無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗

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冥界の狭間と真の魔王

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 妖刀はテレジアとなったので、グランツは武器をひとつ失った。
 ヤツはバスタードソードを背から抜き、それを構えた。
 バカデカイ剣だ。以前もあの大剣には苦戦させられた。だけど、あの時はもう状況が違う。

 俺はいざという時にとっておいた『聖槍・グングニル』を構えた。

 魔力バカ食いだから、最近は使用を避けていた。だけど、今はその時だ。


「……ほう、ラスティ。聖槍とはな」
「きっと本当の敵はマルクスではないと思っていた。こういう場面を想定し、俺は温存していたんだ」

「しかし、膨大な魔力を消費するぞ。一瞬でケリがつくと思っているのか」
「アイテムの使用は禁止されていない。魔力回復ポーションくらいあるさ」

「だが、それで持つかどうか……!」


 俺はテオドールから貰った『魔力回復ポーション改』を飲む。


[魔力回復ポーション改]
[効果]
 魔力を大幅に回復する。
 しばらくの間、少しだけ魔力回復速度アップ!


 これで一発なら聖槍を使える。


「くらえッ!!」
「させるか!!」


 高速移動で俺の上に現れるグランツは、そのままバスタードソードを振り下ろしてきた。なんて跳躍力だ。だけど――!


「聖槍――」
「遅いッ!! フェイタルブラスト!!」


 紫の粒子が落ちてくる。こ、これは危険すぎる。まともに受けたら“死ぬ”と理解した。すぐに回避行動に移行して、グランツの放ったスキルを避けた。


「――――っりゃあああああ」


 回避と同時に、地面が大きくえぐれた。

 な、なんだこりゃ……!

 地面に大穴があいてやがる!

 ウソだろ……。


「我がフェイタルブラストを避けるとはな」
「地面に大穴を開けるとは、とんでもない技だ」
「魔王ドヴォルザークやその幹部を討伐する為に開発された闇属性スキルさ」

 なんてスキルだ。そんなもの帝国は開発していたのかよ。……いや、そりゃそうだよな。もともと世界は魔王に支配されていた。
 勝つためにあらゆる手段を講じていたと聞く。
 その手段のひとつがスキル開発だった。

 だが、今はそんなことはどうでもいい。勝つ、それだけだ!


「そうかよ! これでッ!! 聖槍・グングニル!!!」


 タイミングを見計らい、俺は大技スキルを穿うがつ。

 大魔力の塊、光の槍が瞬間でグランツに到達した。


「こ、これが聖槍か! 素晴らしい……! だが!!!」


 イズアールと戦っていたはずのテレジアが変形して『妖刀』となった。それは一瞬でグランツの手元に。……な、なに!? テレポート、か?


「もう俺の聖槍を受けるしかないぞ! グランツ!」
「それはどうかな!」


 バスタードソードを捨て『妖刀テレジア』に赤と青の炎をまとわせるグランツ。……な、なんだ。魔力が爆発的に増大してやがる!


「いけません!! ラスティくん、あの妖刀のスキルは危険すぎます!!」


 大声で叫ぶルドミラ。


「これは緊急事態です。みなさんを退避させます」


 エドゥが動き出し、スコルたちを転移させていた。ま、まて……そんなヤバいというのか!

 だが、俺の聖槍・グングニルがその前にヤツを穿つ!
 その自信があった。


 だから――!



「ラスティ、お前に“この技”を使うことになるとはな……!」


「な、に?」



 グランツはニヤリと不敵に笑い、妖刀から大技らしきスキルを放った。



「奥義! 第六天魔王煉獄殺!!」



 たった数秒で聖槍の光が押し返され、赤青の炎が飲み込む。……マジか!



「ぐ、ああああああああああああああああああああああああ…………!!!」



 や……焼き尽くされる。

 肉体が滅びるような音。こ、これは……地獄、なのか。


 手が、足が、消えていく…………。

 苦しい、とても苦しい。生き地獄とはこの事なのか。



『……』


(……だ)


『……ラスティよ』


(……な、ん、だ……)


『私だ。お前の父だ』


「お、親父……!?」


 暗闇の中から現れるドヴォルザーク帝国の元皇帝アントニン。あの白髪、白いヒゲ……威厳のある顔つきは間違いない……!

 なぜ、ここに!
 ああ、そうか……俺は『地獄』に落ちたのか。


「久しぶりだな、ラスティ」
「なんだ、俺は死んだのか」

「いいや、まだ死んではおらん。貴様は“冥界の狭間”にいるのだ」
「冥界の狭間? そんな馬鹿な」

「フッ。知らぬのも当然であろうな。神代では冥界の門や冥界の番犬……そして冥界の神が存在した。ここは、その名残だ」


 この暗闇が冥界の名残……?
 俺はそんなところに堕ちたというのか。なんてこった……。


「てか、親父もこんなところに堕ちていたのか」
「ウム。私は魔王ドヴォルザークである。しかしな、かつては『オーディン』と呼ばれし、雷神の神であった」

「なに!?」

「そう。私は闇落ちした神なのだ」


 ……そうだったのか。以前話した時はオーディンに汚名を着せたと言っていたな。だが、それは親父自身が闇落ちしたということだったんだ。


「なんで俺の目の前に姿を現した」
「少し話がしたくてな」
「話……か」

「ああ。お前たちは魔王の支配を恐怖し、絶望し、嫌悪した。だが、よく考えてみろ。私がドヴォルザーク帝国を治めていた時代の世界はどうだった……? 戦争は起きなかっただろう。モンスターもそれほど狂暴ではなかったはずだ」

「……そ、それは確かに」

 親父を倒してからは、世界の各地でモンスターが暴れたり、連合国との戦争が起きたりした。明らかに世界のバランスが崩れた。それは……事実だ。

「結局のところ世界は支配でなければ成り立たぬということだ」
「だが、それでは真の自由はないだろ!」

「そうかな。これでも人類に譲歩し、歩み寄ったのだ。だが、それでもくだらぬ戦争は続いた。だから私は支配を強めた。すると自然に魔王と呼ばれるようになった。私は受け入れたよ。その方が都合がよく、世界が上手く機能したからだ。この世には善と悪のバランスが必要なのだ」

「なにが言いたい!」

「魔王という存在は必要悪というわけだ。ラスティ、貴様が“真の魔王”になるのだ」

「…………なッ!?」


 俺が、真の魔王に……?
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