアップするんですから、飲んで下さい!」


 マジかよ。真っ黒でお腹を壊しそうなんだが。しかし、そうは言ってられないか。


 俺は、ポーションの蓋を開けて急いでガブガブ飲んだ。すると――。


【攻撃速度 +50%】


「本当に上がった!」
「今です! 持続時間が短いですから、やっちゃってください!」


 インビジブルソードに切り替え、俺は地面を蹴って加速していく。背中に羽根が生えた気分だぜ。


「これで終わりだ、コールブランド!!」


 透明な剣から放たれる黄金の一閃。
 超強力な聖属性攻撃がアイスゴーレムを打ち砕く。

 ぜて粉々になるゴーレム。

 二度目だから、もう再生は不可能だ。


【EXP:14,200】
【ITEM:氷塊×1】
【ITEM:未鑑定アイテム×1】


 この調子で先へ進んでいく。
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