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第2話 帝国脱出

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 家に帰った俺は、みんなに事情を説明した。


「――――そんなワケで国を出ていくぞ」


 みんな深刻な顔をしていた。
 そうだよな、ショックだよなー…。


「行こう。別にこの場所に未練みれんはない」

 フォースは、いつもの無感情のままに言った。


「そうですよ。わたくしたちは、四人がいれば十分です」

 天使の微笑みのゼファ。


「いっそ、わたしたちだけの王国でも作ればいいよ~」

 大胆な提案をしてくれるネーブル。


 うむ。そうだな、別にこの邸宅うちにこだわる必要はどこにもない。風の帝国キリエだって、たまたま住み心地がよくて、たまたま住み着いていただけだし。だから、一生住むのかなって思っていたけど、あの帝王の対応ではな。


 ――よし、出ていこうと決心したその時だった。


「……ん、なんかげ臭くない?」


 ネーブルが鼻をクンクンさせ、違和感を感じ取っていた。俺もやがてその異常事態を察知した。これは……。


「な!? ……うっ、確かに! まさか――!!」


 焦っていると、フォースが目蓋まぶたを閉じていて、集中しつつも手を周囲にかざす。

 すると、状況を教えてくれた。


「風の騎士団が火を放った。うちを燃やし尽くすみたい。最終処分・・・・と言っている」


「なんだと!? くそ! くそ!! そこまでするか!!! 俺たちを殺す気かよ、許せねえ……世界を救ってやったっていうのに!!」


 まったく、猶予ゆうよもクソもねーじゃねーか!! 
 次第に、火の手がこちらへ向かって来ていた。


「帝王には失望した! もういい! こんな国にはいたくない!! みんな、出ていくぞ!!」


 もう我慢の限界だった。


 ――――が、火の勢いはさらに強くなって、襲い掛かってきた。


「ぐっ……まずいな。これじゃ、出られないじゃないか」


 やってくれるぜ。
 出入口はふさいだってことか――どうやら、向こうは本気らしい。

 どうするべきか悩んでいると、フォースは手を伸ばしてきた。


「ユメ、ゼファ、ネーブル、あたしの肩に手を。テレポートする」



「お願いしますね、フォースちゃん」
「こっちには、偉大な魔法使いがいるからね」


 ゼファ、ネーブルはフォースの肩に手を置いた。
 俺はというと、腰に手をえた。


「…………ユメ」


 嫌がる様子もなく、うるんだ瞳で俺を見る今のフォースには感情があった。ぎこちなく、恥ずかしそうだ。そんな反応を示してくれるのは俺か、ゼファかネーブルだけ。他人には絶対に見せない顔だ。


「ダメだったか。ていうか、肩に手を置けないし」
「うん。お尻以外ならどこでもいいよ」


 以前、お尻を触ったら、すげぇキレられた。
 どうやら、お尻はフォースの逆鱗げきりんらしい。


「じゃ、国外へ出る」


 詠唱もなく、あっさりと俺たちはテレポートを開始した。


 ◆


 荒野フィールドを仲間と共に歩く。
 もちろん、あてもなくだ。


「国を作るのはいいけど、どこに作るべきかね。空いている土地なんぞあるものかね~」
「まあ、この辺りの大陸は『火の大国グロリア』、『水の聖国サンク』、『風の帝国キリエ』、『地の神国クレド』の四大国が統治しているからね~。あんまり土地も余っていなかな」


 残念そうに笑うネーブル。


 大陸は広大ではあるが、彼女の言う通り、四属性の強国がそれぞれの領土を治めている。だから、ネーブルが残念がるのも分かる。しかも、魔王が暴れまわる前は、領有権を巡って争っていたこともあるほど。


 今は魔王のこともあり、その前兆はないが――。


「ユメ、水の聖国サンクへ行く。地図を買って、島を探そう」


 いきなり、フォースがそう提案をした。
 その妙案にゼファは手をポンと叩き、鳴らす。


「いいですね、それ。サンクならば、わたくしの故郷でもありますし、しばらくは皆さんを泊めることも可能かと」

「おお、ゼファの家か。そいや、サンクだったな。よし、じゃ、サンクへ向かうか。歩いて、二日ってところだろう。それまでは普通の旅だな」


「「「おおお~~~!!!」」」


 ◆


 普通の旅といかないのが俺たちである。


 まず、なぜか人を襲うことで有名なアクティブモンスター『ラストオーク』が数百体現れて、群れで向かってきた。


「うわ……! すげぇオークの数。どうしてこんな……」
「ユメ様。あのオークは女性を襲い、酷い目に合わせているみたいです。許せません!」


 珍しくメラメラ燃える聖女のゼファ。
 なるほど、聖なる者として許せないわけだ。
 俺も元勇者として、その気持ちは一緒だ。


「じゃ、倒すか――ダークエネルギー解放」
「まって」
「なっ、フォース。俺の肩に乗るなよ~…良いところだったのに」
「オークたちは、ネーブルに狙いを定めた」


「え、わたし!? そんなぁ!?」


 まー…あんなギリギリビキニアーマーみたいな肌の露出が多いカッコしてるし、真っ先に狙われるよな。欲望むき出しのオークたちは、ネーブルに向かっていく。


「じゃ、倒すしかないよね」


 ニカっと白い歯を見せながら元気よく笑い、ネーブルは全身をビリビリさせた。お得意の最強スキル『ライジン』である。



『ムジョルニア――――――!!!!!』



 それはまぎれもない青天の霹靂へきれきだった。
 圧倒的な神のいかずちは、ラストオークを次々に駆逐していった。なんて爆速、なんて高火力。いつ何度見てもスゲェよ。


 稲妻いなづまの渦は更に激しさを増し、地面をえぐり、モンスターを塵に変えていった。敵はなんの抵抗もできず全滅した。


「あーあ。もう終わったよ。お疲れ、ネーブル」
「ありがと、ユメ。はいたっち~!」


 なんかハイタッチを求められたので、応じた。
 まったく、あんな太陽のような笑顔をされては、俺の出番を奪ったことを責められないじゃないか。許そう、可愛いから!


「そして、フォース。俺の顔をペタペタ触るんじゃない。嬉しいけど」
「ユメ~♡」


 だめだ。甘えん坊だからな、止めようがない。


 さてはて、このオークを向かわせてきたヤツが付近にいるらしい。それは、フォースも感じ取っていた。引きずり出しますかぁ~。


 でも、その前に、ドロップアイテムはきちんと収集しておかないとね。
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