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とんでもない事件が起きた
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時間が経ち、夜になった。
城内は活気に満ちており、さっそく俺に謁見を求める声が多くあった。それも百人規模で。そんなに会っていられないぞ。
だが、俺はそこで少しだけ『皇帝』になった実感を得た。
てか、噂が広まるの早いなぁ。
世界ギルドで決まった途端、あっという間に噂が伝番したのかな。
今日はさすがに誰かと会う気力はなかった。
しかし。
「陛下、どうしても会いたいという方が」
部屋へ戻ろうとするとスケルツォが俺を呼び止めた。
「悪いんだが今日は……」
「ですが、事は重大です」
スケルツォがそこまで言うとはな。一人くらいならいいか。
「分かった。その人だけ会おう」
「ありがとうございます」
そのどうしても俺に会いたいという人物は、すでに玉座にいるようだった。
向かうとそこには怪しげな人がいた。性別は……分からない。てか、あの見え隠れする“包帯”はなんだ。
まるでミイラのようにグルグル巻きにしているではないか。どういうファッションなんだ、ありゃ。
「あの人か、スケルツォ」
「はい。彼女はワケあってあのような姿をしております」
なんだか深い事情がありそうな予感だな。
観察していると謁見を求めてきたその女性は静かに声を発した。
「……お忙しい中ありがとうございます、皇帝陛下」
「いいよ。それであなたはいったい?」
「はい。私はカーチャと申します。このドヴォルザーク帝国の貴族です」
「それでその姿はどうしたのかな……」
「お見苦しいところをすみません。これはある事故に巻き込まれ、このような姿になってしまったのです」
ということは、その包帯グルグルも何かしらの傷を負わされたということか。
「続けてくれ」
「その事故前まで私は普通に暮らしていました。ですが、一週間前にそれは起きました……。屋敷が突然崩れ去り、倒壊してしまったのです」
屋敷が倒壊……?
その言葉に俺は唖然とした。そんなことってあるのか。このドヴォルザーク帝国にはいくつもの建物が並ぶが、倒壊しただなんて聞いたことがない。地震があったという報告も受けていない。
「老朽化していたとか」
「いいえ。我が家は建て替えたばかりで倒壊の恐れはありませんでした」
「ふむ……」
「思い当たることと言えば……その一度お会いした大工さんが元第一皇子、第二皇子に似ていたということくらいしか」
へ…………?
ちょっと待て。
まさかその大工って!!
元第一皇子ワーグナー、元第二皇子ブラームスではなかろうか。確かにアイツらは聖戦前は大工をしていた。
ということは、アイツらが適当に建てた家が倒壊したんじゃ……。おいおい!
その予感は的中したようだ。スケルツォが更なる捕捉を入れてくれたからだ。
「陛下、実は現在のドヴォルザーク帝国内では建物があちらこちらで倒壊しているのです。恐らく、その大工の仕業かと」
なんてこった。あのバカ兄貴たち、なんてことをしてくれたんだ! 素人のクセに大工なんてやってんじゃねぇよ!
「……スケルツォ、一応聞くが……まさかさっきまで殺到していた人たちって」
「そうです。ほとんどが住む家を失くした民たちです」
「うぉい! それを先に言えよ!?」
「ですが、陛下が断られていたので」
うぐ……そりゃそうだけど。なんだか悪いことをしてしまった。
「分かった。俺の無人島開発スキル『建築』で建て直す」
「おぉ! よろしいのですか!」
嬉しそうに声を上げるカーチャ。いやぁ、気の毒過ぎてね。一応俺は皇帝だし、みんなの為に何かしてあげたい。
そうだ、このドヴォルザーク帝国を少しでも良くする。それが今の俺の目標だ。
城内は活気に満ちており、さっそく俺に謁見を求める声が多くあった。それも百人規模で。そんなに会っていられないぞ。
だが、俺はそこで少しだけ『皇帝』になった実感を得た。
てか、噂が広まるの早いなぁ。
世界ギルドで決まった途端、あっという間に噂が伝番したのかな。
今日はさすがに誰かと会う気力はなかった。
しかし。
「陛下、どうしても会いたいという方が」
部屋へ戻ろうとするとスケルツォが俺を呼び止めた。
「悪いんだが今日は……」
「ですが、事は重大です」
スケルツォがそこまで言うとはな。一人くらいならいいか。
「分かった。その人だけ会おう」
「ありがとうございます」
そのどうしても俺に会いたいという人物は、すでに玉座にいるようだった。
向かうとそこには怪しげな人がいた。性別は……分からない。てか、あの見え隠れする“包帯”はなんだ。
まるでミイラのようにグルグル巻きにしているではないか。どういうファッションなんだ、ありゃ。
「あの人か、スケルツォ」
「はい。彼女はワケあってあのような姿をしております」
なんだか深い事情がありそうな予感だな。
観察していると謁見を求めてきたその女性は静かに声を発した。
「……お忙しい中ありがとうございます、皇帝陛下」
「いいよ。それであなたはいったい?」
「はい。私はカーチャと申します。このドヴォルザーク帝国の貴族です」
「それでその姿はどうしたのかな……」
「お見苦しいところをすみません。これはある事故に巻き込まれ、このような姿になってしまったのです」
ということは、その包帯グルグルも何かしらの傷を負わされたということか。
「続けてくれ」
「その事故前まで私は普通に暮らしていました。ですが、一週間前にそれは起きました……。屋敷が突然崩れ去り、倒壊してしまったのです」
屋敷が倒壊……?
その言葉に俺は唖然とした。そんなことってあるのか。このドヴォルザーク帝国にはいくつもの建物が並ぶが、倒壊しただなんて聞いたことがない。地震があったという報告も受けていない。
「老朽化していたとか」
「いいえ。我が家は建て替えたばかりで倒壊の恐れはありませんでした」
「ふむ……」
「思い当たることと言えば……その一度お会いした大工さんが元第一皇子、第二皇子に似ていたということくらいしか」
へ…………?
ちょっと待て。
まさかその大工って!!
元第一皇子ワーグナー、元第二皇子ブラームスではなかろうか。確かにアイツらは聖戦前は大工をしていた。
ということは、アイツらが適当に建てた家が倒壊したんじゃ……。おいおい!
その予感は的中したようだ。スケルツォが更なる捕捉を入れてくれたからだ。
「陛下、実は現在のドヴォルザーク帝国内では建物があちらこちらで倒壊しているのです。恐らく、その大工の仕業かと」
なんてこった。あのバカ兄貴たち、なんてことをしてくれたんだ! 素人のクセに大工なんてやってんじゃねぇよ!
「……スケルツォ、一応聞くが……まさかさっきまで殺到していた人たちって」
「そうです。ほとんどが住む家を失くした民たちです」
「うぉい! それを先に言えよ!?」
「ですが、陛下が断られていたので」
うぐ……そりゃそうだけど。なんだか悪いことをしてしまった。
「分かった。俺の無人島開発スキル『建築』で建て直す」
「おぉ! よろしいのですか!」
嬉しそうに声を上げるカーチャ。いやぁ、気の毒過ぎてね。一応俺は皇帝だし、みんなの為に何かしてあげたい。
そうだ、このドヴォルザーク帝国を少しでも良くする。それが今の俺の目標だ。
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