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正体不明の気配 Side:ルドミラ
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古代魔導兵器を探すこと半日。
そろそろ日が傾き始めていた。
テオドールの召喚ペット『スクワロル』による探索も虚しく、今のところ情報を得られずにいた。
当の本人は疲れ切ってパイプタバコをふかしていた。
「ルドミラ。城塞都市コーラングレは思った以上に広い。一日で回るなど無理だ」
「そうですね。さすが城塞都市なだけある。ほとんど廃墟ですが、中々に広大。しかし、あなたのペットならほとんど探索できているのでは?」
そう疑問を投げかけると、テオドールは煙を吐き出した。まるでため息のように。
「……ぷはぁ。残念だが、スクワロルはほとんど消されてしまった」
「け、消されたですって!? なぜ、もっと早く言わなかったのです!」
「今言おうと思ったのさ。ちなみに原因は不明」
「不明、ですか」
となると危険なモンスターか未知の生命体が潜んでいるということ。
エドゥに視線を向けると、私の気配に気づいて説明してくれた。
「どうやら、この城塞都市コーラングレには得体のしれない何かが潜んでいるみたい」
「得体のしれない……?」
「それは分からない。正体不明」
「エドゥでも分からないのですね」
「うん。自分の力でも解析不可能。それと怪しい気配が接近している」
「それも気になりますね」
「もしかしたら“聖戦”の参加者かも」
「……なんと」
そうか。今は聖戦の真っ最中である。
この場所も無関係ではないかもしれない。
もしそうなら、その気配は聖戦の関係者で間違いないだろう。
だとしたら警戒しておかねば。
我々は参加者ではないが、相手は聖戦クエストの進行の為に敵対してくる可能性がある。その場合は剣を交えるしかない。
「今日のところはここまでにしよう、ルドミラ」
テオドールはすっかりやる気がないというか。
いや、けれど大切なペットを失ったのだ。そのショックもあるのかもしれない。
「野宿になるとは」
「不満かい?」
「当たり前です。一面、廃墟ですからね」
「たまにはいいじゃないか。昔はほら、こうして一緒に旅をしたよな」
懐かしそうな表情を浮かべるテオドール。言われてみればそうだ。百年前以前は、勇者として世界中を巡り……魔王の幹部と戦った。
様々な出会いと別れがあった。
そんなことを思い出していると、エドゥが薪を取り出して火をつけた。
「これで雰囲気がでる」
「いつの間に薪を……」
「ラルゴから調達しておいた」
予め所持していたと。準備がいい。
感心しているとエドゥはさらに調理器具と食材を出した。アイテムボックスにどれだけ溜め込んでいるんだか。
「そんなものまで持参したのですね」
「食事は大事」
「腹が減ってはなんとやら、というわけですね」
この先、戦いがあると考えると食べておかねば力が出ない。
「おぉ、ドラゴン肉があるのかい、エドゥ」
「うん。テオドールが好きかと思って」
まさかそんな高級食材があるとは。
肉を串に刺し、それを焚火であぶっていく。ぱちぱちと音を立て、肉の焼けるニオイが漂う。
「このような場所で食事が出来るとは」
「はい、どうぞ。ルドミラちゃん」
エドゥがお酒を取り出していた。
そんなものまで……!
これではもう宴会だ。
「いいのですか? もし敵に襲われたとき……」
「大丈夫。自分が守るから」
「やれやれ、仕方ないですね」
今、神器エインヘリャルの力は失われている。だから、酒に酔ったりするし……状態異常だって普通に受けるのだ。
この時期だけは不死身ではない。
そのことをエドゥは承知しているはず。
でも、彼女が“守る”と真っ直ぐな瞳を向けて断言するのだから、安心感があった。
今までも何度も守ってくれた。
なら、たまには酔ってみるのもいいかもしれない。
「ほら、ロゼワインだ」
「こ、これは……私の好きなお酒ではないですか! テオドール、これをよく入手できましたね。今のこの世界では入手困難ですよ!?」
「こういう時のとっておきさ」
私は感激した。このロゼワインをまた飲める日がこようとは。
ワイングラスに注がれる桜色の液体。なんて美しい色彩。この色はいつ見てもいい。
目で楽しみ、香りもじっくりと楽しんだ。
そしてロゼワインを一口味わう。
甘くてフルーツの香り。これこそ幸せの味……!
そろそろ日が傾き始めていた。
テオドールの召喚ペット『スクワロル』による探索も虚しく、今のところ情報を得られずにいた。
当の本人は疲れ切ってパイプタバコをふかしていた。
「ルドミラ。城塞都市コーラングレは思った以上に広い。一日で回るなど無理だ」
「そうですね。さすが城塞都市なだけある。ほとんど廃墟ですが、中々に広大。しかし、あなたのペットならほとんど探索できているのでは?」
そう疑問を投げかけると、テオドールは煙を吐き出した。まるでため息のように。
「……ぷはぁ。残念だが、スクワロルはほとんど消されてしまった」
「け、消されたですって!? なぜ、もっと早く言わなかったのです!」
「今言おうと思ったのさ。ちなみに原因は不明」
「不明、ですか」
となると危険なモンスターか未知の生命体が潜んでいるということ。
エドゥに視線を向けると、私の気配に気づいて説明してくれた。
「どうやら、この城塞都市コーラングレには得体のしれない何かが潜んでいるみたい」
「得体のしれない……?」
「それは分からない。正体不明」
「エドゥでも分からないのですね」
「うん。自分の力でも解析不可能。それと怪しい気配が接近している」
「それも気になりますね」
「もしかしたら“聖戦”の参加者かも」
「……なんと」
そうか。今は聖戦の真っ最中である。
この場所も無関係ではないかもしれない。
もしそうなら、その気配は聖戦の関係者で間違いないだろう。
だとしたら警戒しておかねば。
我々は参加者ではないが、相手は聖戦クエストの進行の為に敵対してくる可能性がある。その場合は剣を交えるしかない。
「今日のところはここまでにしよう、ルドミラ」
テオドールはすっかりやる気がないというか。
いや、けれど大切なペットを失ったのだ。そのショックもあるのかもしれない。
「野宿になるとは」
「不満かい?」
「当たり前です。一面、廃墟ですからね」
「たまにはいいじゃないか。昔はほら、こうして一緒に旅をしたよな」
懐かしそうな表情を浮かべるテオドール。言われてみればそうだ。百年前以前は、勇者として世界中を巡り……魔王の幹部と戦った。
様々な出会いと別れがあった。
そんなことを思い出していると、エドゥが薪を取り出して火をつけた。
「これで雰囲気がでる」
「いつの間に薪を……」
「ラルゴから調達しておいた」
予め所持していたと。準備がいい。
感心しているとエドゥはさらに調理器具と食材を出した。アイテムボックスにどれだけ溜め込んでいるんだか。
「そんなものまで持参したのですね」
「食事は大事」
「腹が減ってはなんとやら、というわけですね」
この先、戦いがあると考えると食べておかねば力が出ない。
「おぉ、ドラゴン肉があるのかい、エドゥ」
「うん。テオドールが好きかと思って」
まさかそんな高級食材があるとは。
肉を串に刺し、それを焚火であぶっていく。ぱちぱちと音を立て、肉の焼けるニオイが漂う。
「このような場所で食事が出来るとは」
「はい、どうぞ。ルドミラちゃん」
エドゥがお酒を取り出していた。
そんなものまで……!
これではもう宴会だ。
「いいのですか? もし敵に襲われたとき……」
「大丈夫。自分が守るから」
「やれやれ、仕方ないですね」
今、神器エインヘリャルの力は失われている。だから、酒に酔ったりするし……状態異常だって普通に受けるのだ。
この時期だけは不死身ではない。
そのことをエドゥは承知しているはず。
でも、彼女が“守る”と真っ直ぐな瞳を向けて断言するのだから、安心感があった。
今までも何度も守ってくれた。
なら、たまには酔ってみるのもいいかもしれない。
「ほら、ロゼワインだ」
「こ、これは……私の好きなお酒ではないですか! テオドール、これをよく入手できましたね。今のこの世界では入手困難ですよ!?」
「こういう時のとっておきさ」
私は感激した。このロゼワインをまた飲める日がこようとは。
ワイングラスに注がれる桜色の液体。なんて美しい色彩。この色はいつ見てもいい。
目で楽しみ、香りもじっくりと楽しんだ。
そしてロゼワインを一口味わう。
甘くてフルーツの香り。これこそ幸せの味……!
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