上 下
237 / 436

帝国の終焉と上級監督官の誕生

しおりを挟む
 ドヴォルザーク帝国と神聖王国ガブリエルの戦争は終わった。
 俺たちは戦場から撤退。
 帝国へ戻った。

 スターバトマーテル城へ帰還すると、スケルツォが出迎えてくれた。

「ご無事でなによりです、ラスティ様」
「もう耳に届いているかもしれないが、戦争は終わった」
「ついに終わったのですね」
「ああ、後の処理はルーシャスに任せる」

 納得するスケルツォ。
 俺は明日にはラルゴへ戻ると伝えた。

「そんな、ラスティ様……皇帝になられるのでは」
「この国に皇帝は必要ない。このシベリウスを上級監督官に任命する」

 俺が指定すると、シベリウスは驚いて声を上げた。絶叫さえしていた。


「なにいいい!? この僕が!?」
「この国はもう帝国ではない。お前が統治するんだ」
「な、な、なぜ……ラスティが相応しいだろ!」
「俺には島国がある。それで十分なんだよ」
「しかしだな」

 焦りまくるシベリウス。
 確かに、門番ばかりやらされていたコイツには荷が重すぎるかもしれない。けど、親友だからこそ頼みたいと思った。
 なによりも、あのアルフレッドの息子だからな。

「お前になら出来るはずだ」
「……分かった。そこまで言うのなら、僕が受け持つ」
「頼んだぞ、シベリウス」

 全権をシベリウスに託した。きっと彼なら良い国にしてくれるはずだ。なぁに、スケルツォもいるし実際の仕事は彼女がほとんどやってくれる。

「スケルツォもよろしく頼む」
「それがラスティ様の望みであるのならば」
「期待しているぞ」
「……はい。ところで、ルドミラをお借りしたいのですが」

 ビクッと反応するルドミラは、一歩引いていた。なんだ、スケルツォと顔見知りだったんだ。それもそうか。もともとルドミラはドヴォルザーク帝国の騎士団長をしていたんだから。


「きゃ、却下です! 私はもうラスティくんのモノですから」
「つれないですね、ルドミラ。以前はあんなにも――」
「それ以上言わないでいただきたいっ!!」

 顔を真っ赤にするルドミラは、スケルツォの口を塞ごうと必死になる。なんだか、訳ありのようだな。

「あの~、ルドミラさんってスケルツォさんと何かあったんでしょうか?」

 俺の耳元で囁くスコル。
 あったんだろうな~。
 察するに深い関係が。


 * * *


 疲れたので俺は温泉へ。
 ずっと動きっぱなしで疲労が溜まっていた。
 ゆっくりと露天風呂に浸かっていると、扉から人の気配が。……って、誰か入ってきた!

「お邪魔するのだ、兄上」
「ハヴァマールか。おいおい、男の俺が入浴中だぞ」
「兄妹なのだから何も問題ないのだ!」
「それもそうか」

 ラルゴ産の水着を着ているし、これなら大丈夫だ。
 安心していると隣にハヴァマールがやってきた。
 猫耳をピョコピョコさせて上機嫌らしい。

「そ、その、兄上……お疲れ様なのだ」
「ありがとう、お前のおかげだ」
「余は何もしていない。兄上にもう少し貢献したかったのだ」

 残念そうにしているハヴァマールだが、それは違う。

「ハヴァマールの力がなかったら、俺はニールセンに勝てなかった」
「え……」
「無人島開発スキルも、聖槍グングニルも……そして、新たな武器・ヴェラチュールもお前がくれたものだ。だから、ありがとう」

 感謝を伝えるとハヴァマールは、顔を真っ赤にして湯の中へ。ぶくぶくと湯を吹かしていた。ま、まさか照れた?

「…………」

 こりゃ、しばらく戻って来そうにないな。
 どうしようか悩んでいると扉の向こうから、更に来客が。
 あれはスコル。それにストレルカやルドミラまで。


「お邪魔しますね、ラスティさん」
「おぉ、可愛い水着だな」
「えへへ~」

 花柄のビキニとは素晴らしいアイテムだな。
 防御力はかなり低いけど、それがいい。
 やはりスコルは素晴らしいスタイル。
 エルフは美に富んでいる。

 けど、ストレルカもさすがだ。
 貴族出身だけあって優雅だ。
 気品あふれるボディは、男を魅了する。
 気持ちが落ち着かなくなるな。いい意味で。

「私はいかがでしょうか」
「いや、ルドミラはいつもと変わらないじゃん」
「そんなッ!」

 ショックを受けるルドミラだが、お前はいつもビキニアーマーだろう。だから、新鮮味がなさすぎて反応に困った。


「残念でしたね、ルドミラ様。やはり、わたくしのような優雅さないと。そうでしょう、ラスティ様」

 目の前に素晴らしい谷間モノを強調してくるストレルカ。……うっ、鼻血が出そうだ。
 俺は鼻を押さえて耐えた。


「――ぷはぁっ、限界なのだぁ~!」
「うわ!?」


 そういえば、ハヴァマールがいたの忘れていた。


「ハヴァマールさん! いつの間に」
「おぉ、スコル。余は先に兄上とお風呂に入っていたのだ」
「そうだったんですね。姿が見えないと思ったら……」
「スコルたちも入るのだ。兄上を囲むのだ」

 みんなが露天風呂に入ってくる。
 ハヴァマールが言ったように俺を囲んできた。
 これでは逃げられないではないか!

 いや、けど……これは嬉しいというか。
 ご褒美的な?


「ラスティさん、肩をお揉みします」
「あ~、スコルさんずるいです。わたくしだって、ラスティ様の腕とかマッサージしますから」

 スコルとストレルカが俺を巡ってマッサージをし始めた。これは気持ちいな。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。 そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。 幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。 だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。 はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。 彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。 いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...