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元老院のモンスター
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人語を喋り、理解するということは高位のモンスターだ。レイドボスだから当然だけど喋るとは思いもしなかった。
「聖戦をなぜ知っている」
『ドヴォルザーク帝国の元第三皇子……ラスティ・ヴァーミリオン。貴様こそ、なぜ他国に干渉する。島国だけでは飽き足らず、支配を広めるのか』
そこまで知っているとはな。本当に何者なんだコイツ。しかし、適当に答えればこちらに被害が出そうな気がしていた。
仕方ない。
ここは素直に答えよう。
「俺は別に皇帝になりたいわけではない。ただ、島国ラルゴのため……仲間や民のために聖戦に参加することにした。でなければ元老院が世界を支配しかねんからだ」
『……なるほど。マルクス・ヴァンデルハートか』
「詳しいな。あんた、何なんだ?」
『我は元老院がひとり……ハイデガー。もともと私はモンスターなのだ』
「え!? 元老院!?」「そ、そんな……」「うそでしょ……」「そんなことが」
俺もスコルもストレルカも、そしてハヴァマールも驚いていた。
『あれは魔王ドヴォルザークが世界を支配していた時だ。私は二重スパイとして帝国に送られ、元老院の一員となった』
「二重スパイだと? モンスターなのに?」
『私は人間の女を愛してしまった。故に魔族のことも人間のことも理解しているのだ。どちらの敵でも味方でもない。中立だ』
そういうことだったのか。
つまり、このグレートバイソンは元々は魔王の味方だったが、人間社会に馴染むにつれて女性と恋に落ちたわけだ。恐らく、マルクスの先祖か何かが脅して元老院からも利用されていたわけだな。
今はどうしてかモンスターの姿でこの辺りに潜伏していたわけか。
「そうか。じゃあ、俺たちの邪魔をしないでくれ」
『……まあいい。なら、せめてマルクスを懲らしめて欲しい。ヤツ等の家系は代々、私を利用して好き放題していたのだ。それこそ暗殺などもな……』
それを聞いてゾッとした。
そこまでしていたのか元老院!
ストレルカもなにか思い出したのか震えていた。
「ラ、ラスティ様。そういえば聞いた事があります……粛清を」
「粛清――か」
「ええ。裏切者や使えなくなった者、反乱の意思を少しでも見せる者は、元老院の手で抹殺されるんです。でもそれは決して表には出ない……裏の世界の話だそうです。ただの噂だと思っていたのですが」
「マジかよ……」
どうしようもないヤツ等だな、元老院。アイツ等は解体しなきゃダメだ。帝国がダメになる。いや、それどころか世界が終わる。
なんとかしないとな。
『ラスティ。お前なら正しい道へ導けるのだな』
「ああ。俺は世界を支配しない。欲しいのは自由だ」
『良い返答だ。ならば力を貸そう』
「力を?」
『お前が欲しいものをくれてやる』
「うーん……そりゃ次の試練である神器だけどさ」
『分かっている。オラトリオの情報だけ知っている』
「なんだって!?」
『ヤツは、城塞都市コーラングレの奥地に眠るエルフの王。ズロニツェの血を引く者……』
ズロニツェ!?
それってスコルの……!
「え……どういうことですか!」
気になったのかスコルは、グレートバイソンに聞き返す。俺も気になる。なぜエルフの王なんだ……!?
『それは会えば分かる。……さて、時間だ』
グレートバイソンの体がサラサラと消えていく。
な、なんで……急に!
「どうした?」
『悪いが我の魔力は底を尽きた。数百年と生き、この聖戦まで身を持たせてきた。もう十分だ……。あとは任せたぞ』
そう言ってグレートバイソンは消え去った。
まさか俺に会うためにわざわざ……。最初からそのつもりで。
「き、消えてしまったぞ、兄上」
「そうだな、ハヴァマール。託されたってことかな」
「どうするのだ。ここから城塞都市コーラングレは遠すぎるのだ」
「ああ。しかも、ルドミラたちが向かっているはずだ」
なんちゅうタイミングだ。
向こうは任せていたのに行かなければならなくなったかもしれない。いや、行かねばならない。明日の試練は神器の収集なのだから。
「聖戦をなぜ知っている」
『ドヴォルザーク帝国の元第三皇子……ラスティ・ヴァーミリオン。貴様こそ、なぜ他国に干渉する。島国だけでは飽き足らず、支配を広めるのか』
そこまで知っているとはな。本当に何者なんだコイツ。しかし、適当に答えればこちらに被害が出そうな気がしていた。
仕方ない。
ここは素直に答えよう。
「俺は別に皇帝になりたいわけではない。ただ、島国ラルゴのため……仲間や民のために聖戦に参加することにした。でなければ元老院が世界を支配しかねんからだ」
『……なるほど。マルクス・ヴァンデルハートか』
「詳しいな。あんた、何なんだ?」
『我は元老院がひとり……ハイデガー。もともと私はモンスターなのだ』
「え!? 元老院!?」「そ、そんな……」「うそでしょ……」「そんなことが」
俺もスコルもストレルカも、そしてハヴァマールも驚いていた。
『あれは魔王ドヴォルザークが世界を支配していた時だ。私は二重スパイとして帝国に送られ、元老院の一員となった』
「二重スパイだと? モンスターなのに?」
『私は人間の女を愛してしまった。故に魔族のことも人間のことも理解しているのだ。どちらの敵でも味方でもない。中立だ』
そういうことだったのか。
つまり、このグレートバイソンは元々は魔王の味方だったが、人間社会に馴染むにつれて女性と恋に落ちたわけだ。恐らく、マルクスの先祖か何かが脅して元老院からも利用されていたわけだな。
今はどうしてかモンスターの姿でこの辺りに潜伏していたわけか。
「そうか。じゃあ、俺たちの邪魔をしないでくれ」
『……まあいい。なら、せめてマルクスを懲らしめて欲しい。ヤツ等の家系は代々、私を利用して好き放題していたのだ。それこそ暗殺などもな……』
それを聞いてゾッとした。
そこまでしていたのか元老院!
ストレルカもなにか思い出したのか震えていた。
「ラ、ラスティ様。そういえば聞いた事があります……粛清を」
「粛清――か」
「ええ。裏切者や使えなくなった者、反乱の意思を少しでも見せる者は、元老院の手で抹殺されるんです。でもそれは決して表には出ない……裏の世界の話だそうです。ただの噂だと思っていたのですが」
「マジかよ……」
どうしようもないヤツ等だな、元老院。アイツ等は解体しなきゃダメだ。帝国がダメになる。いや、それどころか世界が終わる。
なんとかしないとな。
『ラスティ。お前なら正しい道へ導けるのだな』
「ああ。俺は世界を支配しない。欲しいのは自由だ」
『良い返答だ。ならば力を貸そう』
「力を?」
『お前が欲しいものをくれてやる』
「うーん……そりゃ次の試練である神器だけどさ」
『分かっている。オラトリオの情報だけ知っている』
「なんだって!?」
『ヤツは、城塞都市コーラングレの奥地に眠るエルフの王。ズロニツェの血を引く者……』
ズロニツェ!?
それってスコルの……!
「え……どういうことですか!」
気になったのかスコルは、グレートバイソンに聞き返す。俺も気になる。なぜエルフの王なんだ……!?
『それは会えば分かる。……さて、時間だ』
グレートバイソンの体がサラサラと消えていく。
な、なんで……急に!
「どうした?」
『悪いが我の魔力は底を尽きた。数百年と生き、この聖戦まで身を持たせてきた。もう十分だ……。あとは任せたぞ』
そう言ってグレートバイソンは消え去った。
まさか俺に会うためにわざわざ……。最初からそのつもりで。
「き、消えてしまったぞ、兄上」
「そうだな、ハヴァマール。託されたってことかな」
「どうするのだ。ここから城塞都市コーラングレは遠すぎるのだ」
「ああ。しかも、ルドミラたちが向かっているはずだ」
なんちゅうタイミングだ。
向こうは任せていたのに行かなければならなくなったかもしれない。いや、行かねばならない。明日の試練は神器の収集なのだから。
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