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元老院議長マルクスの蛇腹剣
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フスは深い眠りについている。
念には念を。
さらに拘束魔法で手足を縛り、目隠しもした。これで対策はバッチリだ。
テオドールのペットモンスターにフスを運んでもらうことにした。
「私の移動植物ギンピ・ギンピに任せなさい」
どうやら“スティンガー”という棘を使って移動する植物モンスターのようだ。確かに、トゲトゲが凄いな。あれで二足歩行を可能にしているんだな。
トゲの植物がフスの背中をぶっ刺して運んでいた。
……大丈夫なのかな、アレ。
「その植物、毒とか」
「大丈夫だよ、ラスティ。神経にちょっと影響が出るくらいだ」
「ちょ、まずいだろ!?」
「冗談だ。冗談」
本当かよ。かなり食い込んでいるように見えるけどなぁ。
一応、第二試練の『神器』なので丁重に扱いたいところだが、しかし……また暴走されても面倒くさい。
今はこのままの方が安全だろう。
それから、ハヴァマールとストレルカ。そして、イズアールと合流。みんな無事だった。
「兄上……大丈夫だったのだ?」
「ああ。フスはこの通り捕縛した。もう大丈夫だ」
「うむむ。手ごわい相手だったのだ。しかも、あの魔王ドヴォルザークの大幹部だったとは……」
恐るべし魔王と、ハヴァマールは震えていた。
「助けていただき、ありがとうございます。ラスティ様」
「ストレルカ、ケガはないか?」
「はい。おかげ様で」
無事のようだな。
イズアールが守ってくれていたし、助かった。
さて、その本人だが。
「なんだ?」
「イズアール、ありがとう」
「いや、私はなにもできなかった。魔剣士のエルフとして失格だ」
自分を責めるイズアールは、悔しそうに唇を噛んでいた。
いや、だけど彼の実力は確かだ。
彼がいたから助かった場面は多い。
「一緒にマルクスを倒すぞ。お父さんを取り戻すんだろ」
「……そうだな。ラスティ、君に感謝する」
よし、全員の無事を確認したところで、みんな共に先へ進む。
エドゥには、リアンとソウルウィスパーで連絡を取り合ってもらい、案内に沿って進む。
ひたすら進むと戦闘らしき音が聞こえてきた。
すでに交戦中なのか……!
急いで現場へ向かうと、元老院議長マルクスの姿があった。
「――この程度とは片腹痛いッ」
なにか魔法スキルでリアン達を一斉に吹き飛ばしていた。
リアン、ボルト、マインド、サカモトが地面に倒れ、動かなくなった。……そんな!
「な、なんだと…………」
俺は驚いた。
あの四人が呆気なくやられていた。
マルクスの野郎、いったい何をした……!
ゲイルチュールを構え、俺はマルクスの前に姿を出した。
「来たか、元第三皇子ラスティ・ヴァーミリオン」
「マルクス……」
「たった今、元帝国騎士のリアン達は聖戦から脱落した」
「まだ俺たちが残っている」
「そうだな」
愉快そうに笑うマルクスは、俺の方へ歩み寄ってきた。余裕綽々といった風に。なぜ、そんな余裕がある。
少なくとも、こっちはフスを――神器である『オラトリオ』を手に入れた。そして、パーティには『イズアール』もいる。
しかし、肝心の『ルサルカ』さんが行方不明。
マルクスが連れ去った可能性が高い。
「ルサルカさんを返せ」
「……神器のことか。あのドワーフの少女のことなら知らん」
「知らん!? ウソをつけ。ドラゴンで連れ去った痕跡があったんだぞ!」
「ワケのわからんことを。まあいい、どのみちラスティ……お前たちはここで終わるのだ」
「逆だ。お前が終わりだ。皇帝になんてさせねえよ」
そう、これで決着をつける。
ルサルカさんを取り戻し、すべての神器を揃えて俺が一時的な皇帝になる。今はそれでいい。細かいことは後で考える!
「言葉はもう不要だろ。マルクス」
「同意だ。互いの主張など永久に相容れぬ。だから戦争が起きる。戦いが続く」
マルクスは剣を持つようなポーズをした。
その手には“なにも”持っていない。
…………?
武器がないのに構えているぞ、アイツ。
「なんのつもりだ」
「貴様を殺す構えさ」
「ふざけているのか!」
「いや。ふざけてなどおらぬ。では、少しだけ遊んでやろう」
ズンッとプレッシャーを掛けてくるマルクスは、一歩踏み出すと猛烈な勢いで接近してきた。
……な、なんて速さだ!
ゲイルチュールを振りかぶるが――『ギンッ!!』と鈍い音がして、俺はビックリした。
こ、こいつ……武器を持っていやがる。
元老院議長マルクスの武器は“透明”なのか――!?
「…………ッッ!」
「どうだ、驚いただろう」
「いったい、どうなっていやがる」
「これは『インビジブルウェポン』という透明な武器。前皇帝陛下から拝領した蛇腹剣である」
ガンッと俺のゲイルチュールが弾かれた。
すぐに俺は後退したが、マルクスの透明な剣が接近してくるのが分かった。……やべえ、剣が伸びてくるのが気配で分かった。
なんとか回避した――ような気がする。
透明で分からねえ!!
「てやあああああッ!!」
傍でマルクスのインビジブルウェポンを弾く音がした。
「ルドミラ!」
「ラスティくん、私も戦います。名誉を挽回させてください」
「もちろんだ。みんなで戦うぞ」
そう、俺は一人じゃない。
こっちは最強の仲間がいる。
「面白い!! 全員掛かってこい!!」
マルクスは大声で叫んだ。
なんて野郎だ。俺たちを相手に余裕か!
舐められたものだな。
なら、容赦はしない。
絶対に勝つ!!
念には念を。
さらに拘束魔法で手足を縛り、目隠しもした。これで対策はバッチリだ。
テオドールのペットモンスターにフスを運んでもらうことにした。
「私の移動植物ギンピ・ギンピに任せなさい」
どうやら“スティンガー”という棘を使って移動する植物モンスターのようだ。確かに、トゲトゲが凄いな。あれで二足歩行を可能にしているんだな。
トゲの植物がフスの背中をぶっ刺して運んでいた。
……大丈夫なのかな、アレ。
「その植物、毒とか」
「大丈夫だよ、ラスティ。神経にちょっと影響が出るくらいだ」
「ちょ、まずいだろ!?」
「冗談だ。冗談」
本当かよ。かなり食い込んでいるように見えるけどなぁ。
一応、第二試練の『神器』なので丁重に扱いたいところだが、しかし……また暴走されても面倒くさい。
今はこのままの方が安全だろう。
それから、ハヴァマールとストレルカ。そして、イズアールと合流。みんな無事だった。
「兄上……大丈夫だったのだ?」
「ああ。フスはこの通り捕縛した。もう大丈夫だ」
「うむむ。手ごわい相手だったのだ。しかも、あの魔王ドヴォルザークの大幹部だったとは……」
恐るべし魔王と、ハヴァマールは震えていた。
「助けていただき、ありがとうございます。ラスティ様」
「ストレルカ、ケガはないか?」
「はい。おかげ様で」
無事のようだな。
イズアールが守ってくれていたし、助かった。
さて、その本人だが。
「なんだ?」
「イズアール、ありがとう」
「いや、私はなにもできなかった。魔剣士のエルフとして失格だ」
自分を責めるイズアールは、悔しそうに唇を噛んでいた。
いや、だけど彼の実力は確かだ。
彼がいたから助かった場面は多い。
「一緒にマルクスを倒すぞ。お父さんを取り戻すんだろ」
「……そうだな。ラスティ、君に感謝する」
よし、全員の無事を確認したところで、みんな共に先へ進む。
エドゥには、リアンとソウルウィスパーで連絡を取り合ってもらい、案内に沿って進む。
ひたすら進むと戦闘らしき音が聞こえてきた。
すでに交戦中なのか……!
急いで現場へ向かうと、元老院議長マルクスの姿があった。
「――この程度とは片腹痛いッ」
なにか魔法スキルでリアン達を一斉に吹き飛ばしていた。
リアン、ボルト、マインド、サカモトが地面に倒れ、動かなくなった。……そんな!
「な、なんだと…………」
俺は驚いた。
あの四人が呆気なくやられていた。
マルクスの野郎、いったい何をした……!
ゲイルチュールを構え、俺はマルクスの前に姿を出した。
「来たか、元第三皇子ラスティ・ヴァーミリオン」
「マルクス……」
「たった今、元帝国騎士のリアン達は聖戦から脱落した」
「まだ俺たちが残っている」
「そうだな」
愉快そうに笑うマルクスは、俺の方へ歩み寄ってきた。余裕綽々といった風に。なぜ、そんな余裕がある。
少なくとも、こっちはフスを――神器である『オラトリオ』を手に入れた。そして、パーティには『イズアール』もいる。
しかし、肝心の『ルサルカ』さんが行方不明。
マルクスが連れ去った可能性が高い。
「ルサルカさんを返せ」
「……神器のことか。あのドワーフの少女のことなら知らん」
「知らん!? ウソをつけ。ドラゴンで連れ去った痕跡があったんだぞ!」
「ワケのわからんことを。まあいい、どのみちラスティ……お前たちはここで終わるのだ」
「逆だ。お前が終わりだ。皇帝になんてさせねえよ」
そう、これで決着をつける。
ルサルカさんを取り戻し、すべての神器を揃えて俺が一時的な皇帝になる。今はそれでいい。細かいことは後で考える!
「言葉はもう不要だろ。マルクス」
「同意だ。互いの主張など永久に相容れぬ。だから戦争が起きる。戦いが続く」
マルクスは剣を持つようなポーズをした。
その手には“なにも”持っていない。
…………?
武器がないのに構えているぞ、アイツ。
「なんのつもりだ」
「貴様を殺す構えさ」
「ふざけているのか!」
「いや。ふざけてなどおらぬ。では、少しだけ遊んでやろう」
ズンッとプレッシャーを掛けてくるマルクスは、一歩踏み出すと猛烈な勢いで接近してきた。
……な、なんて速さだ!
ゲイルチュールを振りかぶるが――『ギンッ!!』と鈍い音がして、俺はビックリした。
こ、こいつ……武器を持っていやがる。
元老院議長マルクスの武器は“透明”なのか――!?
「…………ッッ!」
「どうだ、驚いただろう」
「いったい、どうなっていやがる」
「これは『インビジブルウェポン』という透明な武器。前皇帝陛下から拝領した蛇腹剣である」
ガンッと俺のゲイルチュールが弾かれた。
すぐに俺は後退したが、マルクスの透明な剣が接近してくるのが分かった。……やべえ、剣が伸びてくるのが気配で分かった。
なんとか回避した――ような気がする。
透明で分からねえ!!
「てやあああああッ!!」
傍でマルクスのインビジブルウェポンを弾く音がした。
「ルドミラ!」
「ラスティくん、私も戦います。名誉を挽回させてください」
「もちろんだ。みんなで戦うぞ」
そう、俺は一人じゃない。
こっちは最強の仲間がいる。
「面白い!! 全員掛かってこい!!」
マルクスは大声で叫んだ。
なんて野郎だ。俺たちを相手に余裕か!
舐められたものだな。
なら、容赦はしない。
絶対に勝つ!!
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