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S級装備のメイドさん

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 庭ダンジョンは、地下30階まであるようだ。リナによれば昔、ネヴィルが冒険に出た事があるらしく、そこまで辿り着けたという。

 ダンジョンには、基本的にスライムがいるようだな。と、言っても様々なスライムらしい。機会があったら降りてみたいな。

 そんな一風変わった庭を覗き込んでいると、地下階段から誰か上がってきた。


「――え」


 そこには、桃色髪のメイドさんがいた。右手にはS級グレイスガントレットを装備し――更に、S級サフォークを握っていた。

 ガントレットはともかく、あの『サフォーク』は珍しい武器だ。剣のような大きさをしたフォーク。あれで突き刺されたら、クリティカルヒット間違いない。


「君は……?」
「あなたこそ何者ですか! 黒いドラゴンを従えて……怪しいです」

「僕はヘンリー。ランカスター帝国の元ギルド職員さ。今はわけあってこの屋敷を買い取った。だから、ここの主だね」

 そう説明するとメイドさんは、ますます警戒した。

「ここはネヴィル様のお屋敷です。侵入者は排除します!!」
「ちょ、本当だって!」

 焦っていると、部屋の奥からリナが出てきた。

「アルマ、止めて下さい!」
「……! リナ様。しかし……」
「この方は、このお屋敷の主で間違いありません。今後、彼には全力でサポートするように」

「……はっ、これは失礼をしました。分かりました、リナ様」


 深々と頭を下げるアルマというメイド。どうやら、分かってくれたらしい。

 それにしても、なんでダンジョンにメイドさん?


「リナ、彼女は?」
「わたしを支えてくれるメイドのアルマです」


 そうか、目が見えないし……それに女の子の問題となるとエドワードでは限界があるわけだ。それでメイドも雇っているってわけか。

 それにしても、凄い武装だぞ。

 ほとんどがS級装備だ。
 僕も装備を整えないとなあ。
 やっぱり、あれくらいの装備でないとダンジョンの攻略は厳しいのかも。あぁ、あと回復アイテムとかも買わないと。


「よろしくお願いします、主様」
「よろしく、アルマ」


 どうやら認めてくれたようだな。
 リナがいて助かった。


 * * *


 アルマから屋敷の案内を受けた。ヨークと共に二階へ上がり、広がる風景に目を奪われていた。

 そうか、ここは秘密の場所というだけあり、かなり辺鄙へんぴな場所にあるようだな。周りはニニアンという巨大な湖が広がっていた。

 というか、湖のど真ん中にある――島だった。


「嘘だろ……」


 船着き場がない。
 完全に孤立した島だな。

 行き来は『テレポートスクロール』のみを使うらしい。そりゃ、秘密の場所なわけだ。

「湖が透き通っていて綺麗ですね、ヘンリーさん」
「いや、ヨークの方が綺麗さ」

「――へ!?」

 目を丸くし、ぽかーんと立ち尽くすヨーク。僕の不意打ちに顔が真っ赤になっていた。ちょっと、からかってみるつもりだったが、嬉しそうな顔をしているし……黙っておくか。


「ヘンリー様とヨーク様のお部屋は、この二階をお使いいただければと思います」
「二階を? 贅沢だな。こんな見晴らしがいいところを使えるだなんて」


 快適で最高の気分だな。この屋敷にはなんだってありそうだし、執事とメイドもいるし……ひょっとして最強の環境を手に入れてしまったのではないだろうか。


「ひとつ聞きたい、アルマ」
「はい、なんでしょう」
「街へ戻る時は、テレポートスクロールを使えばいいんだよな?」
「はい、スクロールは消耗なしで何度でも使用できますから、ご安心下さい」


 なるほどな。
 どれ、試してみるか。


 テレポートスクロールを使用してみた。


 瞬間で転移を果たし、また街へ戻ってきた。


「おぉ、ネヴィルの城の前か」
「これは便利ですねー!」

「わぁッ! ヨーク、いつの間に……」
「転移する瞬間、ヘンリーさんの背中に触れたんです!」


 そうか、触れさえすれば一緒にテレポートできるんだ。こりゃあいい。調べてみると、。テレポートスクロールは最大で十人まで同時転移できるようだ。

 使用回数は、なんと無限。
 捨てない限りは使い続けられる。

「よし、ついでだし僕とヨークの装備でも買うか」
「本当ですか! わたくし、可愛いお洋服が欲しかったんですっ。あと下着とか」

「服かぁ、そうだな。……って、下着は自分で買ってくれ。お金あげるから」
「はいっ、可愛いのいっぱい買いたいです♪」

 ヨークはすっかり上機嫌だな。
 さてと、アイテムショップでも向かうとしますか。
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