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エルフの国ボロディン乗っ取り事件
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襲い掛かってくる暗闇。
こんな不気味なモノに飲まれたら、どうなるか分からない。
二人を守るために俺は風属性魔法・サンダーブレイクを全力で放つ。
「これで……!! なっ!!」
「無駄ですよ、ラスティさん。このスキルを消滅させることは不可能です」
俺のサンダーブレイクがすり抜けてしまった。
トルクァートのこのスキルはいったい、なんなんだ……?
くそっ、二人だけでも助けるしか!
けれど俺はトルクァートの暗闇に飲まれてしまった――。
「ラスティさん!!」
スコルの叫び声を最後に、俺は意識を失った。
* * *
血の生臭い臭いで俺は目覚めた。
なんだここは……。
薄暗い場所だ。まるで井戸の中のような、そんな湿気さえあった。
「――ッ」
俺はいったいどうなった。
トルクァートの攻撃を受けて……それで?
『…………目覚めたか、小僧』
ふと声がした。ずいぶんと歳を重ねていそうな女性の声だ。この闇の奥にいるのか……?
「あんた、誰だ……?」
闇に問うと、その中からズシン、ズシンと大きな足音を立ててオークが現れた。……な、なんで大きさだ。大人の身長の三倍……いや、五倍はあるだろうか。
オークマザーが大人の女性ほどだった。
ということは……まさか!
「察したついたようだな。そう、余はオーククィーンよ」
やはりオーククィーン!!
そうか、俺はオークの巣に飛ばされたんだ。あのトルクァートの力で……。つまりあの“暗闇”は『転移スキル』だったんだ。それで俺のサンダーブレイクはすり抜けてしまったんだ。
転移スキルを無効にはできないからな。
――それにしても、まさかオーククィーンの前に出ちまうとはな。
「俺を食う気か?」
「食う? 違う、違うぞ。男子は皆、オーク族の繁栄の為に子種を供給しつづけてもらう。特にお前のような若い男は新鮮で極上よ」
「だからエルフの国ボロディンを襲っているのか。男のエルフはさらい、女のエルフは殺すってわけか!」
「そうとも。人間と違い、エルフは魔力が桁違いよ。男のエルフから搾り取り、オークを増やせば我々はどんどん強くなる。やがて余は、魔王となれよう」
それが目的なわけか。
しかし腑に落ちん。
あのトルクァートがなぜ、オークの巣への座標を持っていたのか。いや、まさか……コイツ等、繋がっているのか。
「おい、あんた。トルクァートという男を知っているか。聖者とか名乗ってる」
「トルクァートか。……フ、フハハハハハハ!!」
豪快に笑うオーククィーン。
この反応、知っているようだな。
「なにか取引を?」
「どうせお前はもう逃げられないんだ。教えてやろう……トルクァートは『ダークエルフ』よ」
「な……ダークエルフだと!?」
「そうか、知らなかったのか。それもそうだろうな、あの男は自らを聖者と自称し、ボロディンを乗っ取った。大神官アルミダが失脚したのが運の尽きよ。トルクァートは、ずっと機会を伺っていた。そして、我々オーク族との取引に応じてくれた」
トルクァートがダークエルフだったとはな。ずっと純粋なエルフを詐称してボロディンに紛れていたんだ。魔族だから、オークと取引できるのも納得だ。
「なら、オークもトルクァートも潰さなくっちゃな」
「潰すだと? いいのか、ここには男のエルフが何百といるのだぞ」
周囲が薄っすらと明るくなる。
すると、壁に張り付けられている男エルフがたくさんいた。鎖であんなに繋がれていたのか……!
俺も同様に強固な鎖で繋がれていることに気づいた。
「……た、助けてくれ」
「もう……オークの相手をしたくない……」
「うぅ……苦しい……」
「アリサ……アリサに会いたい……」
「だれか……俺を……コロしてくれ……」
男エルフの呻き声が響く。
みんな苦しそうだ。
こんなのは間違っている。
こんなのを許せるはずがない。
「オーククィーン、お前を倒す!!」
「倒すぅ!? 鎖に繋がれているお前になにが出来るというのだ!!」
俺には『無人島開発スキル』があるのさ……!
こんな不気味なモノに飲まれたら、どうなるか分からない。
二人を守るために俺は風属性魔法・サンダーブレイクを全力で放つ。
「これで……!! なっ!!」
「無駄ですよ、ラスティさん。このスキルを消滅させることは不可能です」
俺のサンダーブレイクがすり抜けてしまった。
トルクァートのこのスキルはいったい、なんなんだ……?
くそっ、二人だけでも助けるしか!
けれど俺はトルクァートの暗闇に飲まれてしまった――。
「ラスティさん!!」
スコルの叫び声を最後に、俺は意識を失った。
* * *
血の生臭い臭いで俺は目覚めた。
なんだここは……。
薄暗い場所だ。まるで井戸の中のような、そんな湿気さえあった。
「――ッ」
俺はいったいどうなった。
トルクァートの攻撃を受けて……それで?
『…………目覚めたか、小僧』
ふと声がした。ずいぶんと歳を重ねていそうな女性の声だ。この闇の奥にいるのか……?
「あんた、誰だ……?」
闇に問うと、その中からズシン、ズシンと大きな足音を立ててオークが現れた。……な、なんで大きさだ。大人の身長の三倍……いや、五倍はあるだろうか。
オークマザーが大人の女性ほどだった。
ということは……まさか!
「察したついたようだな。そう、余はオーククィーンよ」
やはりオーククィーン!!
そうか、俺はオークの巣に飛ばされたんだ。あのトルクァートの力で……。つまりあの“暗闇”は『転移スキル』だったんだ。それで俺のサンダーブレイクはすり抜けてしまったんだ。
転移スキルを無効にはできないからな。
――それにしても、まさかオーククィーンの前に出ちまうとはな。
「俺を食う気か?」
「食う? 違う、違うぞ。男子は皆、オーク族の繁栄の為に子種を供給しつづけてもらう。特にお前のような若い男は新鮮で極上よ」
「だからエルフの国ボロディンを襲っているのか。男のエルフはさらい、女のエルフは殺すってわけか!」
「そうとも。人間と違い、エルフは魔力が桁違いよ。男のエルフから搾り取り、オークを増やせば我々はどんどん強くなる。やがて余は、魔王となれよう」
それが目的なわけか。
しかし腑に落ちん。
あのトルクァートがなぜ、オークの巣への座標を持っていたのか。いや、まさか……コイツ等、繋がっているのか。
「おい、あんた。トルクァートという男を知っているか。聖者とか名乗ってる」
「トルクァートか。……フ、フハハハハハハ!!」
豪快に笑うオーククィーン。
この反応、知っているようだな。
「なにか取引を?」
「どうせお前はもう逃げられないんだ。教えてやろう……トルクァートは『ダークエルフ』よ」
「な……ダークエルフだと!?」
「そうか、知らなかったのか。それもそうだろうな、あの男は自らを聖者と自称し、ボロディンを乗っ取った。大神官アルミダが失脚したのが運の尽きよ。トルクァートは、ずっと機会を伺っていた。そして、我々オーク族との取引に応じてくれた」
トルクァートがダークエルフだったとはな。ずっと純粋なエルフを詐称してボロディンに紛れていたんだ。魔族だから、オークと取引できるのも納得だ。
「なら、オークもトルクァートも潰さなくっちゃな」
「潰すだと? いいのか、ここには男のエルフが何百といるのだぞ」
周囲が薄っすらと明るくなる。
すると、壁に張り付けられている男エルフがたくさんいた。鎖であんなに繋がれていたのか……!
俺も同様に強固な鎖で繋がれていることに気づいた。
「……た、助けてくれ」
「もう……オークの相手をしたくない……」
「うぅ……苦しい……」
「アリサ……アリサに会いたい……」
「だれか……俺を……コロしてくれ……」
男エルフの呻き声が響く。
みんな苦しそうだ。
こんなのは間違っている。
こんなのを許せるはずがない。
「オーククィーン、お前を倒す!!」
「倒すぅ!? 鎖に繋がれているお前になにが出来るというのだ!!」
俺には『無人島開発スキル』があるのさ……!
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