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第46話 アイテムボックスを拡張せよ
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――結局、風呂へ向かう事になった。
この屋敷には温泉がある。
あの共和国の将軍で、建築家のモエニアの趣味らしく……異国の和というものを再現したものらしい。
「マ、マルガ……こっち見るなよ」
「主様、普通は逆です」
そんなツッコミを戴き、俺は先に入っていく。だめだ、緊張とかで頭が働かない。これから本当にマルガとお風呂に入っちゃうのかよ……。
木製の椅子に座って待っていると、ペタペタ足音がして――マルガの気配を感じた。
「そ、その本当に背中を流してくれるのかい」
「もちろんです。その為に浴場に来ているのですから……あら、主様ってば震えているのですか」
背中に抱きついてくるマルガさん。
素晴らしい感触が――ってぇッ!?
「うわぁ……! マルガ、約束が違う。背中を洗ってくれるんだろう!? なぜ抱きつく! すっごい感触だったけど、そうじゃない! ていうか、どうしちゃったのさ……キャラ変わりすぎじゃない!?」
「これが本来のわたくしなのです。こう見えて、わたくし支配するよりも……支配されたいドMなんです。勇者であるアウルム様になら、あんな事やこんな事されて、征服されも構いません」
「構えよッ!?」
なんか凄い事を口走っているよ、この人。……あぁ、ダメだ。マルガには敵いそうににない。
「主様、ヘンタイメイドはお嫌いですか?」
「……分かった分かった。降参だ。マルガには勝てそうにないわ。勇者である俺が敗北を知るとはな……でも、気持ちは嬉しいよ」
そう素直な気持ちを伝えると――
マルガは俺の背中を舐めてきた。
「うあぁぁッ!! なにをする!」
「お背中を綺麗にするんです」
「ここここ、このヘンタイメイドがッ!!」
「……ぁ。ありがとうございますッ。主様に罵られるとか……もうわたくし、幸せすぎて死んじゃいそうですぅ~!!」
がっつり抱きつかれ、俺は逃げられなくなってしまった……。普段は凛々しいマルガがこんなヘンタイだったとは……。
いや違う。
いろいろストレスが溜まっていたんだ。うん、きっとそうだ!! そう、だよな……?
◆
「――――ぁ、疲れた」
自室へ戻り、ベッドへダイブ。
クタクタの体を休めた。
風呂では大変だった。マルガに襲われ、俺は身も心も穢されて……いや、穢されてはないけれど、なんか微妙な大人の階段を上った気がする。
今後、ヘンタイメイドには気を付けよう(戒め)。
自然と瞼が重くなって、俺は眠った。
――翌日――
自室を出ると、フルクが待っていた。
「お、おはよう、フルク。待っていてくれたのか?」
「おはようございます。はい、昨晩はアイテムボックスについて考えていたら眠ってしまいまして……でも、その案が浮かんで――って、アウルムさん、寝不足です? 目に隈が出来ていますよ」
「あ、あぁ……昨日、ちょっとヘンタイメイドが――うわッ!!」
ちょっと視線を逸らすと、マルガがニヤッと笑ってこちらを見ていた。……おのれ、ヘンタイメイド。
「ど、どうかしました?」
「いや……何でもないよ。ちょっと悪夢をね。そう、悪夢を見たんだ……あはは……」
「そうなんですね。先に朝食にしましょうか」
「そうしよう。それからアイテムボックスについて話をしよう」
妙にニヤついているマルガとも合流を果たした。食堂へ歩き、俺は先にフルクをいかせ、マルガを引き留めた。
「……主様、二人きりにして……しかも、こんな壁にわたくしを押し付けるとか」
「黙れヘンタイ。そんないやらしい目で俺を見るなッ」
「あぁ、たまりませんッ」
だめだ、逆効果だ。
罵ればマルガはその分、喜ぶ。いや、悦ぶ。快楽と悦楽だ!! ――って、何を言っているんだ俺も。
「頼むからフルクといる時は普通にしてくれよ」
「分かっております。今はアイテムボックスの拡張が最優先課題ですから……」
「さりげなく抱きつこうとするな」
ひょいっと回避。
俺は食堂へ向かう。
「もぉ~、主様ってばつれないですね。そこがいいんですけどッ」
◆
テーブルにつき、俺は今後の話をした。
「単純に仲間を増やして荷物持ちをしてもらう手もあるが、それでも持ち運べる量に限界があると思う。だから、アイテムボックスの拡張も考えたい」
俺はそう提案すると、フルクが挙手した。
ほう、何かあるのかな。
「あの~、アイテムボックスって基本的にはスキルじゃないと増やせないんですよね」
「その通り。基本的に商人の持つ【アイテムボックス拡張】スキルでないと増やせない。でもそのスキルは、世界の冒険者が欲しがるからね。スキル取引市場では、3000万セルで取引されている代物らしい」
――と、メディケさんから情報を貰っていた。闇医者は、そういう取引情報にも詳しいらしい。
「それです!」
と、何か思い当たる節があるのだろうか、フルクは椅子から立ち上がる。
「それって?」
「実は、少し前に共和国へ行ったじゃないですか。その時に【アイテムボックス拡張】のスキルについて耳にしたんですよ、わたし」
「なんだって!」
「勝手に入って来た『神託』でもあるんですけれどね」
なるほど、聖女の力か。
確かにフルクの情報なら確かだろう。
共和国か。再び行く事になろうとはな。
「決まりだ。共和国へ向かう」
この屋敷には温泉がある。
あの共和国の将軍で、建築家のモエニアの趣味らしく……異国の和というものを再現したものらしい。
「マ、マルガ……こっち見るなよ」
「主様、普通は逆です」
そんなツッコミを戴き、俺は先に入っていく。だめだ、緊張とかで頭が働かない。これから本当にマルガとお風呂に入っちゃうのかよ……。
木製の椅子に座って待っていると、ペタペタ足音がして――マルガの気配を感じた。
「そ、その本当に背中を流してくれるのかい」
「もちろんです。その為に浴場に来ているのですから……あら、主様ってば震えているのですか」
背中に抱きついてくるマルガさん。
素晴らしい感触が――ってぇッ!?
「うわぁ……! マルガ、約束が違う。背中を洗ってくれるんだろう!? なぜ抱きつく! すっごい感触だったけど、そうじゃない! ていうか、どうしちゃったのさ……キャラ変わりすぎじゃない!?」
「これが本来のわたくしなのです。こう見えて、わたくし支配するよりも……支配されたいドMなんです。勇者であるアウルム様になら、あんな事やこんな事されて、征服されも構いません」
「構えよッ!?」
なんか凄い事を口走っているよ、この人。……あぁ、ダメだ。マルガには敵いそうににない。
「主様、ヘンタイメイドはお嫌いですか?」
「……分かった分かった。降参だ。マルガには勝てそうにないわ。勇者である俺が敗北を知るとはな……でも、気持ちは嬉しいよ」
そう素直な気持ちを伝えると――
マルガは俺の背中を舐めてきた。
「うあぁぁッ!! なにをする!」
「お背中を綺麗にするんです」
「ここここ、このヘンタイメイドがッ!!」
「……ぁ。ありがとうございますッ。主様に罵られるとか……もうわたくし、幸せすぎて死んじゃいそうですぅ~!!」
がっつり抱きつかれ、俺は逃げられなくなってしまった……。普段は凛々しいマルガがこんなヘンタイだったとは……。
いや違う。
いろいろストレスが溜まっていたんだ。うん、きっとそうだ!! そう、だよな……?
◆
「――――ぁ、疲れた」
自室へ戻り、ベッドへダイブ。
クタクタの体を休めた。
風呂では大変だった。マルガに襲われ、俺は身も心も穢されて……いや、穢されてはないけれど、なんか微妙な大人の階段を上った気がする。
今後、ヘンタイメイドには気を付けよう(戒め)。
自然と瞼が重くなって、俺は眠った。
――翌日――
自室を出ると、フルクが待っていた。
「お、おはよう、フルク。待っていてくれたのか?」
「おはようございます。はい、昨晩はアイテムボックスについて考えていたら眠ってしまいまして……でも、その案が浮かんで――って、アウルムさん、寝不足です? 目に隈が出来ていますよ」
「あ、あぁ……昨日、ちょっとヘンタイメイドが――うわッ!!」
ちょっと視線を逸らすと、マルガがニヤッと笑ってこちらを見ていた。……おのれ、ヘンタイメイド。
「ど、どうかしました?」
「いや……何でもないよ。ちょっと悪夢をね。そう、悪夢を見たんだ……あはは……」
「そうなんですね。先に朝食にしましょうか」
「そうしよう。それからアイテムボックスについて話をしよう」
妙にニヤついているマルガとも合流を果たした。食堂へ歩き、俺は先にフルクをいかせ、マルガを引き留めた。
「……主様、二人きりにして……しかも、こんな壁にわたくしを押し付けるとか」
「黙れヘンタイ。そんないやらしい目で俺を見るなッ」
「あぁ、たまりませんッ」
だめだ、逆効果だ。
罵ればマルガはその分、喜ぶ。いや、悦ぶ。快楽と悦楽だ!! ――って、何を言っているんだ俺も。
「頼むからフルクといる時は普通にしてくれよ」
「分かっております。今はアイテムボックスの拡張が最優先課題ですから……」
「さりげなく抱きつこうとするな」
ひょいっと回避。
俺は食堂へ向かう。
「もぉ~、主様ってばつれないですね。そこがいいんですけどッ」
◆
テーブルにつき、俺は今後の話をした。
「単純に仲間を増やして荷物持ちをしてもらう手もあるが、それでも持ち運べる量に限界があると思う。だから、アイテムボックスの拡張も考えたい」
俺はそう提案すると、フルクが挙手した。
ほう、何かあるのかな。
「あの~、アイテムボックスって基本的にはスキルじゃないと増やせないんですよね」
「その通り。基本的に商人の持つ【アイテムボックス拡張】スキルでないと増やせない。でもそのスキルは、世界の冒険者が欲しがるからね。スキル取引市場では、3000万セルで取引されている代物らしい」
――と、メディケさんから情報を貰っていた。闇医者は、そういう取引情報にも詳しいらしい。
「それです!」
と、何か思い当たる節があるのだろうか、フルクは椅子から立ち上がる。
「それって?」
「実は、少し前に共和国へ行ったじゃないですか。その時に【アイテムボックス拡張】のスキルについて耳にしたんですよ、わたし」
「なんだって!」
「勝手に入って来た『神託』でもあるんですけれどね」
なるほど、聖女の力か。
確かにフルクの情報なら確かだろう。
共和国か。再び行く事になろうとはな。
「決まりだ。共和国へ向かう」
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