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勇者復活の日 Side:ルドミラ
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騎士団へ向かう最中、廊下でエドゥと偶然会った。
いや、多分偶然ではない。
あの目は私を心配している目だ。
「ちょっと待って……ルドミラ」
「珍しいですね、エドゥ」
その昔のエドゥは感情豊かで若者のような覇気があったけれど、今は感情が死んでいる。でもこれは彼女にとっての自然なのだ。
大賢者は魔力を常に消費している。
この島国ラルゴの守護、ダンジョンの維持、自然との対話、精霊との交信。いろいろとあるようだ。
そのせいで感情が殺されやすいらしい。
調子が良いと口調やテンションが変わるけど。
でも私はこっちの大人しい方がいい。
昔のパーティの時は騒がしくてたまらなかったからだ。
それに、エドゥはきっとラスティくんに良く見てもらいたいのだ。だから、こんなクールな対応をあえてしているのだろう。
「テオドールもいる」
物陰から現れるテオドール。自信に満ちた表情で私の顔を覗く。
「やあ、ルドミラ。こうして三人だけで揃うのは久しぶりだね」
「そうですね。それこそ魔王ドヴォルザーク討伐時代ぶりでしょうか」
「そうだね。懐かしいよ」
初回の『聖戦』が始まる頃。
私が勇者として立ち上がって一年後のことだ。
世界が混沌に満ちた時代。
聖魔大戦と呼ばれたあの時代。
ルサルカ大陸・共和政ドヴォルザークにいたあの時、私は大賢者エドゥアルドを仲間に入れた。
それから、テオドールもグラズノフ共和国で拾った。
「今は忙しくてなかなか三人の時間が作れません。貴重です」
「なら、少し話そう」
「……なにをです?」
「まあ、エドゥからの提案なのだけどね」
微笑むテオドールは、エドゥの背中を優しく押す。普段はお調子者のクセに、こういう時は真面目だ。
「ルドミラ……。古代魔導兵器インドラについて話がある」
「アレですか。確かに私もその件は気になります」
「うん。古代魔導兵器は破壊したはず」
そうだ。一度だけ使われ、壊滅的な被害を受けた。
その影響が絶大あることを危惧した当時の元老院は、私に古代魔導兵器の破壊の依頼をしてきた。
私も当然、それには同意。
オラトリオ大陸の最北端・城塞都市コーラングレに設置されているという情報を入手。
私たちはそこへ向かい、待ち受けていた魔王軍の大幹部にしてエルフの“フス”を撃破。そして、兵器もろとも木っ端微塵にした。
――はずだった。
「おかしいですね。二つ目があったということでしょうか」
「恐らくだけど『設計図』があると思う。それを基に古代魔導兵器を復活させたと推測する」
そういうことか。確かにそれなら納得できる。
ただ、開発には膨大な資金と材料が必要になるから、今までは作られなかった。だが、時代は変わり、今なら作ることも可能となった。
そう考えれば魔導兵器復活も自然か。
「私もエドゥに同意見でね。信憑性が高いと思っているよ」
「テオドール、あなたもそう思うのですね」
「ああ。多分、城塞都市コーラングレのあの場所にあるんじゃないか?」
「かもしれません」
「それをラスティに話すんだ」
「でも、聖戦が」
「それよりも世界の危機だろう。君は勇者を引退していない」
「……テオドール」
魔王が消え去っても、私は正式に勇者を引退したわけではなかった。レオポルド騎士団の騎士団長にはなったことがあるけれど、それは一時的なもの。
聖剣と神器エインヘリャルを魂に宿す限り、私は永遠に勇者のままなのだ。
でなければ、私はとっくに伝説の人物になっている。
しかし、私たちは未だに存命している。
使命があるからだ。
「ルドミラ、自分たちだけでも向かいましょう」
「いいのですか、エドゥ」
「過去に何度も世界を救ってきた。それが自分たちの存在理由」
「……そうでしたね」
ならば、古代兵器のことを詳しくラスティくんに話さねばならない。
あとは主が許可を下してくれれば――。
いや、多分偶然ではない。
あの目は私を心配している目だ。
「ちょっと待って……ルドミラ」
「珍しいですね、エドゥ」
その昔のエドゥは感情豊かで若者のような覇気があったけれど、今は感情が死んでいる。でもこれは彼女にとっての自然なのだ。
大賢者は魔力を常に消費している。
この島国ラルゴの守護、ダンジョンの維持、自然との対話、精霊との交信。いろいろとあるようだ。
そのせいで感情が殺されやすいらしい。
調子が良いと口調やテンションが変わるけど。
でも私はこっちの大人しい方がいい。
昔のパーティの時は騒がしくてたまらなかったからだ。
それに、エドゥはきっとラスティくんに良く見てもらいたいのだ。だから、こんなクールな対応をあえてしているのだろう。
「テオドールもいる」
物陰から現れるテオドール。自信に満ちた表情で私の顔を覗く。
「やあ、ルドミラ。こうして三人だけで揃うのは久しぶりだね」
「そうですね。それこそ魔王ドヴォルザーク討伐時代ぶりでしょうか」
「そうだね。懐かしいよ」
初回の『聖戦』が始まる頃。
私が勇者として立ち上がって一年後のことだ。
世界が混沌に満ちた時代。
聖魔大戦と呼ばれたあの時代。
ルサルカ大陸・共和政ドヴォルザークにいたあの時、私は大賢者エドゥアルドを仲間に入れた。
それから、テオドールもグラズノフ共和国で拾った。
「今は忙しくてなかなか三人の時間が作れません。貴重です」
「なら、少し話そう」
「……なにをです?」
「まあ、エドゥからの提案なのだけどね」
微笑むテオドールは、エドゥの背中を優しく押す。普段はお調子者のクセに、こういう時は真面目だ。
「ルドミラ……。古代魔導兵器インドラについて話がある」
「アレですか。確かに私もその件は気になります」
「うん。古代魔導兵器は破壊したはず」
そうだ。一度だけ使われ、壊滅的な被害を受けた。
その影響が絶大あることを危惧した当時の元老院は、私に古代魔導兵器の破壊の依頼をしてきた。
私も当然、それには同意。
オラトリオ大陸の最北端・城塞都市コーラングレに設置されているという情報を入手。
私たちはそこへ向かい、待ち受けていた魔王軍の大幹部にしてエルフの“フス”を撃破。そして、兵器もろとも木っ端微塵にした。
――はずだった。
「おかしいですね。二つ目があったということでしょうか」
「恐らくだけど『設計図』があると思う。それを基に古代魔導兵器を復活させたと推測する」
そういうことか。確かにそれなら納得できる。
ただ、開発には膨大な資金と材料が必要になるから、今までは作られなかった。だが、時代は変わり、今なら作ることも可能となった。
そう考えれば魔導兵器復活も自然か。
「私もエドゥに同意見でね。信憑性が高いと思っているよ」
「テオドール、あなたもそう思うのですね」
「ああ。多分、城塞都市コーラングレのあの場所にあるんじゃないか?」
「かもしれません」
「それをラスティに話すんだ」
「でも、聖戦が」
「それよりも世界の危機だろう。君は勇者を引退していない」
「……テオドール」
魔王が消え去っても、私は正式に勇者を引退したわけではなかった。レオポルド騎士団の騎士団長にはなったことがあるけれど、それは一時的なもの。
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でなければ、私はとっくに伝説の人物になっている。
しかし、私たちは未だに存命している。
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「ルドミラ、自分たちだけでも向かいましょう」
「いいのですか、エドゥ」
「過去に何度も世界を救ってきた。それが自分たちの存在理由」
「……そうでしたね」
ならば、古代兵器のことを詳しくラスティくんに話さねばならない。
あとは主が許可を下してくれれば――。
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