無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗

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鏡文字のエルフ語

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 ストレルカの船に乗り込み、周辺の島を渡り歩く。
 しかし、どこもかしこも『無人島』で何もない。ジャングルのように草木が生え、多少モンスターが徘徊はいかいしているだけ。

 クラウスたちはどこへ行った……?

 エドゥに魔力探知をしてもらうものの、引っ掛からない。もしかしたら、魔力をゼロにしている可能性があるという。

 だからこそ『召喚呪符』のようなアイテムを使ったのだろうな。


「……ダメです、ラスティ様。彼らの魔力を追えません」

 珍しく残念そうな表情を落とすエドゥ。無念とまで口走り、相当くやしさをにじませていた。本当に珍しいな。普段のエドゥは、表情をあまり表に出さないからな。

 だが、それでも諦めるつもりはない。

 なにか良い方法がないかと船の中で考える。


「むぅ~」
「もう五つほどの島を回りましたが、クラウス議員は見当たりませんね」


 船を操りながらもストレルカは次の島を目指す。器用だなぁと思いつつも、俺はうなずいた。

「そうだな。逃げ隠れされていると思うと腹立たしいよ」
「島国ラルゴは被害を受けましたし、なんとしてでも報いを受けて欲しいですね」

 その通りだ。直ぐに見つけ出さねば、もっと被害が出るかもしれない。
 島国ラルゴだけではない――ドヴォルザーク帝国や他の国も狙われるだろう。そうはさせない。

 なにか良い方法はないものかと思案を続けていると、スコルが俺の服のそでを引っ張った。


「どうした?」
「あ、あのぅ。わたしの『世界聖書ウルガタ』では何とかならないでしょうか……?」

世界聖書ウルガタか。そういえば、特殊なスキルがいくつも使えたよね。人を探す魔法とかあるのかな?」

「ちょっと探してみますね」
「頼む」

 世界聖書を開くスコルは、真剣な眼差しでページをめくっていく。
 すると、あるスキルが目についたらしい。


「これなんてどうですか?」


 それは世界聖書ウルガタのかなり最初のページに記載されているスキルだった。


[アカシックレコード Lv.10]
[効果]
 歴史を保存したり読み取る力。
 世界聖書の基本的スキル。
 このページがなければ世界聖書は使用できない。


「ん~、これは微妙かな」
「そうですかぁ……」

 しょぼんと落ち込むスコル。いかん、こんな顔されるとは思わなかった。

「そ、そういえば解読できていないページがあったよな?」
「あ、はい。分厚いので全部読み切れていないんです」
「そうだったか。じゃあ、新しいスキルが出てくるかもな」
「一緒に読んでいただけませんか?」

 もちろんだ。スコルの世界聖書ウルガタが読み解ければ、新しいスキルでヤツ等を探せるかもしれない。少しの可能性でもいい、賭けてみたい。

 船の甲板デッキの上で世界聖書ウルガタを広げ、スコルと共にページをめくっていく。とはいえ、書かれている文字は『エルフ語』なので、俺は読めないが。
 ドヴォルザーク帝国に伝わる“古代ルーン文字”のようだが、似て非なるものだ。エルフ語は、更に遥か太古の……まるで最古の古代文字。

 ああ――でもそうか。エルフは長寿ちょうじゅだからな。

 必然と文字が古いのかもしれない。

「どうだ?」
「う~ん……。この辺りは、わたしでも読むのが難しい古い文字ですから」

 困惑するスコル。先のページほど古代文字なのか。普通逆な気がするが……む。

「なんか後半から文字が“逆”になっていないか?」
「は、はい。これは鏡文字かがみもじですね」

「嘘だろ。ただでさえ難解なエルフ語を鏡文字って……ヤバすぎだろう」
「これは読むのが大変ですぅ」

 涙目になって訴えかけてくるスコルは、少々ギブアップ気味だった。なんでこんな文字を使っているんだか……!


「聞いたことがあるのだ」


 にゅるっと現れるハヴァマールに、俺とスコルは驚いた。どこから沸いて出てきた!?

「なにを?」
「ある偉人が秘密を読み解かれぬよう、あえて鏡文字を使ったという逸話いつわを」

「そうなのか」

「うむ。まさか世界聖書に記されているとは思わなんだ。これは余も手伝うしかなさそうだな」
「マジで!」
「任せるのだ、これでもエルフ語は読める!」


 し、知らなかった。ハヴァマールがエルフ語を読めたとはな。人員は多い方がいい、新たなスキルを獲得するため、そして、クラウスを探す為にも世界聖書ウルガタを解読するしかない――!
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