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大樹モンスター『ジャイアントツリー』

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 イズアールの父親は、どうやら無事のようだった。
 メモリアの水晶には牢に閉じ込められている男性の姿があった。それこそがイズアールの父親だった。
 牢を面白おかしく眺める元老院議長のマルクス。
 アイツ……本当に人質にしていたとは。

「……父上。クソッ!」
「大丈夫だ、イズアール。俺が取り返してやるさ」
「ラスティ……ありがとう。君は良い奴だな」

 嬉しそうに微笑むイズアール。
 俺はマルクスが許せないんだ。
 アイツは島国ラルゴを消滅させようとさえしたのだから。そんな奴がドヴォルザーク帝国の皇帝になったら……なんて思うと恐ろしい。

 占いは終わった。

 俺はメモリアさんに礼を言って店を出た。

 けれど、彼女は俺を呼び止めた。


「まってください」
「……?」
「ラスティ様。城塞都市コーラングレに眠るエルフは……危険です。気を付けてください」

「危険……か。分かった、肝に銘じておく」


 そういえば、オラトリオはエルフの王なんだっけ? でもなんで眠っているんだ? 封印されているのだろうか。
 行ってみれば分かるかな。

 今度こそメモリアと別れた。

 お店を出てスコルを先頭にアルトオーボエ湖を目指した。


 ◆


 ボロディンを出立し、湖まで歩いて向かう。
 どうやら、それなりに距離があるようだ。


「――えっとですね。徒歩で半日ほどかと思います」


 思い出すようにスコルはそう言った。
 そんなに掛かるのか。
 ハヴァマールは「げぇ~」と気怠そうに猫耳を垂れる。
 確かに、ちと遠い。

 足が疲れてしまうし、到着までに体力を相当削られるに違いない。

 なにか良い方法がないかと考えているとイズアールが「時間を掛けていられんな」とつぶやいた。
 俺もその意見には同意だが……移動手段がないんだよなぁ。


「馬車でも借りれば良かったか」
「いえ、ラスティさん。この先は悪路が続きますので馬車では通れません」


 道を知っているスコルがそう断言するのだから間違いはないな。……ダメか。


「となると……アレ・・しかないか」
「兄上、まさか……」


 この近くには森がある。
 すでに俺の視界には“モンスター”が視認できていた。

 あれは『ジャイアントツリー』という大樹モンスターだ。大型で移動速度もそれなりにある。しかも、丈夫な枝には何人も乗れるだろう。


「あのモンスターをテイムするしか」
「テ、テイムって……ペットにするってことなのだ!?」
「そうだ、ハヴァマール。それしかないだろ」

「し、しかし……テイムアイテムがないのだ」

「自力でなんとかする……!」
「無理! 不可能なのだ! アイテムなしではモンスターは従わぬのだ!」


 だよなぁ。
 モンスターは人間の言うことなんて聞いてくれやしない。だが、テイムアイテムがあれば別だ。一定の確率でペットにすることも可能だ。
 こんな時、テオドールのような『テイムマスター』がいれば楽勝なんだろうけどな。だが、彼はルドミラたちと行動しているから合流は出来ない。


「むぅ……む!」
「どうかしたのですか、ラスティさん」
「スコル! 世界聖書にテイムスキルとかない……よな?」

「えっ。うーん……そのような記述は見当たりませんね」
「ダメか」

「でも、少し調べてみますね」
「頼む」


 こうなったら強引にでもジャイアントツリーを従えるしかないか。
 ゲイルチュールの武器召喚を行い、俺は戦闘に備えた。

「ラスティ様、戦うのですか?」

 ストレルカが心配そうに声を掛けてくる。

「それしかないかな」
「相手は一応ボスモンスターです。油断はなさらない方がいいかと」
「ああ。まずはやってみるさ! みんなはここで待機。俺がなんとかする――!」


 ここまでずっと、みんなの力に頼りっぱなしだ。たまには俺が自力でなとかしないとな。そうだ。この無人島開発スキルで上手くやればきっと。
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