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勇者パーティの旅立ち
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朝を迎え、ついに『聖戦』が始まった。
ドヴォルザーク帝国の皇帝を決める大イベントだ。
もし決まらなければ、権限が元老院に集中し帝国は崩壊。共和政に移行してしまう。それだけは阻止せねば、あのマルクスが全てを掌握してしまうだろう。
そうなれば、世界を支配されかねん。
「……さて、街の様子を見てみるか」
ベッドから立ち上がると、スコルが俺の腰に抱きついてきた。
「ラスティさん……どこへ行くんですかぁ……」
ぽけぽけとした表情でスコルは声を振り絞る。今日はなんか眠そうだな。
「ちょっと街へ行くんだ。ほら、聖戦が始まったし」
「そ、そうでしたね。では、わたしもご一緒するので」
「そうか。じゃあ、準備完了まで待つよ。大広間で待ってる」
「はいっ。でもその前に、おはようのキスは……?」
スコルは、目の前でキスをねだってくる。
すでに顔を近づけ、準備万端。
そう求められると嬉しくてたまらなかった。
俺は愛を込めてスコルにキスをした。
◆
廊下を歩き、大広間へ入った。
中には先客がいた。
なんか珍しい三人が座って待っていた。俺を待っていたのか……?
「ルドミラ、エドゥ、テオドール……どうした?」
この元勇者パーティがそろって待機しているとか、どうしたことか。みんななんか真顔というか、ちょっと怖いな。
俺は恐る恐る中へ。
「お待ちしておりました、ラスティくん」
「待っていた? ルドミラ、これはどういうことだ」
「話があるのです」
「ふむ……」
なら聞かないわけにはいかない。
きっと大切な話があるのだろう。
俺はいつもの自分の席に腰掛けた。
すると、エドゥが気を遣って紅茶とトーストを浮かせて俺の前に並べてくれた。
「どうぞ、ラスティ様」
「ありがとう、エドゥ。……で、どうしたんだ」
とりあえず、テオドールに話を振ってみた。
「ほら、昨日の古代魔導兵器のことさ」
「ああ……インドラか。あれを何とかしないと。でも聖戦が始まってしまった」
「そう、それが問題だ。どうするべきか昨晩、我等で話し合った」
「マジか」
「そこでね、私とルドミラ、エドゥの元勇者パーティでオラトリオ大陸の最北端・城塞都市コーラングレへ向かおうと思うんだ」
オラトリオ大陸の最北端・城塞都市コーラングレ?
噂には聞いたことがある。
カタナだとか温泉だとか“和風”が発展している『異国』だ。
普段は鎖国状態で入ることはできない場所と聞いている。
「まさか、古代魔導兵器を潰しに行くのか」
今度はルドミラに視線を送る。
彼女はうなずきながらも、毅然とした態度と眼差しで俺を見据える。この目は本気だな。もう長いこと彼女と過ごしているから自然と分かった。
「その通りです。一度は破壊したインドラ……復活したのなら、コーラングレにまた再設置されている可能性が高い。設計図が盗み出された可能性もあるのです」
「なんだって……!」
「ラスティくん。聖戦のルールにより、神器エインヘリャルが無効化されている今、死ぬというリスクはあります。ですが、私もエドゥも、そしてテオドールも強い。この件、ぜひ私たちに任せて欲しいのです」
そこまで真剣に言われてはな。
それに、古代魔導兵器を放置なんてしておけない。
詳しいことが分からない以上、ルドミラたちに任せる方が得策だ。
彼女達は長い歴史を生き、俺よりも知識が豊富だ。
ならば、ここは『勇者』に任せるべきだ。
「世界を救ってくれ、ルドミラ」
「ありがとうございます、ラスティくん。だから、好きですっ……!」
さらりと気持ちを言葉にされ、俺はドキっとした。ルドミラがこうして本心をぶちまけてくるのはなかったこと。あまりの不意打ちに顔が熱くなった。
一方の彼女も乙女のように照れていた。
……まったく、自分で言ったクセに。
「自分もラスティ様が好きです。だからラルゴを守りたい」
「エドゥ、俺もだよ。ありがとう」
そうだな、守りたいという気持ちは一緒なんだ。
納得しているとテオドールは咳払いして俺をみつめた。……な、なんだその視線。ちょっと気色が悪いぞ。
「ラスティ、私も君が……」
「ヤメロ」
「ちぇー。男からの好意は受け取らないのかよ。差別だー!」
「いや、単にキモイだけだ」
「ひでぇー、超ひでぇよぅ」
嫁が三人もいるクセに、メソメソするテオドール。なんでそうなる!?
……とにかくだ。
彼女達に世界の運命を託す。
その代わり、俺は聖戦の方をなんとかする。
「では、ラスティ様。自分たちはワープポータルで転移します」
「分かったよ、エドゥ。気をつけて」
「またいつか」
エドゥは立ち上がり、続くようにルドミラとテオドールも腰を上げた。
それからエドゥは『城塞都市コーラングレ』へのワープポータルを展開。そうか、座標を持っているんだな。
それなら意外と早いかもしれないな。
ルドミラとテオドールがワープポータルへ飛び込む。
最後にエドゥも光の柱の中へ消えた。
三人とも、世界を頼むぞ。
ドヴォルザーク帝国の皇帝を決める大イベントだ。
もし決まらなければ、権限が元老院に集中し帝国は崩壊。共和政に移行してしまう。それだけは阻止せねば、あのマルクスが全てを掌握してしまうだろう。
そうなれば、世界を支配されかねん。
「……さて、街の様子を見てみるか」
ベッドから立ち上がると、スコルが俺の腰に抱きついてきた。
「ラスティさん……どこへ行くんですかぁ……」
ぽけぽけとした表情でスコルは声を振り絞る。今日はなんか眠そうだな。
「ちょっと街へ行くんだ。ほら、聖戦が始まったし」
「そ、そうでしたね。では、わたしもご一緒するので」
「そうか。じゃあ、準備完了まで待つよ。大広間で待ってる」
「はいっ。でもその前に、おはようのキスは……?」
スコルは、目の前でキスをねだってくる。
すでに顔を近づけ、準備万端。
そう求められると嬉しくてたまらなかった。
俺は愛を込めてスコルにキスをした。
◆
廊下を歩き、大広間へ入った。
中には先客がいた。
なんか珍しい三人が座って待っていた。俺を待っていたのか……?
「ルドミラ、エドゥ、テオドール……どうした?」
この元勇者パーティがそろって待機しているとか、どうしたことか。みんななんか真顔というか、ちょっと怖いな。
俺は恐る恐る中へ。
「お待ちしておりました、ラスティくん」
「待っていた? ルドミラ、これはどういうことだ」
「話があるのです」
「ふむ……」
なら聞かないわけにはいかない。
きっと大切な話があるのだろう。
俺はいつもの自分の席に腰掛けた。
すると、エドゥが気を遣って紅茶とトーストを浮かせて俺の前に並べてくれた。
「どうぞ、ラスティ様」
「ありがとう、エドゥ。……で、どうしたんだ」
とりあえず、テオドールに話を振ってみた。
「ほら、昨日の古代魔導兵器のことさ」
「ああ……インドラか。あれを何とかしないと。でも聖戦が始まってしまった」
「そう、それが問題だ。どうするべきか昨晩、我等で話し合った」
「マジか」
「そこでね、私とルドミラ、エドゥの元勇者パーティでオラトリオ大陸の最北端・城塞都市コーラングレへ向かおうと思うんだ」
オラトリオ大陸の最北端・城塞都市コーラングレ?
噂には聞いたことがある。
カタナだとか温泉だとか“和風”が発展している『異国』だ。
普段は鎖国状態で入ることはできない場所と聞いている。
「まさか、古代魔導兵器を潰しに行くのか」
今度はルドミラに視線を送る。
彼女はうなずきながらも、毅然とした態度と眼差しで俺を見据える。この目は本気だな。もう長いこと彼女と過ごしているから自然と分かった。
「その通りです。一度は破壊したインドラ……復活したのなら、コーラングレにまた再設置されている可能性が高い。設計図が盗み出された可能性もあるのです」
「なんだって……!」
「ラスティくん。聖戦のルールにより、神器エインヘリャルが無効化されている今、死ぬというリスクはあります。ですが、私もエドゥも、そしてテオドールも強い。この件、ぜひ私たちに任せて欲しいのです」
そこまで真剣に言われてはな。
それに、古代魔導兵器を放置なんてしておけない。
詳しいことが分からない以上、ルドミラたちに任せる方が得策だ。
彼女達は長い歴史を生き、俺よりも知識が豊富だ。
ならば、ここは『勇者』に任せるべきだ。
「世界を救ってくれ、ルドミラ」
「ありがとうございます、ラスティくん。だから、好きですっ……!」
さらりと気持ちを言葉にされ、俺はドキっとした。ルドミラがこうして本心をぶちまけてくるのはなかったこと。あまりの不意打ちに顔が熱くなった。
一方の彼女も乙女のように照れていた。
……まったく、自分で言ったクセに。
「自分もラスティ様が好きです。だからラルゴを守りたい」
「エドゥ、俺もだよ。ありがとう」
そうだな、守りたいという気持ちは一緒なんだ。
納得しているとテオドールは咳払いして俺をみつめた。……な、なんだその視線。ちょっと気色が悪いぞ。
「ラスティ、私も君が……」
「ヤメロ」
「ちぇー。男からの好意は受け取らないのかよ。差別だー!」
「いや、単にキモイだけだ」
「ひでぇー、超ひでぇよぅ」
嫁が三人もいるクセに、メソメソするテオドール。なんでそうなる!?
……とにかくだ。
彼女達に世界の運命を託す。
その代わり、俺は聖戦の方をなんとかする。
「では、ラスティ様。自分たちはワープポータルで転移します」
「分かったよ、エドゥ。気をつけて」
「またいつか」
エドゥは立ち上がり、続くようにルドミラとテオドールも腰を上げた。
それからエドゥは『城塞都市コーラングレ』へのワープポータルを展開。そうか、座標を持っているんだな。
それなら意外と早いかもしれないな。
ルドミラとテオドールがワープポータルへ飛び込む。
最後にエドゥも光の柱の中へ消えた。
三人とも、世界を頼むぞ。
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