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共和政ドヴォルザークの復活

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「兄上、どうするのだ……?」

 ハヴァマールが心配そうに俺の服を引っ張ってきた。
 このままでは島国ラルゴが巻き込まれる。
 いや、すでに遅いのか……?

「元老院議長マルクスを止めるしかない」
「でも、どうやって? 向こうには、ルサルカさんの母上がいるのだ」
「む、むぅ……」


 実力行使に出れば、それはそれで外交問題に発展――か。
 いやしかし、そんな甘いことを言っている場合だろうか。島国の存亡に関わる問題だ。
 ルサルカさんには悪いけど……。

 俺は元老院議長マルクスにハッキリ言うことにした。


「マルクス、島国ラルゴから出て行ってくれ」
「……ほう。交渉のテーブルにはつかないと……?」

 ギロッと鷹のような目で睨まれる。
 な、なんて迫力だ。
 だが、ここで狼狽えれば隙を見せると同義。対等ではなくなる。

「そうだ。ルサルカさんの母親が本当に存在するか眉唾でもある」
「なるほど。信じられないというわけか」
「当然だ。本当に船に乗っているのなら、まずは会わせてもらおうか」

 まずは確かめる必要がある。
 それから次のプランを考える。それでいい。

「いいだろう。そこまで言うのなら信じさせてやろう」

 ニヤリとマルクスは笑う。
 コイツ、最初からそのつもりで……やっぱりいるんだ。

 しばらく待つと船の中から人影が現れて、ゆっくりと船から降りてきた。
 橋を渡りこちらへ向かってくるドワーフの女性。

 ま、まさか……本当に実在したのか……。

 ルサルカさんも、その人物に釘付けだった。


「お、お母さま……?」
「ルサルカ……ルサルカなの!?」


 母親らしき人物は、ルサルカをぎゅっと抱きしめていた。涙して再会を喜んでさえいた。……つまり、本当に親子というわけか。


「どうかな、ラスティ」
「……信じるしかないわけか」

「そういうわけだ。ならば、この島国ラルゴも無関係とはいくまい」
「そう、だな。聖戦に参加する権利があるわけか」
「というよりは強制参加だ」
「なんだって……?」

「そもそも、ドヴォルザーク帝国はこの島国ラルゴを“承認”した覚えがない。……まあ、グラズノフ共和国はしたかもしれんが、帝国は違う。陛下が不在であった以上は我々元老院が最高権力を持つわけだ」

 勝ち誇ったかのようにマルクスは顎をしゃくる。
 承認か、確かにそういう手続きはなかった。
 世界が認めただけに過ぎない。
 でも、少なくともグラズノフ共和国には承認は貰っている。

 それだけでは足りないというわけか。


「マルクス、お前の目的はなんだ」
「よくぞ聞いてくれた。我々元老院が再びトップに立つ」
「なんだって?」
「聖戦は皇帝を決めるイベント。しかし、王位継承権の持つ者がいればそれは無効となる」

「無効……だと」

「たった今、ルサルカという隠し子が判明した以上は聖戦は中止となるだろう。だが、彼女が放棄すれば……例外。その場合は、聖戦そのものも消滅する」

「なぜだ!」

「聖戦は一度だけの神聖なもの。もし、皇帝が選定されない場合『元老院』へ権利が移されるのだよ」

「……! ふざけんな!」

「ふざけてなどいない。ドヴォルザーク帝国はもともと『共和政』だったのだ。つまり、そう……“共和政ドヴォルザーク”の復活だ……!」


 共和政ドヴォルザーク!?
 し、知らなかったぞ……。

 俺は思わずアルフレッドの方へ向いた。

 すると。


「ラスティ様、そうです。帝国は遥か昔は『共和政』だったのです」


 し、知らなかった……!
 俺、勉強が苦手だからなぁ。
 もう少し歴史を学んでおくべきだった。

 焦っているとルドミラからも心配の声が掛かった。


「も、もしや……御存知なかったので?」
「すまん、ルドミラ」

「なんと、ラスティくんにも知らないことがあったのですね。ちなみに、私は神器エインヘリャルで長く生きているので共和政時代も見たことがあります」


 となると、エドゥとテオドールも一緒か。
 二人ともウンウンと頷いていた。
 不老不死とは便利でいいな。

 ともかく、マルクスの狙いは『共和政ドヴォルザーク』の復活というわけか……。ようやく読めてきた。なぜ、わざわざ元老院がラルゴにやって来たのか。
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