無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗

文字の大きさ
上 下
283 / 476

神器・グレイプニール Side:セイン

しおりを挟む
 ラスティ様が闇に飲まれて姿を消したあと、僕は必死に抵抗していた。

「スコル様だけでもお逃げください!」
「で、でも……ラスティさんが」
「彼はきっと生きています。信じましょう」
「そうですね。でも、せめてセインさんだけでも逃げてください」

 そう言ってスコル様は、本を召喚した。
 見たこともない分厚い本だ。
 神聖な魔力を感じ、ただの本ではないことを僕は理解した。

「そ、それは……?」
「これは“世界聖書”です。不思議な力を秘めているんですよ」
「まさか!!」
「この本の力を使えば、セインさんを助けるくらいできるはず」

 本から魔力が流れ始め、白い光が僕を包んだ。
 優しく包まれるような感覚。
 なんだか懐かしい匂い。


 気づけば僕は知らない場所にいた。


「……こ、ここは?」


 なにもない真っ白な空間だ。歩いても果てはない。なんなんだここは……!


『お困りのようだね、少年』
「!? だ、誰ですか!」

 突如として声が反響した。
 渋い男性の声だった。
 警戒していると、その声の主は姿を現した。


『この世界に人間――いや、ハーフエルフがやってくるとはな』


 目の前に白髪白髭の老人が現れた。賢人のような服装に身を包むエルフだ……。


「あなたは……?」
「ワシの名はヴァーツラフ・ズロニツェ。この聖書の住人でね」
「ヴァーツラフ!? 守護聖人様!?」

 驚いた。
 目の前にいるのは守護聖人と呼ばれる偉大なエルフ。ボロディン初代の“聖者”だ。

「驚いたかね、少年。ふぉっふぉっふぉ……いやしかし、来客とは非常に珍しい。ありえないと言っても過言ではない」

 まるで珍獣でも見るかのように、守護聖人様は僕を観察した。まさか、こんな偉大な人に出会えるだなんて思わなかった。
 そもそも、彼はもう数百年前にこの世を去っている。死んだと思われていた。なのに、ここにいた。

「ずっとこの世界におられたんですか?」
「その通り。ワシの肉体は滅びても、魂はこの世界聖書の中に留まった。だが、今までは魔王ドヴォルザークの力に押さえつけられ、自由がなかったのだよ」

「魔王ドヴォルザークの?」
「うむ。世界を混沌に陥れた恐ろしい魔王よ。だから、この世界聖書に封印したのだが、ヤツは機会を伺い、帝国の皇帝となったのだ。それからは分かるな?」

「ラスティ様、ですね」

「そうだ。彼が世界を救った。しかし、今また偽の聖者にしてダークエルフのトルクァートが世界の支配を目論んでおる」

「御存知だったのですね!?」
「当然だ。ワシは世界聖書そのもの。暇なのでな、外界をよく覗いでおるのだよ」


 守護聖人様は、微笑みながらも手をかざし、目の前に椅子と机を召喚した。座れと言われ、僕は従った。


「あ、あの……守護聖人様。ラスティ様とスコル様を助けたいんです!」
「であろうな。だが、今のお前では無理だ」
「……力不足なのは重々承知しております。でも、それでも……僕は戦いたい」
「無論、ワシも黙って娘の不幸を傍観するわけにはいかん。そこでだ……セイン、お前を“真の聖者”として認めよう。この神器『グレイプニール』を受け取るがよい」

「グ、グレイプニール……! って、これ……ただのヒモ・・・・・ですよ!?」

「見た目はただのヒモだが、これを巻きつければお主の力は十倍、百倍となろう」


 ……こ、こんなヒモで?
 とてもじゃないけど、信じられない。
 けど、守護聖人様がそう言うのだから……使ってみるしかない。

 僕はグレイプニールを受け取り、腕に巻きつけた。

 すると、力が湧き出るような物凄い魔力を感じた。


「……!?」
「そう、それこそがグレイプニールの力。聖者セイン、お前ならボロディンを救える。任せたぞ」
「ありがとうございます、守護聖人様!」
「では、そなたを外の世界へ還す。……ああ、そうだ。娘に……いや、なんでもない」
「伝えておきますよ! お父上様が見守っていると」
「……セイン、そなたの真っ直ぐな心は、まさに聖者に相応しい。さあ、行け……!」

 再び光が僕を包む。
 これでユーモレスク宮殿へ戻れる。
 凄い力を手に入れた今の僕なら、トルクァートを倒せる……!
 ラスティ様のお力になれるし、ボロディンだって救えるんだ。

 この聖者の力で。
しおりを挟む
他にも作品を連載しています↓
作品一覧

無人島Lv.9999は他のサイトでも掲載中です↓
なろう版:【無人島Lv.9999
カクヨム版:【無人島Lv.9999
感想 14

あなたにおすすめの小説

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。 魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。 『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...