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黄金の聖女
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急いで元老院の中を駆けていく。
かなり奥の方で倒れているモラヴィアニを発見。俺は即座に無人島開発スキルで『鎖』を生成して巻き付けた。
「確保ッ!」
「………………ぐっ」
これでもう逃げることは不可能だ。
今の内に新約・世界聖書を回収。
コイツのジャッジメントの威力には驚いた。さすが世界聖書なだけある。だが、悪事もここまでだ。
「モラヴィアニ、お前を裁く」
「こ……これで……解決したと……思わないで……」
辛うじて意識があるようで、モラヴィアニは口だけを動かしていた。
「解決したさ」
「いいえ……まだ、まだ終わりませ…………ん」
がくっと脱力して気絶したようだ。
まだ終わらない?
いいや、これ以上はないさ。
なぜなら、新約・世界聖書は回収済みだからだ。もうなにも起こらない。
その後、スケルツォが駆けつけてモラヴィアニを連行。これでクラウスとディミトリーも含めて三人の議員が逮捕される事態となった。
このままでは元老院は存続の危機に陥るかもしれないな。
三日後。
元老院は、俺の無人島開発スキルで建て直した。元通りに修理されたので、再び使えるようになった。
しかし、残念ながら元老院議長テレジア、ゲルンスハイム帝領伯、上級監督官のシベリウスしか残っていない。
元老院は最低でも七人は必要だ。
仕方ないので、新約・世界聖書で法律を書き換え、テレジアの了承も得た。そして賛成多数で可決。
今のところ元老院は維持されることとなった。
だが、あまりに不祥事が多すぎた。
民から不安が向けられつつあり、肩身が狭いようだ。
そんな状況を打開すべく、俺は建物の修理や開発に集中。これが大好評を得た。俺の支持は一気にアップ。
「ラスティ様、みなさん大変よろこんでおります」
普段よりも一段階滑らかな口調でスケルツォは報告を上げてくれた。
「そりゃよかった。これで元老院の事件は少しだけ薄れたかな」
「はい。今のところ平穏無事でございます」
ひとまずは平和か。
ルドミラは早くも回復。
シベリウスの傷もかなり良くなったと聞く。みんな元に戻りつつあった。
裁判もはじまり、モラヴィアニ、クラウス、ディミトリーは順次に裁かれることに。
報告以上、終わり。
と、スケルツォは丁寧にお辞儀をして去っていく。
入れ替わるようにしてスコルとストレルカが現れた。
「ラスティさん」
「スコルさんと共に参りました」
二人とも元気そうに微笑み、俺の元へ。
「丁度いい。二人とも付き合ってくれよ」
そう誘うと何故か二人とも顔を赤くしていた。他意はなかったんだがな……?
「ぜ、ぜひ!」
「わたくしも!」
みんなでナハトの様子を見に行きたかった。
彼はあれから自分の家へ戻って療養しているようだった。それに、魔剣ヘルシャフトを借りたままだ。
借りたものは、きちんと返さないと。
あともうひとつ。
彼が言っていた『アイファ』という人のことも気になる。
もし力になってあげられるのなら見つけてやりたい。いや、既にレオポルド騎士団などに協力を仰いでいた。
スコルとストレルカを連れ、スターバトマーテル城を後にする。城を出る際にシベリウスが「護衛をつけろ!」と叫んでいたが、俺は魔剣があるからと言って追い返した。
今回の議員事件がってから、シベリウスは俺に護衛をつけたがるようになった。それよりも、自分の心配しろと言ってやりたいが。
のどかな街中を歩き、塔を目指す。
やがてナハトの居住区が見えてきた。
「スコル様。ナハトという男性はいったい……」
「ああ、ストレルカさんはご存じなかったですよね。彼は――」
スコルは必死に説明していた。なんだか微笑ましいな。
そうしている内に塔に到着。
あの中にナハトがいるはず。
と、思ったら……『コン』と音がして、裏の方で作業をしているナハトの姿があった。片手斧で薪割りとはな。
「…………ラスティ」
「久しぶりだな、ナハト」
俺の方へ向かってくるナハトは、相変わらず表情を硬くしていた。
てっきり目の前で止まるかと思いきや、スコルの方へ向かい手を握っていた。うぉい!
「ありがとう、スコル様。貴女のおかげで俺は救われた」
「え!? えっと……いえ、わたしは何も。お礼ならラスティさんに」
「治療してくれたのは貴女だから」
おいおい、いつまでスコルの手を握ってやがる。魔剣ヘルシャフトで叩ききるぞ……!?
「いえいえ、当然のことですから」
「スコル様は、俺のアイファにそっくりだ」
「大切な人なんですね」
「ああ。だから……ラスティ、捜したんだろうな?」
今度は俺に鋭い視線を向けてくる。どうして敵対的かな。でも、コイツから魔剣を借りなければ今回の事件は解決できなかったからな。
「もちろんだ。この三日でレオポルド騎士団を総動員して捜したさ。でも手がかりはなかった」
「……ラスティ、お前!」
「話は最後まで聞けって。手がかりがゼロってわけじゃない」
「本当か!」
事件後、俺はスケルツォに相談してずっとアイファという少女を追っていた。だが、まったくといって情報はなかった。
モラヴィアニたちに聞いてみたが、知らぬ存ぜぬ。
そんなワケがないと疑ったが口を割る気配もなかった。
そんな時だった。
テレジアが一月前にモラヴィアニの怪しい行動を見たという。
その時の状況によれば――。
アレグロ枢機卿が『新約・世界聖書』を持ち歩き、モラヴィアニと密談をしていたという。
その会話をほんの一部だけ耳にしたらしい。
内容の一部に『黄金の聖女アイファ』という名が挙げられていたという――。
かなり奥の方で倒れているモラヴィアニを発見。俺は即座に無人島開発スキルで『鎖』を生成して巻き付けた。
「確保ッ!」
「………………ぐっ」
これでもう逃げることは不可能だ。
今の内に新約・世界聖書を回収。
コイツのジャッジメントの威力には驚いた。さすが世界聖書なだけある。だが、悪事もここまでだ。
「モラヴィアニ、お前を裁く」
「こ……これで……解決したと……思わないで……」
辛うじて意識があるようで、モラヴィアニは口だけを動かしていた。
「解決したさ」
「いいえ……まだ、まだ終わりませ…………ん」
がくっと脱力して気絶したようだ。
まだ終わらない?
いいや、これ以上はないさ。
なぜなら、新約・世界聖書は回収済みだからだ。もうなにも起こらない。
その後、スケルツォが駆けつけてモラヴィアニを連行。これでクラウスとディミトリーも含めて三人の議員が逮捕される事態となった。
このままでは元老院は存続の危機に陥るかもしれないな。
三日後。
元老院は、俺の無人島開発スキルで建て直した。元通りに修理されたので、再び使えるようになった。
しかし、残念ながら元老院議長テレジア、ゲルンスハイム帝領伯、上級監督官のシベリウスしか残っていない。
元老院は最低でも七人は必要だ。
仕方ないので、新約・世界聖書で法律を書き換え、テレジアの了承も得た。そして賛成多数で可決。
今のところ元老院は維持されることとなった。
だが、あまりに不祥事が多すぎた。
民から不安が向けられつつあり、肩身が狭いようだ。
そんな状況を打開すべく、俺は建物の修理や開発に集中。これが大好評を得た。俺の支持は一気にアップ。
「ラスティ様、みなさん大変よろこんでおります」
普段よりも一段階滑らかな口調でスケルツォは報告を上げてくれた。
「そりゃよかった。これで元老院の事件は少しだけ薄れたかな」
「はい。今のところ平穏無事でございます」
ひとまずは平和か。
ルドミラは早くも回復。
シベリウスの傷もかなり良くなったと聞く。みんな元に戻りつつあった。
裁判もはじまり、モラヴィアニ、クラウス、ディミトリーは順次に裁かれることに。
報告以上、終わり。
と、スケルツォは丁寧にお辞儀をして去っていく。
入れ替わるようにしてスコルとストレルカが現れた。
「ラスティさん」
「スコルさんと共に参りました」
二人とも元気そうに微笑み、俺の元へ。
「丁度いい。二人とも付き合ってくれよ」
そう誘うと何故か二人とも顔を赤くしていた。他意はなかったんだがな……?
「ぜ、ぜひ!」
「わたくしも!」
みんなでナハトの様子を見に行きたかった。
彼はあれから自分の家へ戻って療養しているようだった。それに、魔剣ヘルシャフトを借りたままだ。
借りたものは、きちんと返さないと。
あともうひとつ。
彼が言っていた『アイファ』という人のことも気になる。
もし力になってあげられるのなら見つけてやりたい。いや、既にレオポルド騎士団などに協力を仰いでいた。
スコルとストレルカを連れ、スターバトマーテル城を後にする。城を出る際にシベリウスが「護衛をつけろ!」と叫んでいたが、俺は魔剣があるからと言って追い返した。
今回の議員事件がってから、シベリウスは俺に護衛をつけたがるようになった。それよりも、自分の心配しろと言ってやりたいが。
のどかな街中を歩き、塔を目指す。
やがてナハトの居住区が見えてきた。
「スコル様。ナハトという男性はいったい……」
「ああ、ストレルカさんはご存じなかったですよね。彼は――」
スコルは必死に説明していた。なんだか微笑ましいな。
そうしている内に塔に到着。
あの中にナハトがいるはず。
と、思ったら……『コン』と音がして、裏の方で作業をしているナハトの姿があった。片手斧で薪割りとはな。
「…………ラスティ」
「久しぶりだな、ナハト」
俺の方へ向かってくるナハトは、相変わらず表情を硬くしていた。
てっきり目の前で止まるかと思いきや、スコルの方へ向かい手を握っていた。うぉい!
「ありがとう、スコル様。貴女のおかげで俺は救われた」
「え!? えっと……いえ、わたしは何も。お礼ならラスティさんに」
「治療してくれたのは貴女だから」
おいおい、いつまでスコルの手を握ってやがる。魔剣ヘルシャフトで叩ききるぞ……!?
「いえいえ、当然のことですから」
「スコル様は、俺のアイファにそっくりだ」
「大切な人なんですね」
「ああ。だから……ラスティ、捜したんだろうな?」
今度は俺に鋭い視線を向けてくる。どうして敵対的かな。でも、コイツから魔剣を借りなければ今回の事件は解決できなかったからな。
「もちろんだ。この三日でレオポルド騎士団を総動員して捜したさ。でも手がかりはなかった」
「……ラスティ、お前!」
「話は最後まで聞けって。手がかりがゼロってわけじゃない」
「本当か!」
事件後、俺はスケルツォに相談してずっとアイファという少女を追っていた。だが、まったくといって情報はなかった。
モラヴィアニたちに聞いてみたが、知らぬ存ぜぬ。
そんなワケがないと疑ったが口を割る気配もなかった。
そんな時だった。
テレジアが一月前にモラヴィアニの怪しい行動を見たという。
その時の状況によれば――。
アレグロ枢機卿が『新約・世界聖書』を持ち歩き、モラヴィアニと密談をしていたという。
その会話をほんの一部だけ耳にしたらしい。
内容の一部に『黄金の聖女アイファ』という名が挙げられていたという――。
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