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英傑召喚と無人島開発スキル『建築』

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 フスは、さらにシャドウゴーレムを召喚した。
 なんてヤツだ……同時にこんな何体も。七体も俺たちを取り囲むように召喚し、逃げられないようにしていた。


「……オラトリオ! ルドミラたちをどうした!?」
「その名で呼ぶな。……勇者たちは私のとっておきの“英傑召喚”で消してやったのさ」
「英傑召喚、だと?」
「そうとも。召喚士サモナーの中では最上位スキルなのさ。英傑を呼び起こせる者こそが“サモンマスター”の名に相応しい。そして、それがこの私には出来る」


 まずいな。このままでは、あらゆるモノを召喚されまくって、俺たちが不利になる。ここは短期決戦でいくべきか……!
 しかし、謎のプレッシャースキルによって、仲間は身動きができない。俺が辛うじて動ける程度だ。これを何とかしないと!


「そうかよ。じゃ、お前を倒すしかないようだな」
「この私を倒す!? 魔王ドヴォルザーク様に選ばれし……この大幹部であるフスを!? ふざけるなァ!!」


 更にプレッシャーが強くなる。
 ……スコルたちは完全に倒れていた。
 俺も身動きが取りづらくなっていた。
 な、なんなんだこれは。
 どうすればこのプレッシャーを打ち破れるんだ……!?


「そもそも、お前はなんで魔王に下った。エルフの王だろうが……」

「ボロディン……はヴァーツラフは私を裏切った! この私に勇者一行を差し向け、弱体化したところ城塞都市コーラングレに封印したのだぞ……! 何百年もの間眠り続け、今日ようやく封印が解かれた……」

「その封印がなぜ解けた?」

「さあな。気づいたら外界に出ることができた。それにお前如き劣等種族に答える義理はない。さあ、お前たちには消えてもらうぞ。今この世界では『聖戦』なるものが始まっているらしいな。なら、この私自らがドヴォルザーク帝国の皇帝となろう!」

「なぜ、聖戦のことを!」

 ――そ、そうか。
 元老院議長マルクスだ。ヤツがすでに城塞都市にたどり着いていて聖戦の試練対象であるオラトリオ……フスを目覚めさせたんだ。

 どのみち、この男の封印を解かねばならなかった……というわけだ。

 マルクスの気配はない。
 そうか、俺たちに戦わせてフスの撃破を待っているんだ。なんて卑怯なヤツだ!


「ラ、ラスティ……君がフスを倒すんだ……」
「リアン! ああ、だけどまずはプレッシャーを解除してやる」


 みんな苦しそうにもがいている。
 なんとかしないと窒息死もありえるぞ、これは。


「……ぐ、ぬぅ……!」


 気合で立ち上がるイズアールは、俺の足元まで這ってきた。な、なんて気合と根性だよ。

「無理をするな、イズアール。俺でも立つのがやっとなんだぞ」
「聞け……。これは恐らく『テレキネシス』だ」
「なんだと?」
「あのフスというエルフがやっているのではない。元老院議長マルクスの得意とするスキルだ……!」


 なッ!
 ということは、これは遠隔による妨害ということか。マルクスがすでに俺たちに仕掛けていたんだ……。
 クソッ、なんでことだ。
 すでに俺とヤツの戦いは始まっていたということか。

 とにかく、フスを叩きのめすしかない。
 アイツを止めてやる。

 +10覚醒ヴェラチュールを武器召喚して、俺は構えた。


「……ほう、武器召喚とはな。だが、この七体のゴーレムを相手にできるかな? 下手触ればゴーレムは自爆して仲間を巻き込むだろう」

「そうだな。だが、俺の本領は別にある。いいか、フス……俺には誰にもない特殊なスキルがあるだ。それと仲間だ」

「それがなんだ。お前には何もできやしない。地獄を味わうがいい――英傑召喚」


 ならば、こっちはこれだ。
 その英傑召喚とやら、妨害させてもらう。


「無人島開発スキル……!」
「――なにッ!?」


「建築開始!」


 その瞬間、所持している材料が膨大に消費されて巨大な“城”が建築されていく。
 俺と仲間を囲うように。
 建物で遮断すればスキルの影響は受けないはず。少なくとも薄くはなるはず。それと同時に英傑召喚を妨害できると考えた。

 その読みは正しかった。

 建築の衝撃でシャドウゴーレムが弾きだされ、遠くへふっ飛んでいく姿見えた。そして、どこかで爆発が起きていた。どうやら、全てのゴーレムは消滅したようだ。

 俺たちとフスは隔離された。

 そのおかげかテレキネシスの影響を受けなくなった。


「お……おぉ、兄上のおかげで助かったのだ!」


 ハヴァマールが立ち上がり、みんなも続々と復帰する。


「ありがとうございます、ラスティさん。さすがです!」
「スコル、無事でよかった」
「はい、ケガもありません。ストレルカさんやイズアールさんも無事です」


 リアンたちも問題なさそうだ。
 さて、遮断されたとはいえ……外へ出ればまたテレキネシスを受けるかもしれない。

 こうなったら廃墟を使って、建物を作りまくるしかないな。

「ラスティさん、やはり……建物を?」

 ボルトが俺に聞いてきた。

「そうだな。それしか方法がないと思う」
「分かりました。では、私たちはマルクスを追いましょう」
「なるほど、二手に別れる作戦か」
「ええ。あとあなたの仲間も探しておきます。確か、ルドミラさんとおっしゃいましたよね」
「いいのか?」
「こちらが出来ることはそれくらいです」
「頼んだ」
「はい。お任せください」

 よし、リアン、ボルト、マインド、サカモトの四人にはマルクスを見つけ出してもらう。アイツを止めねばな。どのみちこれは『聖戦』なのだから。
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