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第48話 エドウィンの稽古

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 ライトニング家の自室へ戻った。
 ルシアとも自然と離れ――ひとり。


「まだ一緒に寝るとか、そこまでの関係ではないからな……」


 ベッドの上で仰向けに、ゆっくりとまぶたを閉じれば眠気が襲ってくる。でも、たまにあの優しい手とか表情、柔らかな身体の感触が恋しくなる。それは今も。



 ――ああ、やっぱり俺はルシアが――。


 ◆


 朝を迎え、日課の素振りを終えた。

「ふぅ……」
「おはよう。今日も精がでまくっているようだね、レイジ」

「エドウィン。おはよう」


 挨拶を返すと、エドウィンは木刀をチラつかせた。どうやら、稽古けいこをつけてくれるらしい。


「珍しいな、エドウィンが俺の相手をしてくれるのか」
「まあね。ほら、君ってばあと二日後にはムジョルニア家へ行ってしまうだろう。少し寂しくなるしね」

「本当かよ」
「本当さ。ほら、そっちも木刀を」


 受け取り、俺は即座に構えた――瞬間にはエドウィンの打撃が入った。……なんて重い。これが彼の実力か。


 俺はエドウィンの剣をいくつも受け、けれど流した。


「たぁっ……! ていやぁッ!」


「うん、いい剣技だ。とても、元雑兵とは思えない剣裁き。そのひとつひとつの太刀筋に魂がもっている……!」


「そりゃ、お褒め戴きありがとうございます!!」


 木刀で『桜花一閃』スキルを放つ――。



「おぉっと! こりゃスキルを使われるとは、こちらもいかせてもらうよ」



 まずっ……!
 戯れが過ぎたか!


 エドウィンはニカッと爽やかに笑うと――



『ハンドレットエグゼキューション!!』



 木刀が百本・・に――!?



『ドドドドドドドドドドドドドドド……』



 聞いた事の無いような音が襲って来て、俺はぶっ飛ばされかけた。――っぶねぇ、多分手加減されてる――!



「……ったぁッ!」



 なんとか宙へ舞い、俺はギリギリで回避。
 かなり距離を取って着地した。


「……へぇ、さすが私が見込んだ男だ。レイジ、君は立派な騎士だよ。でも、あれが本気で真剣だったのなら分からなかったかもね」

「だろうな。その場合は俺の負けだった」


「でも、回避した事実は事実。凄いよ」


 稽古けいこは終わった。
 エドウィンはまた会議があると言って、嘗てない程に爽やかに去っていった。……なんだかなぁ、稽古けいこだったとはいえ負けた気分だ。


 ◆


 汗を流す為、たまには大浴場へ。
 今日は何故か湯気が濃くて、視界不良だった。
 どうしてだろう?


「……ん? 先客か……?」


 湯気が少し薄れて、影が現れた。
 小さな影で――え、まさか。


「え……きゃぁ!?」


 背を向ける少女の声。
 白い肌が向けられる。
 ……って、クリーム色の髪!


「ブレアじゃないか」
「ば、ばかもの。乙女の柔肌を嘗め回すのように見るでない……! は、恥ずかしいではないかぁっ」


「いや……その、すまん。まさか居るとは思わなかったんだよ。一応、言っておくけど混浴・・だけどな」


 そう、この屋敷にある浴場は『混浴』なのだ。エドウィンの趣味らしい。美人メイドとよく混浴しているとか何とか。さすが貴族のやる事は大胆だな。


「ま、まあいいのじゃ……。お湯に浸かっておるしの。ただ、あんまりジロジロ見るでないぞ」

「分かってるよ。それでさ、ブレア」

「な、なんじゃ」


「一度、経験値製造を見ておかないか。俺、二日後にはムジョルニア家へ行かなきゃで、しばらく帰ってこれないんだよ」

「そうだったか。分かった。では、この後直ぐに騎士団へ向かおう」


 顔だけ出すブレアは、やや睨むように言った。まだ警戒されているらしい。俺はというと、掛け湯後にお湯に浸かって一応距離を取っていた。


「……うん」
「ブレア」
「……っ」


 びくっとブレアは、やっぱり警戒する。


「ブレアは、ずっと商人をやってるのか?」

「そうじゃ。この帝国アイギスでずっとじゃ。親から代々受け継いでいる行商なんじゃよ。でも、今はこのライトニング家にお世話になっておるし、これが中々快適で困っている。もうしばらくは居ようかのう」

「ずっと居ればいいさ。ブレアみたいな優秀な商人が専属でいてくれると、俺も嬉しい」

「……!? そそそそそ、それって……」


 ぶくぶくと口までお湯に浸かり、ブレアは顔を赤くしていた。……おいおい、それ以上は危ないぞ。


「もうブレアは、大切な仲間だよ」
「あ、ありがとなのじゃ……レイジ」
「こちらこそ」


 しばらくお湯に浸かっていると、なぜか次にパルとラティがやって来た。


「二人とも!! うわっ!」


「主様……いらしたのですね」

 ラティは全く隠していない!!
 ちょっと!!


「あ、あらぁ……レイジさん。でも、混浴ですしね。なにも問題ないですよね……えへへ。ちょっと恥ずかしいな」

 パルは割と慣れている? らしいく、ちょっと顔を赤くするくらいだった。なんで……?



 ――で、最後に。


「みんな~、わたしも…………え」


 目を見開くルシアは、俺を目線を合わせる。


「あ……」

「レ、レイジさん……」


「お、おはよう。ルシア」
「……おはようございま――…むぅ」

「ル、ルシア! まてまて膨れるなって……ほら、こっちおいで。隣に」
「……ひざの上です」


「え」


「レイジさんのひざの上じゃなきゃイヤです!!」



 なんですと――――――!?
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