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第157話 ビギナーキラー

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「この森を抜ければ、トールダンジョンだ」

 よくある迷いの森。
 ここからは、モンスターも強くなる。気を引き締めて行かねば、俺はともかく、ネーブルが危ない。


「ぶ、不気味ね」
「俺が先陣を切る。フォースは少し距離を取って魔法を、ゼファは支援を、ネーブルは俺が守るが、可能な限り戦闘もしてくれ」

「分かったわ」


 ゆっくり慎重に薄暗い森を歩いて行く。ちょっと肌寒いな……と、寒気を感じていれば、奥からモンスターらしき気配が……ん?


「――止まれ、これはモンスターじゃない。人間の気配・・・・・だ。つーか……」


 驚いた。
 まさか、あの人影は――。


「うそ……」


 ネーブルさえ驚いていた。
 あの酒場にいた男たちだったからだ。


「ようよう! 兄ちゃんよォ、それとネーブル!! 酒場ではよくもやってくれたな!!」


 部下を引き連れてやって来たらしい。つけられていたか。全員、斧を持ち、威嚇いかくしてきていた。面倒な。


「お前たちしつこいぞ」

「うるせぇ、小僧! 俺達は風の帝国キリエ近辺の初心者狩りギルド『ビギナーキラー』だぜ。でもって、俺様の名は――ぶあぁぁぁッ!!」


 フォースが右手をヤツ等に向けて『ソウルフォース』を撃ち放っていた。容赦ようしゃねぇなぁ。


「うるさい」
「うん、それは認める」


 よくぞやったとフォースを褒め称えていると、男は立ち上がってブチギレた。


「クソ、クソ、クソがああああ! 俺様を馬鹿にしやがって!! いいか、よく聞け! 俺様の名は『ハービィ』だ! 初心冒険者が恐れる『ハービィ』様だああああ、野郎共、女は裸に剥いちまえ!!」


 男の部下十人ほどが襲い掛かって来た。


「ユ、ユメ!」
「大丈夫だよ、ネーブル。俺が――」


 一歩踏み出したその時、足元が本来の意味通り、すくわれた。――あみトラップか!!


 しかも、俺以外の皆が罠に掛かり、網の中だった。……クソ、こんな姑息な罠を。この男!


「てめぇ!」
「ククク……これほど簡単に罠にはまってくれるとはな。これで女共は俺達のモンだ。てめぇは指を咥えて見てろや。――おぉと、動くなよ、小僧。妙な動きを少しでも見せれば、そうだな、あのちびっこ魔法使いが……どうかなっちまうかもなァ!?」


 フォースを指さすハービィ。
 卑劣極まりない手段に、果てしない苛立ちを覚え、俺はブチギレ寸前だった。


「……分かった。何が望みだ」
「へえ、なんだ、案外素直じゃねぇか。じゃあ、まずは土下座だ。この前の酒場で俺様にしたことを謝って貰おう。それから、あの女共をお前の目の前で裸にする。それから、最高のパーティの始まりだ」


「サイテー野郎かよ。聞いたぞ、酒場のマスターに。お前、初心者狩りで女性冒険者も襲っているようだな」


 そう、俺はあの酒場を去る前に情報を得ていた。コイツの黒い噂を。


「あぁ、上手いこと誘惑すりゃあ、女共は簡単にホイホイついてくる。で、ヤリたい放題ってワケさ。そこのネーブルは、初心者すぎて論外だったがな……おぉと、動くなって言ったろ。オイ!」


 部下に指示するハービィ、ネーブルを降ろした。何をする気だ?


「よぉ、ネーブル。お前を一度は追放したが……今日、役に立つ」
「なっ! さ、触らないでよ!!」
「ネーブル、お前は顔も良いし、胸も無駄にでけえ。初心者すぎてつい忘れていたが……お前の体で遊んでいなかったぜ」

 ハービィの手がネーブルの胸に触れようとする。


「……やだ、やめてよぉ。たすけて……ユメ!」

「ああ、秒で助けてやる。フォース!」


 俺は『テレパシー』でフォースに指示を出していた。


「――準備完了。ゼファ、向こうのの敵を」
「グロリアスホーリークロスです……!」


 白い閃光が男たちに下り、天罰を食らっていた。


「「「ぎゃあああああああああッ!」」」


 今だ。
 俺は手をハービィに向けた。



「ソウルテレキネシス……!」



「……へ、うああああああああああああ!!」


 ドンと重い衝撃で吹き飛ぶ。
 その間に俺は、闇属性の弓を生成、遠距離攻撃・ダークアローを放った。


「ほいっと!」


 網を撃ち落とし、フォースとゼファの両方を抱えて救出した。二人とも軽いから助かる。


「よいしょっと。二人とも無事か?」

「うん、無事。ユメが絶対助けてくれるって信じてるもん」

 俺の袖を引っ張るフォース。


「ありがとうございます、ユメ様。フォースちゃんはお任せを。ネーブルさんをお願いします」
「おう。じゃあ頼んだぞ」


 俺は二人から離れ、ネーブルの方へ向かって行くが、あのハービィも起き上がって来ていた。しつこいな。


「ハービィ、もう俺たちに関わるな! 初心者狩りも辞めろ! さもなければ、お前は監獄行きだぞ」

「だまれ、だまれ、だまれえええええ!! こうなれば仕方あるまい……呪いアイテムでネーブルを呪い殺してやる……っ!」


 懐から怪しい水晶。なんだありゃ。


「死の呪いだよ。これを食らえば、相手は、死ぬ!!」


 ピカァっと黒く光る水晶は、ネーブルの方へ――させるかよ!! 呪いが到達する前に、俺はネーブルを抱えてかばった。


「ユ、ユメ!!」
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