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男性貴族は全員味方
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「アリシャ! アラナから聞いたわ。夜の皇帝に選ばれたみたいね」
「まったく許せないですわ。こんな女が国中の男を独り占めするとか!」
「しかもイケメンばかり……。おかげでこっちには弱者男性しか残っていない……最悪よ」
わたしにそう言われても困る。
決めたのは皇帝陛下なのだから。
きっと、わたしが誰かと結婚するまでは終わらないイベントなのだとは思うけれど、そんな直ぐには決断できない。
だから、わたしはこう言った。
「文句なら陛下に」
そう突きつけると、女性貴族たちは表情を青くして固まった。
さすがに陛下にクレームを入れられるほど愚かではないということね。もし、そんなことをすれば、問答無用で打ち首だ。
紅茶を味わうと、ネスさんが立ち上がる。
「みなさん、そういうことです。アリシャさんに不満をぶつけても意味がない。彼女の言うとおり、これは陛下のお決めになったこと。反論は許されない」
ついに女性貴族たちは折れ、黙って去っていった。
けれど。
ひとりだけ残った。
「いまいましい……。あぁ、いまいましい!!」
テーブルを叩く、赤髪の女性はわたしをにらむ。
「なんですか?」
「いい、アリシャ……! あんたなんか簡単に潰せるんだからね。今に見てなさい、そのムカツクほど可愛い顔を台無しにしてあげるから」
耳元でぼそっと囁き、赤髪の女性は去っていく。
わたしはちょっと恐怖を覚えた。
身の危険さえ感じた。
「どうしたんだい、アリシャさん」
「さっきの赤髪の人、わたしに危害を加えるような発言を残して去っていきました。怖くて……」
「大丈夫。俺もだが、君にはたくさんの味方がいるからね。結婚が決まるまでは男性貴族は全員味方なんだよ」
あ……そっか。そういうことになるんだ。
そう思えばまだ気は楽になるかな。
ネスさんも頼れそうだし。
「ありがとうございます」
「礼を言われるほどではないよ。それより、ここは物騒だ。場所を変えよう」
「そうですね。落ち着ける場所がいいです」
「なら、俺の家に来るといい」
「いいんですか?」
「もちろん。さあ、手を」
「嬉しいです」
席を立ち、ネスさんの家へ。
歩いて向かおうとした時だった。
横から人影が現れ、なにかを投げてきた。
わたしの頭上になにか降って来る。
「危ない、アリシャさん!」
ネスさんがそれを振り払ってくれる。
よく見ればそれは酸の入ったポーションだった。……あ、さっきの赤髪の!
「ちっ……外したか」
「貴女、なんてことを!」
「さっき言ったでしょ。その顔を台無しにするって」
「酷いです! こんなこと!」
恐怖に震えていると、周囲から男性貴族が集まってきた。赤髪の女性を囲い、威圧をしていた。
「な、なによ! なんなの貴方たち!」
彼女は捕まり、連行されていく。
「タルラ、お前はアリシャさんに危害を加えようとした。この行為は断じて容認できない。お前を魔女と認定し、牢へぶち込む」
「な、な、なんですって……どうして! 私は魔女なんかではありません!」
「酸を作ることは禁じられている! それを人に浴びせる行為は大罪だ」
結局、タルラという女性は魔女認定されて捕まった。
「酸は極刑に値するからね」
と、ネスさんがつぶやく。
そうなんだ。
それに、もし浴びていたら……想像するだけで恐ろしい。
ともあれ、わたしは男性たちに助けられた。そうか、最初は嫌だなって思ったけど、男性は味方なんだ。それを痛いほどよく理解した。
「まったく許せないですわ。こんな女が国中の男を独り占めするとか!」
「しかもイケメンばかり……。おかげでこっちには弱者男性しか残っていない……最悪よ」
わたしにそう言われても困る。
決めたのは皇帝陛下なのだから。
きっと、わたしが誰かと結婚するまでは終わらないイベントなのだとは思うけれど、そんな直ぐには決断できない。
だから、わたしはこう言った。
「文句なら陛下に」
そう突きつけると、女性貴族たちは表情を青くして固まった。
さすがに陛下にクレームを入れられるほど愚かではないということね。もし、そんなことをすれば、問答無用で打ち首だ。
紅茶を味わうと、ネスさんが立ち上がる。
「みなさん、そういうことです。アリシャさんに不満をぶつけても意味がない。彼女の言うとおり、これは陛下のお決めになったこと。反論は許されない」
ついに女性貴族たちは折れ、黙って去っていった。
けれど。
ひとりだけ残った。
「いまいましい……。あぁ、いまいましい!!」
テーブルを叩く、赤髪の女性はわたしをにらむ。
「なんですか?」
「いい、アリシャ……! あんたなんか簡単に潰せるんだからね。今に見てなさい、そのムカツクほど可愛い顔を台無しにしてあげるから」
耳元でぼそっと囁き、赤髪の女性は去っていく。
わたしはちょっと恐怖を覚えた。
身の危険さえ感じた。
「どうしたんだい、アリシャさん」
「さっきの赤髪の人、わたしに危害を加えるような発言を残して去っていきました。怖くて……」
「大丈夫。俺もだが、君にはたくさんの味方がいるからね。結婚が決まるまでは男性貴族は全員味方なんだよ」
あ……そっか。そういうことになるんだ。
そう思えばまだ気は楽になるかな。
ネスさんも頼れそうだし。
「ありがとうございます」
「礼を言われるほどではないよ。それより、ここは物騒だ。場所を変えよう」
「そうですね。落ち着ける場所がいいです」
「なら、俺の家に来るといい」
「いいんですか?」
「もちろん。さあ、手を」
「嬉しいです」
席を立ち、ネスさんの家へ。
歩いて向かおうとした時だった。
横から人影が現れ、なにかを投げてきた。
わたしの頭上になにか降って来る。
「危ない、アリシャさん!」
ネスさんがそれを振り払ってくれる。
よく見ればそれは酸の入ったポーションだった。……あ、さっきの赤髪の!
「ちっ……外したか」
「貴女、なんてことを!」
「さっき言ったでしょ。その顔を台無しにするって」
「酷いです! こんなこと!」
恐怖に震えていると、周囲から男性貴族が集まってきた。赤髪の女性を囲い、威圧をしていた。
「な、なによ! なんなの貴方たち!」
彼女は捕まり、連行されていく。
「タルラ、お前はアリシャさんに危害を加えようとした。この行為は断じて容認できない。お前を魔女と認定し、牢へぶち込む」
「な、な、なんですって……どうして! 私は魔女なんかではありません!」
「酸を作ることは禁じられている! それを人に浴びせる行為は大罪だ」
結局、タルラという女性は魔女認定されて捕まった。
「酸は極刑に値するからね」
と、ネスさんがつぶやく。
そうなんだ。
それに、もし浴びていたら……想像するだけで恐ろしい。
ともあれ、わたしは男性たちに助けられた。そうか、最初は嫌だなって思ったけど、男性は味方なんだ。それを痛いほどよく理解した。
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