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第107話 極魔法使い

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 カジノに戻ると、大きな穴が開いていた。

「………………」

 キャロルはポカンとしていた。そりゃショックだよな。

「すまなかった。弁償はするから」
「! なら良いです。というか、まあ、私も仕事がおろそかになっていましたからね。入国審査をゆるくしたことお詫び申し上げます」

「いや、キャロルはよくやってくれているよ。……とりあえず、壁がこんなになっちゃったし、今日の営業は無理か」

「そうですね。このままも危険すぎますし。――あ、でも」
「?」
「ユメ、あなたが遊戯していたスロット……『X』が三つそろっていましたよ」
「なぬ!? マ、マジ……じゃあ、10億セルが……」

「残念ですが、壁の修理費用が……」

「ですよねぇ」

 あークソ、あのモヒカンの乱入がなければ、当たっていたのかよー!

 ……でも仕方ないか。カジノに大きな穴が開いてしまったし。

「分かったよ、キャロル。それは壁の修理にててくれ」
「助かりました。ありがとうございます」
「いや、ま、このゴールドコインで我慢しておくか」

 記念品をポケットに閉まって、俺たちはカジノを後にした。


 ◆


 カジノを去り、トラオムダンジョン前に差し掛かると、やはり混雑していた。以前に増して冒険者が殺到しているようにも見える。というか、していた。

「凄いな。何ギルドいるんだ……って」


「俺等が先だ!」「ふざけんな、こっちが先だ」「私が予約していたのよ!」「さっさと行かせろ!」「邪魔だー!」


 だが、ダンジョン利用を巡ってトラブルが発生しているようだ。
 おいおい、みんな仲良くやってくれよな。

「ねえ、ユメ、あれちょっとマズイんじゃない」
「そうだな、ネーブル……。けど、あれの仲裁ちゅうさいは骨が折れそうだぞ」

 かと言って、止めないワケにもいかんな。
 仕方ない、俺が一肌脱ぎましょう。


「おーい、みんな。ダンジョン利用は予約優先だ。文句があるヤツは、俺と戦って勝ったら文句を聞いてやる」


「あぁん? なんだ、あんた……って」「うわ、ユメさん……」「な、なぜこんな所に」「わぁ……ホンモノ?!」「主がそう言うのなら、従うしかないんじゃないか」「彼がこのダンジョンのマスターだしな」「うんうん」

 みんな一斉に俺に振り向き、そして、わずか数秒で沈静化した。

 こんなアッサリ大人しくなるとはな。


 ――――だが。


「俺は納得いかねーんだよ!!!」


 ひとりが大声を張り上げた。

「なんだ、あんた――って、女!?」
「そうだ、女で悪いか! それより、予約なんて聞いてないぞ! 納得がいかん」
「そこに看板があってだな、詳細が書かれて――」

「うるせぇ!」

 カチャッ……と物騒な物が俺に向けられた。

 こいつ――『銃』使いか。


 しかも、


 女は容赦ようしゃなく撃ってきやがった。つっても、無駄だけどな。


「ほいっと!」

 ソウルフォースで弾を止めた。


「――――え、弾が宙で」

「まあな。ていうか、いきなり人を撃つのは良くないな」


 俺は宙に浮いている弾をデコピンではじき返した。


『ピューーーーーーン!!!』


 と、すげぇ音と共に弾丸が女の頬をかすめていった。


「え…………」


 突然のことで女はビックリして、地面に倒れた。

「あーあ、失神しちゃったな」

 近くにいたギルドの人たちに女を任せた。

「じゃあ、頼む。もしアレなら、キャロルに投げておいてくれ」
「わ、分かりました。ユメさんの頼みとあらば喜んで!」
「ありがとう」


 ◆


 家の前に着いた。
 しかし、そこには『先生』が待ち構えていた。

「……先生、どうして。闇の覇国アニュスへ帰ったんじゃなかったのか」
「あの、ユメ。この美しい女性はどなたですか?」

 目を輝かせるテスラは、先生に興味津々きょうみしんしんだった。

「このヒトは、イドーラ。俺の先生だよ」
「へえ、ユメの先生ですか! すごいキレイな女性ひとですね」
「まあな。……で、先生、なんの用だい?」

 先生は、俺やフォース、ゼファ、ネーブル、テスラをそれぞれ見た。……なんだ、どうしてそんな観察するように……。

「ユメ…………わたしは……」
「どうした、先生」


「お腹がきましたぁ…………」


「…………は?」


「……その、情けない話ではありますが、カジノを楽しみすぎてしまい……お金が無くなってしまったのです……。ですから、ユメ、わたしはこのままでは闇の覇国アニュスへ帰れません。しばらく居てもいいですか」

「そういう事かよ……。分かったよ。好きにしてくれ」
「ありがとうございます。では、今日からお世話になりますね。皆さん、わたしはイドーラと申します。ユメの先生でもあります。よろしく」

 ……あれ、みんなポカーンとしているような。

「……ユメ、このイドーラさん、すっごく美人すぎない……。まつ毛長すぎよ! てか、ピチピチすぎないあの衣装! 女のわたしから見てもエロすぎ!」
 これはネーブルの感想。

「うう……わたくし、なんだか負けた気分です……。あんなにユメ様好みの胸とお尻なんて……卑怯ですっ」
 これはゼファ。

「…………ユメ…………」
 フォースは明らかにブチギレていた。怖いって顔!

 テスラは鈍感なのか『?』状態だった。……ほっ。

「ユメ……どういうこと!」
「フォース、落ち着けって。顔怖すぎだぞ。なんで、そんな怒ってるんだよー」
「あのイドーラは、極魔法使いアルティメットウィザードだよ。それも、マスターグレイスに匹敵する力を持っている」

「あー…、そうだろうな。マスターも凄いけど、イドーラ先生も凄いと思う」

 俺がそうフォースにありのままを伝えると――


『……ほう、それは聞き捨てならんな、ユメ』


 厳しくも懐かしい声が響き、その女性ひとは空から降って来た。


「げ……マスター!?」


 今度は、世界最強の極魔法使いアルティメットウィザードである『マスター・グレイス』が現れた。


 なにこれ……?
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