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魔導部隊隊長の男

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 クラウスは不敵ふてきに笑いつつも、こちらに手のひらを向ける。いつでも戦闘ができるぞっという意思表示だろう。コイツ、やる気満々だな。

「で、その計画ってなんだよ」
「まずは“我が国”を建国する」
「なに……?」

 小さな島から少しずつ勢力を広げていくつもりらしい。
 気に入った女性のみを集めてハーレム帝国を作るとかなんとか言い出して、俺もみんなも引いた。

「というわけでね。ドヴォルザーク帝国には愛想あいそが尽きたのだよ」
「そうかよ。なら、もう戻ってくるな」

 そう言い返すとクラウスは笑った。

「はは! ドヴォルザーク帝国はいずれ支配するさ」
「やっぱり……!」

「だが、まずは国を作り上げて優秀な子孫を残さねばならん」

 それで婚約ゲームだとか、ワケのわからんことをやっていたのか。ヨハンナさんやカルデラさんの気持ちをもてあそんで……最低な男だ。

「そうか。そんなことで枢機卿を殺め、シベリウスを傷つけたわけか!」

「そう思うのなら勝手にそう思えばいい。それよりも、この島に用はなくなった。お前たちに居場所をバレてしまったからな」


 少しずつ距離を取るクラウス。コイツ、逃げる気か!
 そうはさせないと、俺はゲイルチュールを投げつけた。
 クルクルと舞う俺の武器は、クラウスに激突しそうになったものの――防御魔法によってはばまれた。

 これは……!


「大変なのだ、兄上! あの防御魔法は、かなり高位のもの。簡単にはやぶれないのだ!」

 あわてるハヴァマールは、そのように解説してくれた。高位の防御魔法だと……? いや、だけど事実俺のゲイルチュールの攻撃をふせいでいた。
 通常の防御魔法でガードするのは不可能だ。
 つまり、あれは相当な防御力ということだ。

 更に攻撃を加えようとしたが、クラウスの前に男が現れた。あれはまさか。


「危なかったですねえ、クラウス議員」
「君の防御魔法のおかげで助かったよ、ディミトリ―」


 そうか、あの高位の防御魔法はディミトリーのスキルだったのか。あの男は防御に特化しているのかもしれない。


「ど、どうします?」

 背後から声を掛けてくるスコル。もちろん、逃がすワケにはいかない。みんなの力を借り、クラウスだけでも捕縛ほばくする。


「みんな! あのクラウスだけでも止めるんだ」


 おおう、と賛同さんどうしてくれるみんな。
 よし、このままヤツを捕らえてやる。
 しかし、ディミトリ―が声高らかに笑った。

「ハハハ! 止めるですって? 陛下ァ、私はねぇ……議員になる前は、前皇帝陛下直下の魔導部隊隊長をつとめていたんですよねぇ。陛下の盾になる為の防御専門でしたが……要人を逃がす為の転移魔法も研究済み。つまりですな――」


 指を鳴らすディミトリ―は、一瞬でテレポートを開始した。……くそう、転移系スキルも使えたのかよ。しかも。


「エドゥ、追跡は!?」
「……不可能です。ディミトリー議員は、自分と同じ『グロリアステレポート』を使っていましたので」


 よりによって大賢者のスキルかよ。
 取り逃がしてしまったか。


「大変なことになりましたね……」


 ぽつりとつぶやくストレルカは、燃え盛る小屋を水属性魔法を使い消化していた。おかげで大きな火災にならずに済んだ。


「ああ……。あの二人はどこかで国を作り、島国ラルゴやドヴォルザーク帝国に攻めてくるつもりだ」


 一刻いっこくも早く追わねばならんな。そう思っているとハヴァマールが落ち着きのない雰囲気で言葉を振りしぼった。


「だが、兄上。奴らの居場所は分からんのだ。どうするのだ?」
「一度、島国ラルゴの様子を見に行く。エドゥ、座標ざひょうあるだろ?」


 コクリと静かにうなずくエドゥ。俺たちは再びエドゥの肩に触れた。よし、久しぶりに帰郷ききょうするぞ。俺たちの国へ……!
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