上 下
50 / 199

はじまりの浜辺と抗えぬ運命...?

しおりを挟む
 俺に寄り掛かっている天音は、胸元が無防備だった。
 よ~く見ると谷間がわずかに見えていたのだ。さすが巨乳アイドル。

 朝っぱらから、とんでもないラッキーだ。この角度なら壮観。天音が起きないことを祈って、俺は視線を送り続ける。……はずだった。

「……おはよー」

 早くも天音が起きてしまった。タイミングの悪いッ。

「おはよう、天音。出来ればそのままでいて欲しい」
「う~ん? ああ、添い寝。いいよ、まだここのままでいてあげる」

 ポケポケした表情の天音は、全然気づいていなかった。よし、あと少しだけ堪能できそうだな。よしよし。


「天音さん、気を付けた方がいいです。啓くんは、あなたの胸元を覗こうとしていますから」

「……え! そうなの!?」


 頬を一瞬で赤く染め上げる天音は、俺から離れてしまった。……チッ、北上め。余計なことを。


「いや~、誤解しないでくれよ、天音。たまたまなんだ」
「うぅ。恥ずかしい……」

 涙目になる天音はジャージを直していた。あ~あ、あれではもう見えないな。

「不可抗力だ。許して欲しい」
「……うん。別に怒らないけど、やっぱり恥ずかしいじゃん!?」

「悪かった。それより、外へ出よう。嵐は去ったから」
「天気よくなったんだ。さっそく探索だね……って、琴吹さんは?」

「そういえば、気づいたときには居なかったな。外の様子でも見に行ったのかも」
「あ~、なるほどね」

 俺たちもさっそくトーチカから出た。
 すると、直ぐに雲一つない青い空が出迎えてくれた。気持ちの良い風が吹き抜けて、そんなに暑くもない。

 まだ嵐が過ぎ去ったばかりだからかな。なんて清々しい。

 海の方へ歩いていくと、浜辺はゴミが散乱しまくっていた。

「嵐で流されてきたのでしょうね」

 クールな表情で砂浜を見渡す北上は、急に服を脱ぎだした。

「って、北上さん、いきなり!」
「昨晩はお風呂に入っている暇がなかったですからね、朝風呂です」

 とはいえ、水着を着用していた。そんな黒ビキニをどこで拾ったのやら。……しかし、スタイル抜群だな。モデルみたいだ。

 あの透明感あるスベスベの肌も、なにを食ったら、ああなるんだろうな。


「……マジか」
「見惚れちゃいました?」
「そりゃ、男としては当然」
「それは良かったです。では、一緒に泳ぎましょう」


 俺の手を握ってくる北上だったが、天音が阻止した。ですよね。


「ちょっと、北上さん。海水浴よりも、みんなの無事を確認しないと」
「分かっています。でも、女子として体は清めておきたいので」

 なぜか胸元を強調してくるしッ。
 まさか、トーチカでの天音に対抗しているのか。そりゃ、北上もとんでもバストだけどさ。

 なんで二人とも巨乳なんだ……?

 目の保養にいいけどさ。

 仕方ないので、俺も汗を流すことにした。


「さくっと水浴びして探索しに行きますか」

「そうだね、そうしよ」
「決まりですね」


 * * *


 パパっと海水浴を済ませ、水着のまま周辺探索へ。天音も北上も大胆なビキニで、目のやり場に困る。だが、これはこれで……うん、良い眺めだ。

 昨日の海岸まで向かった。

 そこには船の姿形はない。さすがにいないか。


「不吉なことは言いたくないけど、バラバラになった気配はないな」
「ええ、船の残骸も見当たりません。少なくとも、流されはしたのでしょう」

「本来なら出航できないレベルだったけど、タイミングが無かったからな」

 本当にあの選択で良かったのか、今更ながら思った。でも、下手すりゃ嵐で船が流されていた。だから、あれで良かったんだと思う。

 あとは奇跡を願うしか。

 他の場所も探索をしていくが、船の気配はなかった。

 だとすれば、八重樫たちは無事に島を出られたということか。


「啓くん、あたし達が居た拠点と浜辺の方角へ向かいましょう」
「そうだな。でも、その前に琴吹さんはどうする」

 心配していると森の方からガサガサが音がして、そこから琴吹が姿を現した。そんなところから出てくるとは。

「おはよー。早坂くんに天音さん。あと絆」
「おはよう、琴吹さん。どこへ行っていたんだ?」

「そりゃ、もちろん周辺の様子を見に行っていたんだよ。あとトーチカがカビ臭いからねえ、お風呂も兼ねて」

 やっぱり女子は、まずはお風呂なんだな。清潔感あっていいけど。

「これから、俺たちの拠点側へ向かう。琴吹さんもついて来る?」
「当然。ひとりぼっちとか嫌だ」

 その割には単独行動だった気が。まあ、細かいことはいいか。

 とにもかくにも、初日に俺と天音が倒れていた例の浜辺へ向かう。

 元大伊拠点から歩き続けてニ十分ほど。ようやく、ベースキャンプ側に辿り着いた。まさか、またここに戻ってくることになろうとは。

 はじまりの浜辺に戻ってきた。
 少し感慨深く感じていると、天音が声を荒げた。


「……ちょ、あれ……!!」


 指をさす方向に俺も北上も琴吹も、その先を追う。


 すると――


 小型クルーザーが浜辺で座礁ざしょうして、横倒しになっていた。


「「「うそ……!?」」」


 ……な、嘘だろ……?

 信じられねえ……!

 あの大嵐でここまで流されてきたっていうのかよ。しかも、投げ出されている人もいた。


「あれは……野茂、篠山、大塚さんだ。三人だけか?」
「船の中に取り残されているのかも。あたしが見にいってきます」

 北上が走って行ってしまう。

「天音、悪いけど琴吹さんと一緒に三人を看てくれ」
「わ、分かった」


 俺は北上を追いかけた。
 すぐに小型クルーザーへ辿り着き、デッキや窓を覗いた。


「……いないか」
「ええ、今のところあの三人の姿しかありません。他の方はどこへ行ったのでしょうか」
「流されたのかな」

「でしょうね。海を漂っているか、別の島へ流されたか……こんな状態では皆目見当もつきません」


 どうにか全員の無事を確認したい。
 あの三人がいたんだ。

 千年世や桃瀬、八重樫やほっきー、リコとか……大伊だってどこかにいるはずだ。

 もう少し船を探して――


「きゃあああああああああ……!!!」


 な、なんだ、誰かの悲鳴!?
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:1,884

4人の乙女ゲーサイコパス従者と逃げたい悪役令息の俺

BL / 連載中 24h.ポイント:852pt お気に入り:819

三度目の人生でもあなたを探し続けている

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:28

異世界転生、授かったスキル【毎日ガチャ】って…

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,279pt お気に入り:503

私がこの株を買った訳 2023

経済・企業 / 連載中 24h.ポイント:355pt お気に入り:13

処理中です...