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第87話 バーサーク

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 みんなで受付前まで向かえば、予想通り冒険者が挑戦しまくっていた。なんというお祭り的な活気。いいね、これだけ盛り上がってくれただけでも、作った意味はあった。

 おかげで消耗品が売れ、アイテムショップの売り上げも大幅アップだろう。観光だって増えているようだし、パラドックスへの移住を決めた大手・中堅ギルドもいくつか出始めているようだ。

 俺の国ますます強くなっちまうな! 笑いが止まらん!


「さて、俺たちの番が回ってきたな」


 前もって予約しておいたので、スムーズに番が回って来た。待機時間も短めだし、中々ストレスの少ない仕様になっている。

「行きましょう」

 ゼファに手を引っ張られた。
 俺たちはついにダンジョンへ入った。


【 トラオムダンジョン - 地下1F 】


 俺の頬のギリギリを何かがかすめていった。

「へ…………」

 いきなり矢が飛んできたかと思えば、次にはバーサーク状態のミノタウロス。大きな戦斧せんぷを猛烈な勢いで振り下ろしてきた。

 だが、


『ソウルテレキネシス』


 テスラのソウルフォースが敵の動きを止め、激しいノックバックをさせた。ドゴンと鈍い音と共に、獰猛どうもうなミノタウロスは壁に激突。沈黙した。

「おぉ~! テスラ凄いな」
「テスラちゃん、凄いです♪」

 俺とゼファは、テスラの華麗なる反撃に興奮した。
 あのデカイ怪物をいとも簡単に吹き飛ばしたのだからな。

 しかし次には矢を射ってきたモンスターが大量に現れた。

 まてまて、まだここ『地下1F』だぞ。
 敵が強すぎやしないか!?

「今度はなんだ……レッドコボルトアーチャー!? バーサーク状態じゃないか。おい、フォース。この専用ダンジョンのモンスターって、全部、バーサーク状態なのか!?」

「そうだよ。その方が面白いかと思って」

 舌を出してフォースはおちゃめに笑った。


 鬼か!!


 まあいい、この方が楽しめるってもんだ。
 俺は久しぶりに『世界終焉剣・エクスカイザー』を生成した。

「ちょっと勇者っぽく立ち回ってみますか! 前衛は任せろ」
「わたくしはフル支援を。グロリアスブレッシング! グロリアスアジリティ!」

 助かる。
 ゼファの支援のおかげで、ここはなんとか突破できそうだ。


 ◆


【 トラオムダンジョン - 地下10F 】


 ダンジョンは広々とした洞窟どうくつ系だった。
 かなり快適で、蒸し暑いとかもなければ、適正な温度。むしろ、住み心地よさそうな環境だ。だが、そんなダンジョンには強すぎるモンスターが跋扈ばっこしていた。


「宝箱見つけた」


 フォースが指さす方向には、在り来たりな宝箱が置かれていた。
 実に分かりやすい。

「開けてみるか」
「うん」

 てててと歩いて宝箱の前に向かったフォースは、腰を下ろし、それを不思議そうに見つめた。うんうん、無邪気なところも可愛いな。

 で、開封しようとしたのだが――


『シャアアアアアアア――――!!!』


「しまった! こ、これは……憤怒のミミック!!」

 まずい、あれは宝箱ではなく、モンスターだったか!!!
 宝箱が大きな口を開け、鋭すぎるトゲトゲの牙をフォースに向けた。しかも、ヤツは『バーサーク』状態。攻撃力・移動速度共に三倍となっている。

 このままでは、フォースが食べられてしまう……!

 俺は守ろうと、闇を展開しようとしたが――


『――――――エレメンタルフォース』


 虹色の高エネルギー体がレーザーとなり、ミミックに命中。
 一気に押し出し、敵を粉砕した。


 …………え。


「こ、これは……」
「ユメ様。今の、テスラちゃんみたいです……」

「マジ?」

 びっくりした。
 いきなり、レインボーの波動砲が飛び出てくるんだからな。

 当の本人は冷静にフォースを見下していた。


「…………」


 あちゃー…。
 こりゃ、フォースの自尊心プライドが傷ついたかもな。
 あとでなぐさめてやるかね。


 と、険悪な空気になるかと思いきや――、


「フォース。大丈夫でしたか、ほら、立って」


 テスラはフォースに手を貸していた。


「…………うん、ありがとう」


 フォースもまたテスラの手を取り、礼を言った。

 俺との約束・・、守ってくれたか。
 昨日の敵は今日の友。良い流れだ。
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