2 / 5
夜の皇帝の求婚イベント
しおりを挟む
助けてくれた男性貴族の名は『エリオット・ネス』と言った。
この世のものとは思えないほど綺麗で神秘的な金の髪を揺らし、エメラルドグリーンの瞳でこちらを見据える。
「この帝国に君臨する“夜の皇帝”がお決めになった」
「なによそれ! 聞いたことがないわ!」
「そうだろうね。一か月前、男性貴族のみが参加できるパーティで発表された内容だからね。以来、アリシャ・クラインを巡って求婚合戦さ」
夜の皇帝が勝手にわたしを賞品して、勝手にイベントを決めたってことなのね。だから、毎日のように男性が寄ってきていたんだ。ようやく謎が解けた。
でも、なんでわたしなの?
どうして選ばれたのがわたし?
「あの、ネスさん……」
「アリシャさん、聞きたいことは分かっている。なぜ、君なのかということだろう」
「はい、知りたいんです。わたしが選ばれた理由を教えてください」
「さっきも言った通り、君の美貌さ」
「わ、わたしの顔ということですか?」
「ああ。皇帝陛下は、君を絶世の美女と認めていたよ。そして、こうもおっしゃっていた。アリシャ・クラインと婚約を果たした者は、一生の富と権力、幸福を与えてくださると」
そ、そんな約束がされているんだ。知らなかった。だから、男性貴族は必死になってわたしと結婚したがっているんだ。
でも、やっぱり分からない。
そんな疑問を、アラナが怒りながらもネスに問い詰めていた。
「ちょっと! 聞いていれば、なんでアリシャだけが特別なの! こんな女と結婚してどうして一生が保証されるのよ! 陛下を侮辱するつもりはないけど、特別扱いしすぎよ!」
「アラナ、君は会ったことがないだろうが、陛下は“女性”なのだよ」
「えっ……ウソでしょ!?」
アラナが驚く。
わたしも知らなかったし、驚いた。
そういえば皇帝陛下の姿を見たことがなかった。お城に招待されるのは、いつも男性貴族だけだったから……。そうか、女性ゆえに男性貴族を集めてパーティを。
「女性である陛下がアリシャ・クラインを認めたのだ。文句は許されない」
「……くぅ」
さすがのアラナも、悔しそうに唇を噛むことしかできなかった。
「さあ、帰るんだ、アラナ」
「わ、分かったわよ。でもね、今に覚えていなさい、アリシャ!」
にらまれるわたし。
そんな恨みの募った目線を送られても困る。
結局、アラナは背を向けて去っていった。
……ほっ、助かった。
「ありがとうございました、ネスさん」
「いや、いいんだ。それよりも……」
わっ、なにか視線を感じる。
けれど、ネスさんならいいかな。助けてくれたし、それにカッコイイし。今まで求婚されてきた男性貴族の中では、一番まともに思えた。
だから、わたしの方から提案してみた。
「お、お茶でも……?」
「アリシャさんから誘ってくれるなんて嬉しいな。本当にいいのかい?」
「ええ。理由を知ったら、なんだか面白いって感じたので」
今まで理由が分からなくて怖い思いもしたけど、今は違う。皇帝陛下が決めたイベントと分かった以上は、わたしにも選ぶ権利がある。
良い人を見つけて、幸せな結婚生活を送るのもいいかもね。
この世のものとは思えないほど綺麗で神秘的な金の髪を揺らし、エメラルドグリーンの瞳でこちらを見据える。
「この帝国に君臨する“夜の皇帝”がお決めになった」
「なによそれ! 聞いたことがないわ!」
「そうだろうね。一か月前、男性貴族のみが参加できるパーティで発表された内容だからね。以来、アリシャ・クラインを巡って求婚合戦さ」
夜の皇帝が勝手にわたしを賞品して、勝手にイベントを決めたってことなのね。だから、毎日のように男性が寄ってきていたんだ。ようやく謎が解けた。
でも、なんでわたしなの?
どうして選ばれたのがわたし?
「あの、ネスさん……」
「アリシャさん、聞きたいことは分かっている。なぜ、君なのかということだろう」
「はい、知りたいんです。わたしが選ばれた理由を教えてください」
「さっきも言った通り、君の美貌さ」
「わ、わたしの顔ということですか?」
「ああ。皇帝陛下は、君を絶世の美女と認めていたよ。そして、こうもおっしゃっていた。アリシャ・クラインと婚約を果たした者は、一生の富と権力、幸福を与えてくださると」
そ、そんな約束がされているんだ。知らなかった。だから、男性貴族は必死になってわたしと結婚したがっているんだ。
でも、やっぱり分からない。
そんな疑問を、アラナが怒りながらもネスに問い詰めていた。
「ちょっと! 聞いていれば、なんでアリシャだけが特別なの! こんな女と結婚してどうして一生が保証されるのよ! 陛下を侮辱するつもりはないけど、特別扱いしすぎよ!」
「アラナ、君は会ったことがないだろうが、陛下は“女性”なのだよ」
「えっ……ウソでしょ!?」
アラナが驚く。
わたしも知らなかったし、驚いた。
そういえば皇帝陛下の姿を見たことがなかった。お城に招待されるのは、いつも男性貴族だけだったから……。そうか、女性ゆえに男性貴族を集めてパーティを。
「女性である陛下がアリシャ・クラインを認めたのだ。文句は許されない」
「……くぅ」
さすがのアラナも、悔しそうに唇を噛むことしかできなかった。
「さあ、帰るんだ、アラナ」
「わ、分かったわよ。でもね、今に覚えていなさい、アリシャ!」
にらまれるわたし。
そんな恨みの募った目線を送られても困る。
結局、アラナは背を向けて去っていった。
……ほっ、助かった。
「ありがとうございました、ネスさん」
「いや、いいんだ。それよりも……」
わっ、なにか視線を感じる。
けれど、ネスさんならいいかな。助けてくれたし、それにカッコイイし。今まで求婚されてきた男性貴族の中では、一番まともに思えた。
だから、わたしの方から提案してみた。
「お、お茶でも……?」
「アリシャさんから誘ってくれるなんて嬉しいな。本当にいいのかい?」
「ええ。理由を知ったら、なんだか面白いって感じたので」
今まで理由が分からなくて怖い思いもしたけど、今は違う。皇帝陛下が決めたイベントと分かった以上は、わたしにも選ぶ権利がある。
良い人を見つけて、幸せな結婚生活を送るのもいいかもね。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説

婚約者を親友に盗られた上、獣人の国へ嫁がされることになったが、私は大の動物好きなのでその結婚先はご褒美でしかなかった
雪葉
恋愛
婚約者である第三王子を、美しい外見の親友に盗られたエリン。まぁ王子のことは好きでも何でもなかったし、政略結婚でしかなかったのでそれは良いとして。なんと彼らはエリンに「新しい縁談」を持ってきたという。その嫁ぎ先は“獣人”の住まう国、ジュード帝国だった。
人間からは野蛮で恐ろしいと蔑まれる獣人の国であるため、王子と親友の二人はほくそ笑みながらこの縁談を彼女に持ってきたのだが────。
「憧れの国に行けることになったわ!! なんて素晴らしい縁談なのかしら……!!」
エリンは嫌がるどころか、大喜びしていた。
なぜなら、彼女は無類の動物好きだったからである。
そんなこんなで憧れの帝国へ意気揚々と嫁ぎに行き、そこで暮らす獣人たちと仲良くなろうと働きかけまくるエリン。
いつも明るく元気な彼女を見た周りの獣人達や、新しい婚約者である皇弟殿下は、次第に彼女に対し好意を持つようになっていく。
動物を心底愛するが故、獣人であろうが何だろうがこよなく愛の対象になるちょっとポンコツ入ってる令嬢と、そんな彼女を見て溺愛するようになる、狼の獣人な婚約者の皇弟殿下のお話です。
※他サイト様にも投稿しております。
美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ
青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人
世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。
デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女
小国は栄え、大国は滅びる。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
紀尾井坂ノスタルジック
涼寺みすゞ
恋愛
士農工商の身分制度は、御一新により変化した。
元公家出身の堂上華族、大名家の大名華族、勲功から身分を得た新華族。
明治25年4月、英国視察を終えた官の一行が帰国した。その中には1年前、初恋を成就させる為に宮家との縁談を断った子爵家の従五位、田中光留がいた。
日本に帰ったら1番に、あの方に逢いに行くと断言していた光留の耳に入ってきた噂は、恋い焦がれた尾井坂男爵家の晃子の婚約が整ったというものだった。

【完結】野蛮な辺境の令嬢ですので。
❄️冬は つとめて
恋愛
その日は国王主催の舞踏会で、アルテミスは兄のエスコートで会場入りをした。兄が離れたその隙に、とんでもない事が起こるとは彼女は思いもよらなかった。
それは、婚約破棄&女の戦い?

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
先生
藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。
町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。
ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。
だけど薫は恋愛初心者。
どうすればいいのかわからなくて……
※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)

婚約破棄されたので、契約不履行により、秘密を明かします
tartan321
恋愛
婚約はある種の口止めだった。
だが、その婚約が破棄されてしまった以上、効力はない。しかも、婚約者は、悪役令嬢のスーザンだったのだ。
「へへへ、全部話しちゃいますか!!!」
悪役令嬢っぷりを発揮します!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる