無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗

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古代の魔法石【エンシェントストーン】

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 しばらくするとトレニアさんが戻ってきた。美味しそうなティーセットを持って。

「はい、どうぞ。ラスティ様。それとアルフレッドさんも」
「ありがとう、トレニアさん」

 俺はカップを受け取り、香りを楽しんだ。
 これはドヴォルザーク帝国の紅茶だな。
 よく飲んでいたから分かる。

「私の分までわざわざありがとうございます」

 普段は給仕しているアルフレッドが今日はくつろいでいた。たまにはいいだろう。人間、適度に体を休めないと壊れてしまう。無理はよくない。

「ところで殺人ギルドの件ですが……」

 トレニアさんが例の件を気にしていた。
 そうか、この冒険者ギルドでも噂になっていたんだ。当然だろうけど。
 となると安心させてやる為にも教えてやった方がいいな。

「その件は片付いた。海底ダンジョンに二人の犯罪者がいた。でも、俺が片付けたからもう安心だよ」
「そうでしたか。さすが、ラスティ様です……!」

 キラキラした瞳で見られ、俺は少し照れた。

「だ、だからね、これからは島の開発を進めていこうと思うよ。このギルドはどうだい?」
「おかげ様で毎日忙しいですよ~。皆さんダンジョン攻略に躍起で、やりがいがあります。ただ、人手不足なので人員スタッフが欲しいところですね」

「その問題は解決してやりたい。ちょっと考えてみるよ」
「ありがとうございます、助かります!」

 彼女には随分とお世話になっている。普段のお礼の為にも、なにかしてやりたい。

「こちらこそ。他には困っていることはないかい?」
「他に、ですか。う~ん……あ、そうです! ……ですが」

 手を叩くトレニアさんは何か思い出したようだ。けど遠慮気味だな。しかし、島の主としては見過ごせない。というか、トレニアさんの願いならなんでも叶えてやりたい。

「なんでも言ってくれ」
「本当に良いのですか?」
「まずは聞いてみてから」
「……分かりました。実は『古代の魔法石エンシェントストーン』が欲しいんです!」

 聞いたことのないアイテム名に、俺は頭上にハテナを浮かべた。

古代の魔法石エンシェントストーン?」
「そうなんです。その魔法石があればワープポータルの触媒が“無限”になるんですよー!」

 そういえば、ワープポータルのスキルを使うには触媒が必要だ。通常、ルーンストーンを使う。それが意外にも高価なんだよな。
 賢者が作り出すものらしいが、沢山は作れないので流通量が限られているようだ。
 だが、トレニアさんの言う『古代の魔法石エンシェントストーン』が一個あれば、無限にワープポータルが使えるようだ。

 それどころがストーン系触媒のスキルでは、ルーンストーンが不要になるらしい。なにそれ、便利すぎる!

「へえ、そんな石があればコストを抑えられるよな」
「だから欲しいのですよ~。ルーンストーンは十個セットで、ヴォルムゼル銀貨一枚も必要なんです……」

 銀貨一枚だって!?
 結構高いな。

 騎士が使うロングソード二本は買えるぞ。

「それだけで赤字になっちゃうな」
「はい。だから欲しいのです。しかも、グラズノフ共和国の幻影ダンジョンにしか存在しないんです」

「グラズノフ共和国だって? マジか」
「しかも高レベルでないと攻略が難しいのです」

「ふむ。分かった、トレニアさんの悩みを解決しよう」
「本当ですか!?」
「もちろんだよ。ちょうどブレアに挨拶をしようとも思っていたし、俺が行ってくる」
「わぁ、ありがとうございます。ラスティ様は本当にお優しい」

 ぎゅっと手を握られ、俺は顔が熱くなった。
 ……こ、これは恋してしまう。

 アルフレッドのヤツ、ニヤニヤとこっちを見ている。……頼むから、スコルには言わないで欲しいが。

 要望を聞き終わったところで、俺はギルドを後にした。

「じゃ、またね」
「今晩は楽しかったです、ラスティ様」
「ああ、こっちも話せて良かった」

 手を振って別れ、俺とアルフレッドは城へ。
 その道中、アルフレッドが話しかけてきた。

「トレニア様は、美人で可愛いですなぁ」
「そ、そうだな」
「とても良い雰囲気でした」
「……かもな」
「彼女のラスティ様を見る目、まるで恋する乙女のようでした」

 そ、そんなはずはない……と、思いたいが。まさかな。


 城へ戻り、俺はそのまま部屋へ戻った。アルフレッドも眠たそうに戻っていく。もう良い時間だ。また眠ろう。


 自室へ戻ると、人の気配があった。


「……ラスティさん!」
「げっ、スコル! いつのまに俺のベッドに」
「とても心配したんですよ。どこへ行っていたんですか!?」

 涙目で俺を見つめるスコル。
 まさかずっと待っていたのか?
 いつから?

「ちょっと夜道を散歩しただけだ。ごめんごめん」
「寂しかったです……」
「す、すまん。ほら、一緒に寝よう」

 スコルを抱き寄せ、そのままベッドへ落ちた。スコルはぷくっと膨れて不機嫌気味。でも、大丈夫。こういう時には頭を撫でる!

「……ラスティさん、もう一人にしないでくださいね」
「悪かった。次は起こすようにするよ」
「お願いしますね。わたしは……ラスティさんと一緒が……いいんです」

 俺の胸の中で眠るスコル。
 安心した顔を見せてくれている。

 ……俺も寝よう。
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