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第170話 約束と旅立ち
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地の神国の都へ向かっていた。
森は長く続き、徒歩で一日は掛かるだろう。
休憩を挟みつつ、俺はフォースを肩車しながら歩き続けていた。だが、当の本人はぐったりして、俺の方へ小さな体を預けていた。どうやら眠いらしい。
「そろそろ休むか」
「うん……」
時折、寝息が聞こえるし眠気と戦っているようだな。別に眠って貰ってもと言ったが、フォースは耐えていた。どうやら、俺に気を使っているみたいだな。構わんのだけど、こういう所が可愛い。
ゆっくりとフォースの体を降ろし、俺は肩を解す。ふぅ、一時間振りに開放されたな。
フォースが小さくて軽いとはいえ、多少は疲れる。まあ、乗せ心地が最高に良いのが救いだ。あと森とか自然匂いと言えばいいだろうか、癒されるんだよなあ。
「しっかし、まだ森が続くとはな」
「この森は広大だからね。都まではまだある」
緑の瞳で見上げてくる。結構な身長差があるから、そのような姿勢になるのだが……今まで戦闘続きで気づかなかったけど、こう下から見られるってイイものだな。それに、初めてのパーティ仲間。信頼し合える仲間。
それが世界最強の極魔法使いになろうとはな。感慨深いというか、やっと魔王討伐の旅が始まったなって思えた。
「そうだな、あと少し歩いたら野宿しよう。こんな森じゃあ、宿屋もないだろうしな」
「うん、分かった。ところで……あのね、ユメ」
モジモジとしながら近寄ってくる。
後ろに何か隠しているらしい。
決心したのかフォースは、それを差し出してきた。なんだ? と、その掌にあるモノに注目すると森の木々に生えている赤い果実だった。
「なんだ、くれるのか」
「あげる。一緒に食べよ~」
極自然に俺の膝の上に乗るフォース。まるで子供のようだなって感じたが、それは敢えて口にしまい。だが、可愛い……途轍もなく可愛い。
もぐもぐと果物を頬張る姿は、小動物のようだった。それに、この漆黒で、艶のある髪。溜息が出るほど美しく、思わず撫でたくなる。
「……い、いいよ。ナデナデしてくれる?」
食事を止め、フォースは切なそうに瞳を向けて来る。……あ、心を読まれた。まあもう慣れたというか、悪い気はしないけどね。
そうか、撫でさせてくれるのか。
「いいのか」
コクコクと頷く。
いいのかよ。じゃあ、遠慮なくと俺は手を伸ばす。手が髪に触れると、フォースは体をピクッと強張らせて小さく震えていた。
あんな散々肩車させてくれたのに、髪は緊張するんだな。でも、俺も緊張していた。女の子の、こんな小さな子の髪とか……何年振りだろうか。昔、俺には妹がいたけど、懐かしいな。
繊細に、出来る限り優しく触れた。
「……」
なんて触り心地だ。
夢中になって撫でていると、フォースが完全に背中を預けて来た。俺はぎゅっと抱きしめて、心行くまで堪能した。
フォースも好意的に受け入れてくれて、嫌悪も拒絶もなかった。寧ろ、もっと撫でろと言わんばかりに身をスリスリさせてきた。まるで猫だな。
「……フォース、可愛いな」
「……えへへ」
初めてフォースは照れていた。
なるほど、こう親密なればここまで気を許してくれるのか。俺としても嬉しかったし、もっと可愛がってあげようって思えた。いや、絶対に幸せにしてやる。
◆
――森で一泊して、新しい朝を迎えた。
夜明けになり、フォースは眠たそうに眼を擦って、俺の方へ寄ってくると裾を引っ張った。
「おはよ、ユメ……もしかして、寝てない?」
「この森には危険なモンスターがたくさにるからね。俺がフォースを守らなきゃいけないし、だから問題ない」
「も、問題ないって……眠らなきゃダメだよ」
「大丈夫だ、心配する必要はない。俺は闇だから一週間程度は起きていても支障はないよ。あと勇者補正とか利いているからね」
そう、俺は眠らなくても平気。もちろん、寝た方が体力的には違う。でも、それでもフォースを守るためなら睡眠も惜しくはない。
「無茶はしないって約束」
ちょっと怒った瞳で俺を見るフォース。こりゃ、逆らうと嫌われそうだ。それだけは嫌だ。だから、俺は約束した。
「分かったよ、約束だ。指切りだな」
「指切り?」
「ああ、約束を破ったら針を千本飲むんだ」
「うん、じゃあ、約束」
躊躇なく、フォースは小指を絡めてきた。俺はフォースと約束を交わした。
◆
それから、歩き続け――
やっと 地の神国の都に辿り着いた。
「都、初めて来た」
「やっぱりそうなのか、フォース」
「うん、こんなに広いんだね」
「そうだ、世界には国がいくつかある。『火の大国』、『水の聖国』、『風の帝国』、『地の神国』、『光の天国』、『闇の覇国』とな」
「そんなにあったんだ。世界は広いね。――じゃあ、次は『水の聖国』かな。……感じるんだ、銀髪の人を」
「へぇ、それは面白いな。行ってみるか」
ぱぁと顔を輝かせるフォースを連れて、俺は港を目指した。船に乗り、『水の聖国』へ行くしかない。でも、確かに噂は聞いていた。その聖国は『聖女』がいると――。それに、魔王の大幹部……大魔女の噂も。
次なる仲間はその子だ。
フォースのソウルフォースが告げているから間違いないだろう。導きに感謝する。
――でも、その前にフォースに『たい焼き』を奢ろうと出店へ寄る事にした。クリームたっぷりでね。
森は長く続き、徒歩で一日は掛かるだろう。
休憩を挟みつつ、俺はフォースを肩車しながら歩き続けていた。だが、当の本人はぐったりして、俺の方へ小さな体を預けていた。どうやら眠いらしい。
「そろそろ休むか」
「うん……」
時折、寝息が聞こえるし眠気と戦っているようだな。別に眠って貰ってもと言ったが、フォースは耐えていた。どうやら、俺に気を使っているみたいだな。構わんのだけど、こういう所が可愛い。
ゆっくりとフォースの体を降ろし、俺は肩を解す。ふぅ、一時間振りに開放されたな。
フォースが小さくて軽いとはいえ、多少は疲れる。まあ、乗せ心地が最高に良いのが救いだ。あと森とか自然匂いと言えばいいだろうか、癒されるんだよなあ。
「しっかし、まだ森が続くとはな」
「この森は広大だからね。都まではまだある」
緑の瞳で見上げてくる。結構な身長差があるから、そのような姿勢になるのだが……今まで戦闘続きで気づかなかったけど、こう下から見られるってイイものだな。それに、初めてのパーティ仲間。信頼し合える仲間。
それが世界最強の極魔法使いになろうとはな。感慨深いというか、やっと魔王討伐の旅が始まったなって思えた。
「そうだな、あと少し歩いたら野宿しよう。こんな森じゃあ、宿屋もないだろうしな」
「うん、分かった。ところで……あのね、ユメ」
モジモジとしながら近寄ってくる。
後ろに何か隠しているらしい。
決心したのかフォースは、それを差し出してきた。なんだ? と、その掌にあるモノに注目すると森の木々に生えている赤い果実だった。
「なんだ、くれるのか」
「あげる。一緒に食べよ~」
極自然に俺の膝の上に乗るフォース。まるで子供のようだなって感じたが、それは敢えて口にしまい。だが、可愛い……途轍もなく可愛い。
もぐもぐと果物を頬張る姿は、小動物のようだった。それに、この漆黒で、艶のある髪。溜息が出るほど美しく、思わず撫でたくなる。
「……い、いいよ。ナデナデしてくれる?」
食事を止め、フォースは切なそうに瞳を向けて来る。……あ、心を読まれた。まあもう慣れたというか、悪い気はしないけどね。
そうか、撫でさせてくれるのか。
「いいのか」
コクコクと頷く。
いいのかよ。じゃあ、遠慮なくと俺は手を伸ばす。手が髪に触れると、フォースは体をピクッと強張らせて小さく震えていた。
あんな散々肩車させてくれたのに、髪は緊張するんだな。でも、俺も緊張していた。女の子の、こんな小さな子の髪とか……何年振りだろうか。昔、俺には妹がいたけど、懐かしいな。
繊細に、出来る限り優しく触れた。
「……」
なんて触り心地だ。
夢中になって撫でていると、フォースが完全に背中を預けて来た。俺はぎゅっと抱きしめて、心行くまで堪能した。
フォースも好意的に受け入れてくれて、嫌悪も拒絶もなかった。寧ろ、もっと撫でろと言わんばかりに身をスリスリさせてきた。まるで猫だな。
「……フォース、可愛いな」
「……えへへ」
初めてフォースは照れていた。
なるほど、こう親密なればここまで気を許してくれるのか。俺としても嬉しかったし、もっと可愛がってあげようって思えた。いや、絶対に幸せにしてやる。
◆
――森で一泊して、新しい朝を迎えた。
夜明けになり、フォースは眠たそうに眼を擦って、俺の方へ寄ってくると裾を引っ張った。
「おはよ、ユメ……もしかして、寝てない?」
「この森には危険なモンスターがたくさにるからね。俺がフォースを守らなきゃいけないし、だから問題ない」
「も、問題ないって……眠らなきゃダメだよ」
「大丈夫だ、心配する必要はない。俺は闇だから一週間程度は起きていても支障はないよ。あと勇者補正とか利いているからね」
そう、俺は眠らなくても平気。もちろん、寝た方が体力的には違う。でも、それでもフォースを守るためなら睡眠も惜しくはない。
「無茶はしないって約束」
ちょっと怒った瞳で俺を見るフォース。こりゃ、逆らうと嫌われそうだ。それだけは嫌だ。だから、俺は約束した。
「分かったよ、約束だ。指切りだな」
「指切り?」
「ああ、約束を破ったら針を千本飲むんだ」
「うん、じゃあ、約束」
躊躇なく、フォースは小指を絡めてきた。俺はフォースと約束を交わした。
◆
それから、歩き続け――
やっと 地の神国の都に辿り着いた。
「都、初めて来た」
「やっぱりそうなのか、フォース」
「うん、こんなに広いんだね」
「そうだ、世界には国がいくつかある。『火の大国』、『水の聖国』、『風の帝国』、『地の神国』、『光の天国』、『闇の覇国』とな」
「そんなにあったんだ。世界は広いね。――じゃあ、次は『水の聖国』かな。……感じるんだ、銀髪の人を」
「へぇ、それは面白いな。行ってみるか」
ぱぁと顔を輝かせるフォースを連れて、俺は港を目指した。船に乗り、『水の聖国』へ行くしかない。でも、確かに噂は聞いていた。その聖国は『聖女』がいると――。それに、魔王の大幹部……大魔女の噂も。
次なる仲間はその子だ。
フォースのソウルフォースが告げているから間違いないだろう。導きに感謝する。
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