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第165話 知っていた未来
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「冗談はさておき――フォースを連れて行きたいんじゃな、勇者よ」
さっきのは冗談だったのかよ。
本気のように見えたけどなあ。
「ええ、俺一人では限界がありますし、強大な力を持つ極魔法使いが必要です。平和を取り戻す為、どうかフォースを」
丁寧に頼むと、グレイスは紅茶を啜った。
「フォース、お主はどうしたい? この勇者ユメについて行き、魔王打倒の旅に出るか、地の神国で一生を過ごすか……己で決めるのじゃ」
選択を委ねられるフォースは、困った顔をして、俺とグレイスを見比べる。すげぇ困ってるな。仕方ない、助け船を出してやろう。
「今直ぐ決める必要ないと思いますよ」
「そうもいかんのだよ、ユメ」
「どうしてです?」
「お主も探している魔王軍幹部・ブリーブが迫っているからじゃ。ヤツの狙いは、この私でね。極魔法使いである私を潰そうという計画らしい」
魔王軍は動いているのか。
しかも迫っているだって……?
この場所に来るのか。
「ま、まさか……」
「あぁ――どうやら、遅かったようじゃな。すまんが、勇者ユメよ、フォースと共に魔王軍幹部・ブリーブを倒して欲しい。もしも倒せたのなら、フォースは連れて行くがいい」
「それが最終試験って事か」
「うむ。だが、相手は手強いぞ」
そうだな、今まで何体か相手をしたけど、どれも強かった。究極の闇を持つ俺でさえ中々に苦戦し、死にかけた事さえも何度かあった。
倒せば倒していく程、幹部の強さも上がっていき苦戦が多くなっていた。だからこそ、極魔法使いの力が欲しいのだ。
やるしかない。
フォースを仲間に入れる為なら、俺は全力でいく。
◆◇◆◇◆
「なんじゃ、フォース。やはり、少年が気になるのかえ」
勇者とかいう人は、外へ出て行った。直ぐに現れるであろう、魔王軍幹部・ブリーブを迎え撃つためだ。それと、たぶん、あたしの為。
「……」
「お前が他人と触れ合うのは、これが人生で初めて。じゃが、不思議と悪い雰囲気ではないように見える。フォース、お主……かなり前から未来を視ていたのじゃな」
――そう。師匠の言う通り、あたしはソウルフォースの力を使って未来をずっと視ていた。
しかもそれは、三年前から。
だから、勇者ユメが『地の神国』にやって来る事も、あたしを仲間にしたいって事も、魔王軍幹部・ブリーブがやってきて、これから激しい戦いが起こる事も全て知っていた。
――でも。
ひとつだけ予想外の出来事があった。
ユメは、優しくて……見ず知らずのあたしに『たい焼き』をくれた。甘くて美味しくて……外の世界にはあんな美味しい食べ物があるんだなって思った。
外の世界……行ってみたいな。
今まで興味もなかったけど、ユメがあたしを変えてしまった。いや、とっくに変えられてしまっていた。あたしも彼が気になるし、もっと知りたい。
「マスター、あたし」
「分かっておる。フォース、実を言えばお前の修業は三年前に完成されている。そう、既に『極魔法使い』なのだ。これからは堂々と名乗るが良い、我が弟子よ」
あんなに厳しかったマスターグレイスが、初めてあたしを認めてくれた。嬉しかった……やっと、念願だった『極魔法使い』になれたんだ。
この十年間の厳しい修業は無駄ではなかった。これからは、三年前から好きになってしまったあの人を……ユメを支えていこう。
◆◇◆◇◆
――俺は、マスターグレイスの家を出た。その直後、魔王軍幹部・ブリーブらしき邪悪な気配を感知した。
「空から飛んできやがる……! ダークネスアサルトッ!!」
闇スキルの先制攻撃を空に放つ。
広範囲に広がる闇属性攻撃。これで……!
だが、火属性攻撃が一気に広がり闇と拮抗する。……こ、これがブリーブの爆発系スキルか!!
『あぶねえ、あぶねえ! まさかいきなり闇属性攻撃とはな。……勇者が闇? こりゃおかしいな、ワシの情報では『光』と聞いたがな! まあ何でもいい……なんであれ、勇者に違いない。お前を倒す』
この男が魔王軍幹部・ブリーブ……!
さっきのは冗談だったのかよ。
本気のように見えたけどなあ。
「ええ、俺一人では限界がありますし、強大な力を持つ極魔法使いが必要です。平和を取り戻す為、どうかフォースを」
丁寧に頼むと、グレイスは紅茶を啜った。
「フォース、お主はどうしたい? この勇者ユメについて行き、魔王打倒の旅に出るか、地の神国で一生を過ごすか……己で決めるのじゃ」
選択を委ねられるフォースは、困った顔をして、俺とグレイスを見比べる。すげぇ困ってるな。仕方ない、助け船を出してやろう。
「今直ぐ決める必要ないと思いますよ」
「そうもいかんのだよ、ユメ」
「どうしてです?」
「お主も探している魔王軍幹部・ブリーブが迫っているからじゃ。ヤツの狙いは、この私でね。極魔法使いである私を潰そうという計画らしい」
魔王軍は動いているのか。
しかも迫っているだって……?
この場所に来るのか。
「ま、まさか……」
「あぁ――どうやら、遅かったようじゃな。すまんが、勇者ユメよ、フォースと共に魔王軍幹部・ブリーブを倒して欲しい。もしも倒せたのなら、フォースは連れて行くがいい」
「それが最終試験って事か」
「うむ。だが、相手は手強いぞ」
そうだな、今まで何体か相手をしたけど、どれも強かった。究極の闇を持つ俺でさえ中々に苦戦し、死にかけた事さえも何度かあった。
倒せば倒していく程、幹部の強さも上がっていき苦戦が多くなっていた。だからこそ、極魔法使いの力が欲しいのだ。
やるしかない。
フォースを仲間に入れる為なら、俺は全力でいく。
◆◇◆◇◆
「なんじゃ、フォース。やはり、少年が気になるのかえ」
勇者とかいう人は、外へ出て行った。直ぐに現れるであろう、魔王軍幹部・ブリーブを迎え撃つためだ。それと、たぶん、あたしの為。
「……」
「お前が他人と触れ合うのは、これが人生で初めて。じゃが、不思議と悪い雰囲気ではないように見える。フォース、お主……かなり前から未来を視ていたのじゃな」
――そう。師匠の言う通り、あたしはソウルフォースの力を使って未来をずっと視ていた。
しかもそれは、三年前から。
だから、勇者ユメが『地の神国』にやって来る事も、あたしを仲間にしたいって事も、魔王軍幹部・ブリーブがやってきて、これから激しい戦いが起こる事も全て知っていた。
――でも。
ひとつだけ予想外の出来事があった。
ユメは、優しくて……見ず知らずのあたしに『たい焼き』をくれた。甘くて美味しくて……外の世界にはあんな美味しい食べ物があるんだなって思った。
外の世界……行ってみたいな。
今まで興味もなかったけど、ユメがあたしを変えてしまった。いや、とっくに変えられてしまっていた。あたしも彼が気になるし、もっと知りたい。
「マスター、あたし」
「分かっておる。フォース、実を言えばお前の修業は三年前に完成されている。そう、既に『極魔法使い』なのだ。これからは堂々と名乗るが良い、我が弟子よ」
あんなに厳しかったマスターグレイスが、初めてあたしを認めてくれた。嬉しかった……やっと、念願だった『極魔法使い』になれたんだ。
この十年間の厳しい修業は無駄ではなかった。これからは、三年前から好きになってしまったあの人を……ユメを支えていこう。
◆◇◆◇◆
――俺は、マスターグレイスの家を出た。その直後、魔王軍幹部・ブリーブらしき邪悪な気配を感知した。
「空から飛んできやがる……! ダークネスアサルトッ!!」
闇スキルの先制攻撃を空に放つ。
広範囲に広がる闇属性攻撃。これで……!
だが、火属性攻撃が一気に広がり闇と拮抗する。……こ、これがブリーブの爆発系スキルか!!
『あぶねえ、あぶねえ! まさかいきなり闇属性攻撃とはな。……勇者が闇? こりゃおかしいな、ワシの情報では『光』と聞いたがな! まあ何でもいい……なんであれ、勇者に違いない。お前を倒す』
この男が魔王軍幹部・ブリーブ……!
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