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第95話 秘密結社

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 秘密結社への座標は、テスラが持っている。
 彼女を取り囲むようにして、肩や背に手を当て、準備を始めていた。

「皆さん、よろしいですね。かなり反動あるワープとなるので気を付けて……では、開始します。しっかり掴まっていて下さい」

 移動が始まった。


 ◆


【 秘密結社・メタモルフォーゼ 】


「――――――」


 肌寒い冷気が漂っていた。
 鼓膜こまくを刺激する、ごうごうと水か何かが排出されているような重低音。ゆっくりと目を開ければ、そこは鉄の要塞の中だった。

「……なんだこの場所は……」

 上も下も果てしない。真っ暗。
 まるで塔の中のような――そんな構造をしていた。

「うわ……下が何も見えない……」

 青い顔でゾッとするネーブルは、俺にしがみついた。
 というか……。

「みんな、俺にくっついてるし……」

「ここ、道が狭いですし……落ちてしまいそうで」
 ゼファは震えていた。確か、高所恐怖症だったな。

「あたしは何となく」「私もです」

 魔法使い二人組は、なんとなくかいっ。
 いや、いいけどね。

「――にしても、ここはどうなってやがる。上へ行けばいいのか、下へ行けばいいのか……」
「下ですよ、ユメ。ここは『水の聖国サンク』の海域――マリア海溝ですから。つまり、ここは海の中・・・なんです」

「う、海の中!?」

「ええ、ですから誰も近寄れないし、権力者と座標ざひょうを持つ私だけしか入れません」

 なんてこった……。
 そのマリア海溝といえば、少し前にあの核爆弾――『ブリーシンガメン』を投げ捨てた場所だ。なんたる偶然だろうか。

「でもまて、それなら被害が出ていそうなものだけどな」
「この建物は、世界絶滅規模の大禁呪スキル・ジャイアントインパクトでも耐えられるようなシェルターを兼ねているのです。詳しいことは分かりませんが、未来の技術を使っているとか……」

 ……未来?
 馬鹿な。フォースは、確定した未来はないと言っていた。
 どういうことだ……。

 だが、気になる点はあった。

 スキル無効化兵器『ジェイルブレイク』。
 あれは間違いなく未来の武器だ。

 秘密結社が供給したものならば、合点がいく。

「どうやら慎重に進んだ方が良さそうだな」
「はい、その方がよろしいかと思います。ここから、儀式の間『オーソリティー』までは少し歩きますが、どんな罠がひそんでいるか分かりませんから」

 テスラの言う通り、トラップはあるだろうな。
 きっと、ナイトメアの配置もしてあるだろう。

「じゃあ、下へ向かっていく。俺が先頭でいくから、みんなは離れないようついて来てくれ」


 ◆


 螺旋階段らせんかいだんが続く。
 下りれば下りるほど熱気も強くなり、汗をき始めていた。

「あついですね……」

 やや息を乱すゼファ。
 結構下ってきたしなぁ。ちょっと休憩を――。


「ユメ、ナイトメアです!! ――くっ!!」


 休憩を入れている暇なんてなかった。

 最後尾を歩いていたテスラが敵の存在を察知し、叫んだ。
 壁からゴーレム型のナイトメアが出現し、襲い掛かってきやがった。そんな所に埋め込まれていたのか……!


『エレクトロンボルト!!!』


 華麗に俺の頭上を飛び越えるネーブルは、ライジンスキルを全開で飛ばし――ゴーレム型ナイトメア目掛けていった。

「おぉ、ナイトメアを麻痺まひさせたな。すげぇぞ、ネーブル……! なんだ、こっそり鍛錬していたのか?」
「ごめん、迷惑掛けられないと思って鍛えていたの」
「そうだったか。体を大事にして欲しいけど、でも助かったよ」
「うん――って、ユメ、後ろからも!」

 ネーブルが背後を指さす。
 振り向くと、そっちにもナイトメアが。

「こっちは任せて下さい!」

 テスラが何もないところから杖を取り出した。
 やっぱり、フォースと同じか。


『――――――グラヴィティ!!!』


 ドンと大きな重圧が掛かるとゴーレムは凹み、沈んだ。
 ありゃ、スゲェな。重力の大魔法か。


「よくやった。テスラ! よし、ゼファ、移動速度増加を。まともに敵の相手をしていても仕方ないからな。さっさと進むぞ」
「分かりました。――グロリアスアジリティ!」

 全員に速度増加が掛かった。
 今のうちにゴーレム群を抜けていく。


 ◆


 かなり最下層まで下りて来た。
 熱はより高まり、グツグツと煮えたぎるようだった。

「ナイトメアの数も多くなってるな」
「ここから補助を掛ける。スペシャルガード、フルリフレクト、ラディウス、エキサイトメント、べスカーロア、インスピレーション、コンセントレイション、プロキオン、オーバードライブ、ソウルゲイン」

 スゴイ数の補助スキルが掛かる。

「おお、すごいなフォース」
「ここから先は未知数だから、念のため」
「助かる」

 ゼファのフル支援とフォースのフル補助で、かなり力をアップした。これなら、どんな敵が現れても負ける気がしないな。

「ユメ、もうすぐ到着です!」

 今は先頭のテスラが俺に言った。

「あそこか……!」

 ついに最下層へ辿り着いた。
 そこには大きな……巨大すぎる扉があった。


 この先に、六人の権力者がいるはずだ。


 テスラに合図を送り、扉を開けてもらった。


「……」


 これで本当の最後だ。
 決着をつける――。
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