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第25話 魔神たちの居場所

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 聖女の力は万能だった。

 最強の治癒スキル『グロリアスヒール』のおかげで、フォースの傷は癒えた。浅い傷ではあったが、腹部は血がにじんていたし、死んでしまったのかと錯覚してしまうほどに、ぐったりしていたから俺は青ざめた。


 フォースは、気絶こそしていたけど大事に至らず本当に良かった。


 安堵あんどに包まれながら、ひとり孤独に庭で、満天の星空を見上げていると――。


「……ユメ」

 フォースのか細い声がした。


「もう平気か」


 俺は振り向かず、そのまま体調を訪ねた。


「うん。だいじょうぶ。だからね、いつものユメがいいな」

「フォース、すまなかった……俺は……守るって約束したのに」

「守ってくれたよ。ソウルフォースはいつも、あたしたちと共にあるから」


 共に。そうなのかな。
 でも、ソウルフォースでダメージを軽減していたのか。納得した。


「でも、あんなぐったりしていたし……すげぇ心配した」


「実はね……体操着のせいで物理・魔法防御力が極端に落ちていたから……。さすがに薄着すぎちゃった」


「そっちのせいかよ!」


 確かに、いつもの魔法使いのローブではなかったしな。防御力は無いに等しかった。ちなみに、ローブといっても、緑色の六芒星ろくぼうせい紋様が入った黒シャツだけど。


「油断してた……」
「いいよ。おかげで肩車していた時は至福を感じた」


 俺は、そこでフォースの方へ振り向――――


「……なんだその忍者っぽいカッコウ」
「忍者サキュバス」


 ……まさか例の店か。おのれ、キャロルめ、フォースになんてものを! いや、すごいけど、いろいろと凄いけれど……!

 肩とか腰とか肌の露出が大胆すぎだ。ヘソあたりもポイントが高い。肌色がまぶしいぜ……いや、そうじゃない! どこか忍者なんだかっ! 忍者要素薄れすぎだ!


「すぐに返品してきなさい!」
「イヤ!」


 わがままなフォースは、俺に飛びついてきた。
 よろしい、ならば堪能たんのうする!!


 ◆


 翌朝――またも大事件は起きた。
 よく起きるなぁ、事件。


「なに!? 国家予算がもう尽きたって!?」
「そうなのです……財政逼迫ひっぱく状態です。これでは国の維持が出来ませんっ」


 涙目ながらに、キャロルは身を震わせた。


 ダイヤモンドを売った資金はもうゼロ。
 人口も増えたし、その反動だろうか。


「キャロル、国はあとどれくらい持つ?」

「そうですねぇ……もって1週間でしょうか。このままでは作物は育たず、食糧は尽き……飢え死に。それだけなく……建物は風化してしまうでしょう」

「マジか。……たった1週間か。分かったよ、なにか策を考えておく」

「分かりました。それでは……」
「まて」


「え」


「例のヘンタイだがな、風の帝王だった。なあ、キャロル。仲間を疑いたくはないけど……ギルドメンバーにまた裏切者がいるんじゃないか。
 そもそも俺の国は、そう簡単には侵入できない構造だ。けど、帝王は入ってこれていた。つまり、手引きしたヤツがいるってことだ」


「…………こ、心当たりはないです」

 ウソだ。
 実に分かりやすいウソだ。


 キャロルはひたいに汗をにじませていた。少し震えているようにも見える。なるほど、誰かをかばっているのか。どうしても話せない理由ワケがあるらしい。


 いいだろう。


 彼女には大変世話になっているし、問い詰めないでおいた。


 なあに、魔神の一匹や二匹くらい泳がしておけばいいさ。


 ◆


 久しぶりに母さんが帰って来た。土産を持って。へぇ、名酒・アクアフロンティアか。察するに、どうやら水の聖国サンクに寄ったらしい。なお、アクアフロンティアは、ウルトラエリクサーと同等の効果があるのだ。


 ざっくり紹介すると、HP/SP全回復、ALL状態異常解除、一定時間、ステータス三倍など様々な効果がある。そんな高級なものどうやって買ってきたんだか。


「いままで何をしていたんだよ、母さん」
「ユメ、久しぶりね。母さんは魔神の調査をしていたのだけど、ついに彼らの居場所を特定したわ」


「なんだって!?」


 すると、母さんは人差し指を……に向けた。


「空!?」

「そう、宇宙そらよ。魔神はね、この世界の軌道上に見えない・・・・大きな城を構えていたの。今もずっとこの世界を約90分で1周、1日で約16周しているみたい」

「なんて具体的! でも、そういうことか!! すげぇぜ母さん!」


「そうと分かれば撃ち落とすか!」

 母さんは首を横に振った。


「残念だけど、その城は見えないし、移動速度が速すぎてとらえきれないの。でも、クリーチャーが出現してくるのだから、どこかに『出入口』はあるはず。母さんは、それを探そうと思うの。でも、少しだけそれっぽい場所を発見したのよ。ユメも行ってみる?」


「それっぽい場所……どこなんだ?」

「――――闇の覇国アニュスよ」


 そうきたか。


あのバカ・・・・のいる国か……面倒な。近寄りたくないんだよなー。真っ暗だし、辛気臭いし」
「でしょうね。あなたを闇に染め上げた張本人かいぶつがいるからね」


 闇の覇王……ヤツは、俺に全てを与えてくれた。
 だけど、それと同時に『光』を奪った存在でもある。

 ――いや、別に恨んではいないさ。おかげで、こんなに最強になった。

 でも、なにか・・・あるな。


 覇王・ナイアルラトホテプはいつだって、なにかをたくらんでいる。
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