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新章
第100話 フルクトゥアトよ、永遠に(完結)
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ユウェンスに連れられて外へ行くと、そこには多くの住民が集まっていた。何事だ……てか、百人以上はいるぞ。
よく見ると――昨晩助けた女の子達がいた。その家族もいるわけか。それと野次馬かな。分からないけど、結構な数だ。
「アウルム様、わたしを結婚してください!」「いえ、わたくしとです!」「私とですよ!?」「ダメです、わたしです!!」「あたしよ、あたし!!」「もう私は約束しています」「そんなの認められません!」「この私とお付き合いください、アウルム様!」「私の心はアウルム様のものですよ~」「きゃー、こっちを振り向かれましたわぁ。かっこいい!!」
え、え……ええッ!?
助けた女の子たちはともかく、なんか助けた覚えのない人達もいた。何がどうなっている? 焦っていると、いつの間にかいたマルガが説明してくれた。
「どうやら、昨晩の“闇ギルド事件”が全国に伝わったようなのです。それで、アウルム様の力が示された形になり……英雄としての格が上がったといいますか、女性人気が急上昇。故に主様を狙って殺到しているのです」
なるほどねー!
事件を解決したら、こんな事になるとは……嬉しいやら大変やら! てか、こんな三十、五十人を迎えられる技量とかないぞ、俺は。
困った……困ったぞ。
顔面から汗を滝のように流していると、屋敷からフルクが現れた。この光景を見て、軽い溜息を吐き、俺の肩に手を置く。な、なんだか怖いな。
「アウルムさん、わたしと行きましょう」
「え……フルク?」
「アオベの葉で“テレポート”ですっ!!」
フルクが葉を使った。
その瞬間、俺とフルクはどこかへと転移。
――って、どこへ行くつもり!?
◆
四分統治・テトラルキアの防壁へ。
こんな場所にはS級村人くらい常駐していない。しかも、オムニブス側だから人気はほとんどない。
「どうしてこんな場所に」
後姿を向けるフルクは、少し震えて振り向く。
その目尻には涙。
「も~、アウルムさん! 浮気ですかっ」
「え、いや……その……そんなつもりはないヨ!?」
「声が上擦っていますよ」
「仕方ないだろう。あんな人数の女の子に囲まれた経験はなかったし、これが初めてだ」
「アウルムさんは……その、あの中から将来を共にする方をお選びになるんですか」
不安気に、そして潤んだ上目遣いでフルクは俺を見る。そう視線を向けられると俺は弱い。ていうか、俺はフルクとマルガ、カルニが一番だ。この三人の中で優劣をつけるつもりはなく、全員がナンバーワン。
「フルクトゥアト、今までもこれからも一緒だ」
「アウルム……さん!?」
ぎゅっとフルクを抱きしめた。
小さな体が俺の中に抵抗もなく収まり、素直に受け入れてくれた。
「お前は俺だけの聖女だ」
「嬉しい。嬉しすぎて涙が……」
ぽろぽろ涙を零し、笑顔を見せるフルク。あまりに可愛くて、もっと抱きしめた。そうだ、こんな平和がずっと続けばいい。
戦争なんてクソくらえだ。
でも、それでも魔王たちは脅威であり、国へ襲い掛かって来ようとする。……ああ、でも、いいさ。
俺の最強の【四分統治】――『オムニブス』、『イニティウム』、『パルウァエ』、『カリブルヌス』はどの場所においても破壊不可能の防衛設備が充実しており、外界の状況についてはS級村人が目を光らせている。
なにがあろうとも俺は“悪”に屈せず、戦い続ける。たとえ、国が孤立し――最後のひとりになろうとも、国の主としての責務を全うする。
フルクトゥアトは――永遠だ。
よく見ると――昨晩助けた女の子達がいた。その家族もいるわけか。それと野次馬かな。分からないけど、結構な数だ。
「アウルム様、わたしを結婚してください!」「いえ、わたくしとです!」「私とですよ!?」「ダメです、わたしです!!」「あたしよ、あたし!!」「もう私は約束しています」「そんなの認められません!」「この私とお付き合いください、アウルム様!」「私の心はアウルム様のものですよ~」「きゃー、こっちを振り向かれましたわぁ。かっこいい!!」
え、え……ええッ!?
助けた女の子たちはともかく、なんか助けた覚えのない人達もいた。何がどうなっている? 焦っていると、いつの間にかいたマルガが説明してくれた。
「どうやら、昨晩の“闇ギルド事件”が全国に伝わったようなのです。それで、アウルム様の力が示された形になり……英雄としての格が上がったといいますか、女性人気が急上昇。故に主様を狙って殺到しているのです」
なるほどねー!
事件を解決したら、こんな事になるとは……嬉しいやら大変やら! てか、こんな三十、五十人を迎えられる技量とかないぞ、俺は。
困った……困ったぞ。
顔面から汗を滝のように流していると、屋敷からフルクが現れた。この光景を見て、軽い溜息を吐き、俺の肩に手を置く。な、なんだか怖いな。
「アウルムさん、わたしと行きましょう」
「え……フルク?」
「アオベの葉で“テレポート”ですっ!!」
フルクが葉を使った。
その瞬間、俺とフルクはどこかへと転移。
――って、どこへ行くつもり!?
◆
四分統治・テトラルキアの防壁へ。
こんな場所にはS級村人くらい常駐していない。しかも、オムニブス側だから人気はほとんどない。
「どうしてこんな場所に」
後姿を向けるフルクは、少し震えて振り向く。
その目尻には涙。
「も~、アウルムさん! 浮気ですかっ」
「え、いや……その……そんなつもりはないヨ!?」
「声が上擦っていますよ」
「仕方ないだろう。あんな人数の女の子に囲まれた経験はなかったし、これが初めてだ」
「アウルムさんは……その、あの中から将来を共にする方をお選びになるんですか」
不安気に、そして潤んだ上目遣いでフルクは俺を見る。そう視線を向けられると俺は弱い。ていうか、俺はフルクとマルガ、カルニが一番だ。この三人の中で優劣をつけるつもりはなく、全員がナンバーワン。
「フルクトゥアト、今までもこれからも一緒だ」
「アウルム……さん!?」
ぎゅっとフルクを抱きしめた。
小さな体が俺の中に抵抗もなく収まり、素直に受け入れてくれた。
「お前は俺だけの聖女だ」
「嬉しい。嬉しすぎて涙が……」
ぽろぽろ涙を零し、笑顔を見せるフルク。あまりに可愛くて、もっと抱きしめた。そうだ、こんな平和がずっと続けばいい。
戦争なんてクソくらえだ。
でも、それでも魔王たちは脅威であり、国へ襲い掛かって来ようとする。……ああ、でも、いいさ。
俺の最強の【四分統治】――『オムニブス』、『イニティウム』、『パルウァエ』、『カリブルヌス』はどの場所においても破壊不可能の防衛設備が充実しており、外界の状況についてはS級村人が目を光らせている。
なにがあろうとも俺は“悪”に屈せず、戦い続ける。たとえ、国が孤立し――最後のひとりになろうとも、国の主としての責務を全うする。
フルクトゥアトは――永遠だ。
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