占い師令嬢は自分を占って勝ちルートを探ります

桜井正宗

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占いが当たった

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 第三皇子が……?
 自分の占いなのに一瞬信じられなかった。いえ、信じないと。
 でなければ希望なんてないのだから。
 今はワラにもすがる思い。

 でも、どこで出会えるのだろう?

 皆目見当もつかなかった。
 なら、彼とどこで出会うのか占う……!

 これが一番手っ取り早い。

 水晶を見つめながら、今度はタロットカードも使う。まずは、彼とどんな関係になるか調べてみる。


「こ、これは『月』のカード……」


 月。
 悩みだとか、優柔不断のような意味合いがある。それと三角関係…………うぅ。

 けど、もうひとつ気になるカードが。

 聖杯のキング。
 心の広い人との関係が深まるかもしれない。また、自分も誰かに慕われたりする可能性がある。
 けど、このカード……なぜか横の位置になってしまった。
 偶然にも風で舞ってしまった。
 逆位置だとすれば『嘘』という意味合いもある。
 え、なに嘘って……怖い。


 しばらくするとお客さんがお店に。
 儚い銀髪の若い男性だった。
 宝石のような深緑の瞳。
 優しい顔立ち。
 服装が明らかに高貴。間違いなく貴族ね。


「こんにちは。今いいかな」
「は、はい……」

「実は結婚のことで悩んでいて占って欲しいんだ」
「け、結婚ですか。今流行りの水晶占いでよろしければ」
「それでいい」
「では、お座りください」
「分かった」


 彼は椅子に座って、水晶を見つめた。
 わたしはまず、彼の名前を聞いた。


「お名前を教えてください」
「フェリックス・ヴェルナー。身分は第三皇子……できれば、このことは内密に」

「え……」

「驚かせて済まない。でも、こっそり占いをしたかったんだ」

「だ、だ、第三皇子さま!」


 いきなり現れ、わたしは驚いたと同時に席を立った。
 うそー…なんで……!

 これから、彼の居場所をを占おうとしたのに、まさか向こうからやって来るなんて予想外。占うまでもなかった。


「どうしたんだい?」
「いえ、その……続けます。そのご結婚とは、もうしているのですか?」
「いや、まだだ。可能性が高まっているんだ」
「可能性が?」

「父が……陛下がゾフィアとのお見合いを提案してきてね。ああ、ちなみにゾフィアとは伯爵家のご令嬢でね。美人だとは聞いている。だが、この先どうなってしまうのかと不安で……」

 そうフェリックスは困惑していた。
 そうなんだ。
 これからお見合いをさせられるかもしれないんだ。

 む。それを聞くと水晶占いの結果に矛盾が。いえ、でもタロット占いでは“三角関係”も示唆されていた。……そういうことなの?

 運命を変えなきゃ。

 自分自身の手で!


「そ、その……さっそく占った結果が出ました」
「早いな」

「運命の方の身分は“辺境伯令嬢”の方がいいでしょう」
「なんだか具体的だね」

「そ、そういう占いですから」
「ふむ……」

「ちなみに名前も出ています」
「ほう?」
「ラウラ・エルツェンブルクという女性です……」

「どこかで聞き覚えのあるような、ないような。――って、それキミじゃないよね」

「ぎくっ」

「図星かい。そうか、でも占いはそう出ているんだね?」
「そ、そうです」


 少なくとも嘘ではない。
 水晶には、わたしと彼が楽しく話す姿が映し出されていた。だから、間違いではない……はず。


「……ああ、そうか。最近、占いで評判のラウラとは、君のことだったのか」
「はい。申し訳ございません……」
「謝る必要はない。だが、自分のことをもっと知りたくなった。これからも占いを頼めるかな」

「も、もちろんです! 大歓迎です」
「それはよかった。もちろん、お金も払うよ」


 立ち上がるフェリックス。本当に代金を払ってくれた。こ、こんなに……。すごい大金。

「いいのですか?」
「いいとも。今日は面白い話ができたからね」


 笑顔で満足そうにお店を出ていくフェリックス。もしかして、占い……当たったかも。
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