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第42話 白の聖女カルディア
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「この黒い扉は、わたしが開いたものです。この先に白の聖女『カルディア』が控えておりますので、手っ取り早く『AP』の解放を行いたいと思います」
さらっと言うものだから、俺は呆気にとられる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! この扉の向こうにいるのかよ。どうなっているんだ……?」
「メディオクリタース共和国と繋がっているんです。カルディアとは双子の姉妹ですから、このように繋がれるのです」
そうだったのかよ。なぜ帝国と共和国にそれぞれいるのか気になる所だが、今は聞かないでおこう。
黒い扉をそっと開けていく。
ギィっと古びた音がして――
少し不気味だなって思った。
「……おぉ」
扉の中は何故か花畑に繋がっていた。
どこだよ、ここ。
「驚きましたか?」
「そりゃ誰だって驚くよ。どういう魔法だ?」
「魔法ではありませんよ」
「あぁ、魂力ってワケか」
コクっと頷くアマデウスは、先へ進む。
その小さな背中を追って行く。
少し歩くと、白い靄の向こうから人影が現れた。あの子が……白の聖女『カルディア』か?
「話は理解している、アウルム・キルクルス」
「話が早いな。君が……カルディア様か」
予想通りというか、全身真っ白だった。
何もかもが白くて純白だ。
アマデウス様とは正反対の少女。
「そうだ。わたしがカルディア。そこのアマデウスの姉だ。勇者アウルム・キルクルス……わたしはお前を理解しているし、お前もわたしを理解しなければならない。この左目は過去を、右目は現在を――そして、この手には未来を」
手を翳して来る。
その掌には『眼』があった。
その眼が光り輝くと、俺は不思議なオーラに包まれた。なんだ……これ。変な感じだ。フワフワ浮くような感覚っていうか、自分が自分でない感じ。
「……勇者アウルム・キルクルス。お前の力を解放した。これより、その魂力は増幅された。無限ではないが、以前よりも器は広く、大きくなった。数値で言えば、今までが100とすれば、今は10000ある」
そりゃ凄いな。つまり、今の状態ならそれなりに聖槍を使用できる――ってわけだ。AP10000もありゃ、聖槍を100回は使えるだろうな。
「もっと使えるようになるには?」
「欲張りだな。強欲は身を滅ぼすぞと言いたいところだが、先程申した通り、お前もわたしを理解しなければならないのだ」
「どうすればいい」
カルディア様は背を向け、アマデウス様を指さす。
「フルクトゥアト……空蝉を理解すれば良い。それで、おのずと我らに理解が及ぼう。さぁて、時間でな。アマデウス、行くぞ」
「ええ、理解しています。でも、その前に――魂を還しましょう。娘をよろしくお願いしますね、アウルムさん」
と、アマデウスは行ってしまう。
「まてまて、聞きたい事が山ほどあるぞ! 君たちは一体何者なんだ!? フルクトゥアトは……何なんだ!」
『……』
……だめだ。
二人とも姿を消してしまった。
――それから俺は、花畑から強制退去させられ、城へ戻っていた。
「――うわッ!!」
地面に背中を打ちつけ、痛みが走る。
くそっ、もう少し優しく追い出してくれても。
でも、これで『AP』を高められた。
EXダンジョンの第二エリアの攻略も可能となったはずだ。……よし、フルクとマルガに合流して帰ろう。
さらっと言うものだから、俺は呆気にとられる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! この扉の向こうにいるのかよ。どうなっているんだ……?」
「メディオクリタース共和国と繋がっているんです。カルディアとは双子の姉妹ですから、このように繋がれるのです」
そうだったのかよ。なぜ帝国と共和国にそれぞれいるのか気になる所だが、今は聞かないでおこう。
黒い扉をそっと開けていく。
ギィっと古びた音がして――
少し不気味だなって思った。
「……おぉ」
扉の中は何故か花畑に繋がっていた。
どこだよ、ここ。
「驚きましたか?」
「そりゃ誰だって驚くよ。どういう魔法だ?」
「魔法ではありませんよ」
「あぁ、魂力ってワケか」
コクっと頷くアマデウスは、先へ進む。
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少し歩くと、白い靄の向こうから人影が現れた。あの子が……白の聖女『カルディア』か?
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「話が早いな。君が……カルディア様か」
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「そうだ。わたしがカルディア。そこのアマデウスの姉だ。勇者アウルム・キルクルス……わたしはお前を理解しているし、お前もわたしを理解しなければならない。この左目は過去を、右目は現在を――そして、この手には未来を」
手を翳して来る。
その掌には『眼』があった。
その眼が光り輝くと、俺は不思議なオーラに包まれた。なんだ……これ。変な感じだ。フワフワ浮くような感覚っていうか、自分が自分でない感じ。
「……勇者アウルム・キルクルス。お前の力を解放した。これより、その魂力は増幅された。無限ではないが、以前よりも器は広く、大きくなった。数値で言えば、今までが100とすれば、今は10000ある」
そりゃ凄いな。つまり、今の状態ならそれなりに聖槍を使用できる――ってわけだ。AP10000もありゃ、聖槍を100回は使えるだろうな。
「もっと使えるようになるには?」
「欲張りだな。強欲は身を滅ぼすぞと言いたいところだが、先程申した通り、お前もわたしを理解しなければならないのだ」
「どうすればいい」
カルディア様は背を向け、アマデウス様を指さす。
「フルクトゥアト……空蝉を理解すれば良い。それで、おのずと我らに理解が及ぼう。さぁて、時間でな。アマデウス、行くぞ」
「ええ、理解しています。でも、その前に――魂を還しましょう。娘をよろしくお願いしますね、アウルムさん」
と、アマデウスは行ってしまう。
「まてまて、聞きたい事が山ほどあるぞ! 君たちは一体何者なんだ!? フルクトゥアトは……何なんだ!」
『……』
……だめだ。
二人とも姿を消してしまった。
――それから俺は、花畑から強制退去させられ、城へ戻っていた。
「――うわッ!!」
地面に背中を打ちつけ、痛みが走る。
くそっ、もう少し優しく追い出してくれても。
でも、これで『AP』を高められた。
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