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新章
第88話 第十エリアを目指せ
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なんとか皆を守り切った。
まさか帝国の騎士の奇襲があるとは思わなかったけど……。これからも、帝国からの刺客があるかもしれない。気を引き締めていかないとな……。
「まあ、今日もう疲れた……休むか」
切断された左腕は、フルクのヒールでくっついて、ちゃんと動いていた。傷跡も全く無くて、元通り。完治までいくとは、さすが聖女だ。
風呂など済ませ、俺は自室へ。
ベッドの上に寝転がれば、自然と瞼が重くなる。俺はそのまま寝た。
・
・
・
その夜、俺は不思議な夢を見たんだ。
白い空間の中に――黒い礼服の少女。
「……君はもしかして」
少女が振り向くと、黒い瞳で俺を見据えた。この子は、間違いない黒の聖女アマデウス様だ。
「勇者アウルム……久しぶりですね。聖女フルクトゥアトを大切にして下さっているようで、わたしは嬉しいです。けれど、あの子の体調が優れないのでしょう」
「そ、そうだ……最近、フルクが眩暈を起こしたり、倒れたり……いったい、どうなっているんだい」
アマデウス様はゆっくりと俺の方へ歩いてくる。目の前にこられると、腰を降ろせと指示されたので、俺はしゃがんだ。こうして横に来られると結構な身長差があるな。
それから、彼女は耳元でこう言った。
「――あの子にだって、えっちな気分になる時くらいありますよ。貴方の事ばかり考えているようですからね」
「ふぁぁ!?」
いきなりトンデモナイ事を言われ、俺はドキッとする。そ、そりゃあ……フルクだってそういう時があるだろうけど――そ、そうか。
動揺していると、アマデウス様はくすくす笑う。
「冗談です」
「冗談かよ!! 本当なんだよ……」
「ええ、それですが、アウルムさんのお持ちになられている『EXダンジョン』に穢れが生じておるようです。その瘴気に中てられたのでしょう。微かに邪悪な気配が漏れているようですし」
「EXダンジョンが? そんなバカな。……いや、まてよ、あそこはモンスターだらけのダンジョンだ。邪悪なモンスターがいても、おかしくはないのか」
外には存在しないようなヤバイモンスターだらけだからな。一体や二体……いや、それ以上、居てもおかしくはない。そう考えていると、アマデウス様は助言をくれた。
「第十エリアを目指しなさい。そこにいるボスモンスターを討伐するのです。それが今回の原因です」
「第十エリアだって? まってくれ、まだ第四エリアの攻略が終わったばかりだぞ。第十だなんて、なかなかキツイぞ」
「そうでしょうね。でも、勇者である貴方ならきっと大丈夫。フルクトゥアトを頼みますよ。そうでなければ、わたしが許しませんよ」
優しい口調ながらも、恐ろしい感情が籠っていた。こりゃ、期待を裏切ると痛い目を見そうだな。よし、ならば、第十エリアを目指す。
「分かった。アドバイスに感謝する、アマデウス様。俺は、行くよ」
「ええ、これでまだ暫くはお別れです。その前に、アウルム……わたしの頼みを聞いてくれませんか」
「? なんだい?」
「抱っこしてください」
「マジかよ。構わないけど、いいのか」
問題ないと俺の前に寄ってくるアマデウス様。フルクと同じくらい小さな体をグイグイ寄せてくるので、さっさとやれという事らしい。仕方ないな。
「暴れないでくれよ」
「ええ、変な所を触れなければ暴れません」
とか言いつつも、向こうから飛びついてきた。……おぅふ。なんて小さい子なんだ。でも、なんだろう。不思議な気持ちだ。
「満足かい」
「ええ、満足しました。なるほど、フルクトゥアトが羨ましいですね。わたしも、アウルムさんが欲しくなりました」
「本当かよ」
「ええ、本当です。また抱っこしてください」
「また機会があったらな」
「その時は頼みますよ。では、わたしはカルディアと合流しなければなりませんので、また近いうちに」
――そこで黒い光に包まれ、俺は夢から覚めた。
まさか帝国の騎士の奇襲があるとは思わなかったけど……。これからも、帝国からの刺客があるかもしれない。気を引き締めていかないとな……。
「まあ、今日もう疲れた……休むか」
切断された左腕は、フルクのヒールでくっついて、ちゃんと動いていた。傷跡も全く無くて、元通り。完治までいくとは、さすが聖女だ。
風呂など済ませ、俺は自室へ。
ベッドの上に寝転がれば、自然と瞼が重くなる。俺はそのまま寝た。
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その夜、俺は不思議な夢を見たんだ。
白い空間の中に――黒い礼服の少女。
「……君はもしかして」
少女が振り向くと、黒い瞳で俺を見据えた。この子は、間違いない黒の聖女アマデウス様だ。
「勇者アウルム……久しぶりですね。聖女フルクトゥアトを大切にして下さっているようで、わたしは嬉しいです。けれど、あの子の体調が優れないのでしょう」
「そ、そうだ……最近、フルクが眩暈を起こしたり、倒れたり……いったい、どうなっているんだい」
アマデウス様はゆっくりと俺の方へ歩いてくる。目の前にこられると、腰を降ろせと指示されたので、俺はしゃがんだ。こうして横に来られると結構な身長差があるな。
それから、彼女は耳元でこう言った。
「――あの子にだって、えっちな気分になる時くらいありますよ。貴方の事ばかり考えているようですからね」
「ふぁぁ!?」
いきなりトンデモナイ事を言われ、俺はドキッとする。そ、そりゃあ……フルクだってそういう時があるだろうけど――そ、そうか。
動揺していると、アマデウス様はくすくす笑う。
「冗談です」
「冗談かよ!! 本当なんだよ……」
「ええ、それですが、アウルムさんのお持ちになられている『EXダンジョン』に穢れが生じておるようです。その瘴気に中てられたのでしょう。微かに邪悪な気配が漏れているようですし」
「EXダンジョンが? そんなバカな。……いや、まてよ、あそこはモンスターだらけのダンジョンだ。邪悪なモンスターがいても、おかしくはないのか」
外には存在しないようなヤバイモンスターだらけだからな。一体や二体……いや、それ以上、居てもおかしくはない。そう考えていると、アマデウス様は助言をくれた。
「第十エリアを目指しなさい。そこにいるボスモンスターを討伐するのです。それが今回の原因です」
「第十エリアだって? まってくれ、まだ第四エリアの攻略が終わったばかりだぞ。第十だなんて、なかなかキツイぞ」
「そうでしょうね。でも、勇者である貴方ならきっと大丈夫。フルクトゥアトを頼みますよ。そうでなければ、わたしが許しませんよ」
優しい口調ながらも、恐ろしい感情が籠っていた。こりゃ、期待を裏切ると痛い目を見そうだな。よし、ならば、第十エリアを目指す。
「分かった。アドバイスに感謝する、アマデウス様。俺は、行くよ」
「ええ、これでまだ暫くはお別れです。その前に、アウルム……わたしの頼みを聞いてくれませんか」
「? なんだい?」
「抱っこしてください」
「マジかよ。構わないけど、いいのか」
問題ないと俺の前に寄ってくるアマデウス様。フルクと同じくらい小さな体をグイグイ寄せてくるので、さっさとやれという事らしい。仕方ないな。
「暴れないでくれよ」
「ええ、変な所を触れなければ暴れません」
とか言いつつも、向こうから飛びついてきた。……おぅふ。なんて小さい子なんだ。でも、なんだろう。不思議な気持ちだ。
「満足かい」
「ええ、満足しました。なるほど、フルクトゥアトが羨ましいですね。わたしも、アウルムさんが欲しくなりました」
「本当かよ」
「ええ、本当です。また抱っこしてください」
「また機会があったらな」
「その時は頼みますよ。では、わたしはカルディアと合流しなければなりませんので、また近いうちに」
――そこで黒い光に包まれ、俺は夢から覚めた。
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