393 / 478
巻き込まれた伯爵令嬢
しおりを挟む
ヤツの思い通りになんてさせない。皇帝であるこの俺が許さん。
ひとまず、ゲルンスハイム帝領伯にも城で泊まってもらうことにした。その方が安全だろう。そう提案するとストレルカの父である帝領伯も納得して宿泊を希望した。
ストレルカ自身も何度もお礼を言ってきた。
これでヨシと。
一度散会となり、みんな各々の部屋へ向かった。
ようやく少しだけゆっくりできるかなと思った矢先だった。慌ただしく駆け寄ってくるシベリウスの姿があった。なんか顔が青ざめてないか……?
「ちょうどいい、ラスティ!」
「どうした? まるでカビの生えた餅でも食った顔してるぞ」
「なわけあるか! ――って、ツッコんでいる場合ではないな。大変だ」
「だから何が?」
「クラウスから被害を受けたという女性が謁見を求めている」
さすがの俺も時間が少しだけ停止した。……クラウスから被害を受けた、だと? まさかヨハンナさんじゃなかろうな。
とにもかくにも、一度会うことにしてみた。今はクラウスのやらかした情報が少しでも欲しい。なんでもいいから情報収集だ。
スターバトマーテル城の城内にある大広間。上級監督官であるシベリウスがそこに被害を受けたという女性を招いた。俺はその女性を見て驚いた。
ヨハンナさんではなかったが、細くて美しい女神のような女性がいた。
「貴女は?」
「はじめまして、陛下。わたくし、カルデラと申します」
彼女が名乗った直後、シベリウスが詳しく教えてくれた。
「カルデラは、ある伯爵のご令嬢でね。あのクラウスと婚約を交わしているようだ」
「マジか」
「しかし、クラウスは“ゲーム”と称し、複数の女性と関係をもっている」
完全に遊んでやがると、シベリウスは不快そうに言った。
そうだな、聞く限りは真剣な恋愛だとか婚約とだとか思えなかった。ヨハンナさんも、なんだか可哀想だったし。
「それで……クラウスになにをされた?」
俺が聞くとカルデラさんは悲しい顔を浮かべながらも、その衝撃的な内容を話した。
「あの人は、わたくしだけには計画を話しました。これから無人島に自分の王国を作ると……。だから、多くの女性を紹介しろとおっしゃっていました。それが婚約の条件だとも」
「なんだって……?」
無人島を占領するとか何とか言っていたらしいが、まさか王国を作ってハーレムでも築き上げる気か?
だから、曖昧にゲームなどとを称しているのか。適当にそんな風に争わせ、実は無人島へ連れていく為の時間稼ぎか。
五人、十人と女性貴族を集めて移住させる――そんなところだろうな。
「このままでは危険だぞ、ラスティ」
深刻な表情でシベリウスは警告してきた。今日にでもクラウスをとっ捕まえて帝国に対する反逆行為で尋問にかけるべきだと判断した。
「分かったよ、シベリウス。クラウスを連行するんだ」
「了解」
さっそく向かってくれた。シベリウスも元騎士なので行動が早くて助かる。本来のアイツは“門番”だったが、今では上級監督官。その仕事を従順にこなしてくれていた。きっと今回もスムーズに進めてくれるはず。
「それでカルデラさん」
「はい……」
「帰るのなら護衛をつけるけど」
「わたくし、彼が怖くて……」
どうやら、恐ろしい計画を知ってカルデラさんは怯えているようだった。ならば、保護してやるしかない。
ルドミラを呼び、カルデラさんに部屋を貸し与えた。
あとの対応は任せよう。
さて、俺はクラウスが来るのを待つ。
ヤツの計画をここで潰さねば。
ひとまず、ゲルンスハイム帝領伯にも城で泊まってもらうことにした。その方が安全だろう。そう提案するとストレルカの父である帝領伯も納得して宿泊を希望した。
ストレルカ自身も何度もお礼を言ってきた。
これでヨシと。
一度散会となり、みんな各々の部屋へ向かった。
ようやく少しだけゆっくりできるかなと思った矢先だった。慌ただしく駆け寄ってくるシベリウスの姿があった。なんか顔が青ざめてないか……?
「ちょうどいい、ラスティ!」
「どうした? まるでカビの生えた餅でも食った顔してるぞ」
「なわけあるか! ――って、ツッコんでいる場合ではないな。大変だ」
「だから何が?」
「クラウスから被害を受けたという女性が謁見を求めている」
さすがの俺も時間が少しだけ停止した。……クラウスから被害を受けた、だと? まさかヨハンナさんじゃなかろうな。
とにもかくにも、一度会うことにしてみた。今はクラウスのやらかした情報が少しでも欲しい。なんでもいいから情報収集だ。
スターバトマーテル城の城内にある大広間。上級監督官であるシベリウスがそこに被害を受けたという女性を招いた。俺はその女性を見て驚いた。
ヨハンナさんではなかったが、細くて美しい女神のような女性がいた。
「貴女は?」
「はじめまして、陛下。わたくし、カルデラと申します」
彼女が名乗った直後、シベリウスが詳しく教えてくれた。
「カルデラは、ある伯爵のご令嬢でね。あのクラウスと婚約を交わしているようだ」
「マジか」
「しかし、クラウスは“ゲーム”と称し、複数の女性と関係をもっている」
完全に遊んでやがると、シベリウスは不快そうに言った。
そうだな、聞く限りは真剣な恋愛だとか婚約とだとか思えなかった。ヨハンナさんも、なんだか可哀想だったし。
「それで……クラウスになにをされた?」
俺が聞くとカルデラさんは悲しい顔を浮かべながらも、その衝撃的な内容を話した。
「あの人は、わたくしだけには計画を話しました。これから無人島に自分の王国を作ると……。だから、多くの女性を紹介しろとおっしゃっていました。それが婚約の条件だとも」
「なんだって……?」
無人島を占領するとか何とか言っていたらしいが、まさか王国を作ってハーレムでも築き上げる気か?
だから、曖昧にゲームなどとを称しているのか。適当にそんな風に争わせ、実は無人島へ連れていく為の時間稼ぎか。
五人、十人と女性貴族を集めて移住させる――そんなところだろうな。
「このままでは危険だぞ、ラスティ」
深刻な表情でシベリウスは警告してきた。今日にでもクラウスをとっ捕まえて帝国に対する反逆行為で尋問にかけるべきだと判断した。
「分かったよ、シベリウス。クラウスを連行するんだ」
「了解」
さっそく向かってくれた。シベリウスも元騎士なので行動が早くて助かる。本来のアイツは“門番”だったが、今では上級監督官。その仕事を従順にこなしてくれていた。きっと今回もスムーズに進めてくれるはず。
「それでカルデラさん」
「はい……」
「帰るのなら護衛をつけるけど」
「わたくし、彼が怖くて……」
どうやら、恐ろしい計画を知ってカルデラさんは怯えているようだった。ならば、保護してやるしかない。
ルドミラを呼び、カルデラさんに部屋を貸し与えた。
あとの対応は任せよう。
さて、俺はクラウスが来るのを待つ。
ヤツの計画をここで潰さねば。
1
お気に入りに追加
557
あなたにおすすめの小説

姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】
小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。
しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。
そして、リーリエルは戻って来た。
政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

剣しか取り柄がないという事で追放された元冒険者、辺境の村で魔物を討伐すると弟子志願者が続々訪れ剣技道場を開く
burazu
ファンタジー
剣の得意冒険者リッキーはある日剣技だけが取り柄しかないという理由でパーティーから追放される。その後誰も自分を知らない村へと移住し、気ままな生活をするつもりが村を襲う魔物を倒した事で弓の得意エルフ、槍の得意元傭兵、魔法の得意踊り子、投擲の得意演奏者と様々な者たちが押しかけ弟子入りを志願する。
そんな彼らに剣技の修行をつけながらも冒険者時代にはない充実感を得ていくリッキーだったのだ。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】
小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。
魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。
『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる