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第28話 建築スキル
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「おい、犬っころ。お前は一体何者なんだ、なぜ俺が本物の勇者だとか分かる」
『俺様は魔王軍の大幹部ザ・ビースト様だ。……なぜ分かるか、さあな。それより、こう話している間にも憐れな冒険者が肉塊になっていく。久しぶりの血肉の味は最高だぜぇ……』
大きな口を開いて一飲み。
その度に鮮血が飛び散る。
ひでぇ……。
「……アウルム」
「……た、たすけ……」
よく見ると、地面には下半身を失ったオリエンスとインゲルスの姿。コイツ等、あの冒険者の中に混じっていたのか……。
「――――」
助けるか悩んだその時、ザ・ビーストが鋭い爪を伸ばし、二人を串刺しにしてガブリと食い散らかした。
『不味い……! 女は多少マシだったが、男は反吐が出る程不味かった……。ほう、勇者よ、ようやくマシな表情になったな』
「お前……獣人にもなれるのか」
『そうさ、俺様は何にだって成れる。獣形態からの獣人。それ以上の形態にもな。本来、俺様に形など存在しない……魔王様より賜った『シャドーフォーム』のお陰で、この通り……自由自在、変幻自在なのだよ』
ビーストは、黒い影になり様々な形を俺に見せた。……シャドーフォーム、これは闇スキルの中でも最上位に入る禁呪系スキル。
「そうか、もういい。お前を倒す」
『俺様を倒すぅ!? 冒険者の多くを取り込んだ俺様の魔力は今や、そこらにいる魔法使いよりも上だ。勝てるわけが――』
これ以上犠牲者を増やさない為にも、俺は全力でいく!
『レベル投げえッッ――!!!』
『なんだその爆裂系の魔法! そんなモノ……なッ、馬鹿な!? うぉぉぉぉぉぉおああああああああああああッ!!!』
よし、なんとかヤツの体を吹っ飛ばしてやった。けれど、まだ倒し切ってはいない。くそ、火力不足だったか。
「あと一発ってところか!」
『……おのれ、よくも俺様の体を半分も吹き飛ばしたなァ! せかっく取り込んだ人間の力が零れ落ちていく……ならば、残り全てを喰ってやる!!』
向かって来るビースト。
なんて素早い動きだ。
「ここは私に任されよ、アウルム殿」
タンッと飛び跳ねてくるモエニアは、何かのスキルを使い、ビーストの動きを止めた。……なんだ? 沢山木々がいきなり『槍』となり、敵へ向かって行く。
『建築スキル:ゴッドハンド・クリエイション!!』
――そうか! 建築スキルか。
噂くらいは聞いた事があった。建築スキルは、建物はもちろん、あらゆる建造物や防衛設備が作れてしまう万能スキル。レアスキル故、なかなか滅多にお目に掛かれないのだが……なるほど、さすがモエニアか。
今回は建物ではなく、森にある木々を触媒に防衛設備の一部である武器を作ったのか。
木製の槍が次々にザ・ビーストへ。
戦況を見守っている間にも、フルクとマルガが俺の元へ。
「二人とも、こっちは危険だぞ! 小部屋で隠れているんだ!」
「アウルムさんを一人ぼっちできません。わたしも戦います。それに、わたしがいないと『運』が上がりません」
そうだな……フルクがいないと俺の運は尽きる。冷静になれ、俺。彼女が……フルクトゥアトが必要だ……。
「わたくしはお役に立てませんが……冒険者の避難誘導くらいなら出来ます」
「分かった。マルガ、お願いだ。生き残っている人たちを助けてやってくれ」
軽いお辞儀をして、マルガは倒れている人たちを救いに行った。これで少しは犠牲者も減るだろうか。
「……アウルムさん、あれは強敵です」
「ああ……そうだな。久しぶりにちょっとピンチだ」
「なら、わたしが支援します」
――と、フルクはスキルをいくつも発動した。
『グロリアスブレッシング、グロリアスアジリティ、グロリアスサクラメント、グロリアスピロソピア、グロリアスウェリタス……!』
多くの支援スキルを受けた俺の運は……『99』、つまりマックスになった。これなら勝てる!
『俺様は魔王軍の大幹部ザ・ビースト様だ。……なぜ分かるか、さあな。それより、こう話している間にも憐れな冒険者が肉塊になっていく。久しぶりの血肉の味は最高だぜぇ……』
大きな口を開いて一飲み。
その度に鮮血が飛び散る。
ひでぇ……。
「……アウルム」
「……た、たすけ……」
よく見ると、地面には下半身を失ったオリエンスとインゲルスの姿。コイツ等、あの冒険者の中に混じっていたのか……。
「――――」
助けるか悩んだその時、ザ・ビーストが鋭い爪を伸ばし、二人を串刺しにしてガブリと食い散らかした。
『不味い……! 女は多少マシだったが、男は反吐が出る程不味かった……。ほう、勇者よ、ようやくマシな表情になったな』
「お前……獣人にもなれるのか」
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向かって来るビースト。
なんて素早い動きだ。
「ここは私に任されよ、アウルム殿」
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今回は建物ではなく、森にある木々を触媒に防衛設備の一部である武器を作ったのか。
木製の槍が次々にザ・ビーストへ。
戦況を見守っている間にも、フルクとマルガが俺の元へ。
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「アウルムさんを一人ぼっちできません。わたしも戦います。それに、わたしがいないと『運』が上がりません」
そうだな……フルクがいないと俺の運は尽きる。冷静になれ、俺。彼女が……フルクトゥアトが必要だ……。
「わたくしはお役に立てませんが……冒険者の避難誘導くらいなら出来ます」
「分かった。マルガ、お願いだ。生き残っている人たちを助けてやってくれ」
軽いお辞儀をして、マルガは倒れている人たちを救いに行った。これで少しは犠牲者も減るだろうか。
「……アウルムさん、あれは強敵です」
「ああ……そうだな。久しぶりにちょっとピンチだ」
「なら、わたしが支援します」
――と、フルクはスキルをいくつも発動した。
『グロリアスブレッシング、グロリアスアジリティ、グロリアスサクラメント、グロリアスピロソピア、グロリアスウェリタス……!』
多くの支援スキルを受けた俺の運は……『99』、つまりマックスになった。これなら勝てる!
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