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開かれし世界聖書・解き放たれた魔物たち
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ニールセンを倒す方法はただひとつ。ヤツから『世界聖書』を奪うしかない。そして、スコルに読ませて心臓を取り出す。破壊して殺すしかないということだ。
「ミカエル、ここから先は俺ひとりで行く」
「そ、そんな無茶な……」
「無茶でもやるしかない。スコルとハヴァマールも分かってくれるか?」
視線を向けると、案の定二人とも不満顔だった。
「ラスティさん!」
「兄上!!」
「二人とも分かってくれ。これ以上は危険すぎるんだ」
それでもスコルもハヴァマールも食い下がった。
「だめです。ラスティさんに万が一があったら……わたし、生きていけません」
「そうなのだ。兄上がいなくなったら皆困る! よ、余だって……泣く」
既に目尻に涙を溜めるハヴァマール。
ここまで思ってくれるなんて……俺は幸せ者だ。だからこそ、守りたい。
「ミカエル、ひとつ聞きたい」
「なんでしょう」
「俺も出来る限り二人を守る。でも……」
「分かりました。命に代えてもスコルさんとハヴァマールさんをお守り致しましょう。それでいいですね」
「ああ、頼む。その代わり、神聖王国は任せた」
「それで構いません」
交渉は成立した。
ミカエルにスコルとハヴァマールの守護を守ってもらう。もちろん、可能な限りは俺が守るけどな。
決まったところで、また濃霧の中へ戻っていく。
きっとどこかにニールセンがいるはずだ。
気配を探りながら歩く。
かなり歩いて――やがて、なにかの気配を感じた。これは、まさか。
その先には……。
「…………」
地面に倒れているシベリウスの姿があった。……な、なんだ。ボロボロだぞ。
「シベリウス!! お前、なんでこんな……瀕死じゃないか」
「…………お、遅かったじゃねぇか、ラスティ。僕としたことがヘマをした……」
「誰にやられた! それにお前は戦場にいたはずだ」
「ニ、ニールセンだ。奴が突然こっちの陣地に姿を現しやがったんだ。ラスティ、お前の仲間を狙ってな……。元副団長のエドゥアルド殿がストレルカ嬢を守ってくれたが……しかし、ヤツの力は圧倒的だった。そこで僕がヤツの気を引くために……ぐッ」
「もう喋るな、シベリウス……死ぬぞ!」
シベリウスの腕や足の骨が折れていた。えぐらるような傷跡も酷い。彼を殺さなかったのは俺に対する挑戦であり、警告でもあるのか。
いや、そんなことよりも俺はスコルにヒールを頼んだ。
「い、急いでシベリウスさんを治癒しますね」
「分かった、頼む」
シベリウスの傍に座るスコルは両手をかざし、ヒールを発動した。これで少しは……。
くそっ、まさか陣地に現れるなんて……
「兄上、このままでは戦況が悪くなるのだ。一刻も早くニールセンを撃破せねば」
「ああ……俺の親友に大怪我させた罪は重い。ハヴァマール、ここでスコルとシベリウスを見守ってやってくれ。ミカエル、守護を」
うなずくミカエル。
この場は彼女に任せよう。
俺はニールセンを叩く。
この近くにいるはずなんだ。
瞼を閉じ、周囲の気配を捉えていく。ヤツは濃霧に紛れてこちらの様子を伺っているはずだ。
……シベリウスがやられて、俺は今怒りに震えているが――なるべく感情を押し殺した。そうしなければ奴に隙を与えてしまう。
ラルゴの王たるもの、常に冷静でなければ。
ヤツは今、恨みを募らせて俺を殺したくてたまらないはずだ。第三皇子の立場を奪った張本人だからな俺は。
それに支配王としてのプライドもあるはず。どんな手段を使ってでも、この戦に勝ちたいはず。だからこそ、俺の仲間を狙う……狙った。
もうこれ以上、好き勝手はさせない。
アルフレッドが言っていた。
恨みを持つ者には明確な殺意があるって。
つまりヤツは殺気立っているはず。
その気配を追えば――。
「――! そこだああああ!! 聖槍・グングニル!!」
殺意の方向へ槍を投げると、濃霧から姿を現すニールセン。
「この槍は厄介だ」
面倒臭そうに闇を何重にも展開して俺の槍を押し出した。闇の重ね掛けか。
「ニールセン、今度こそ決着をつけるぞ」
「……いいだろう」
ニヤリと笑い、世界聖書を浮かせる。
野郎、本気ってことか。
「いいのか、そこにはお前の弱点が埋め込まれているんだろ」
「知られているのなら隠していても同じことだ。それに、真の世界聖書は使い方次第では神器を超える究極のアイテムとなるのだ。その力を見せてやろうと言うのだ。光栄に思え」
勝手にページがめくられていく。
な、なんて膨大な魔力なんだ。
身構えていると、濃霧が晴れて――そこには無数の魔物が現れ、俺たちを取り囲んでいた。百を優に超えていやがる。
「な、なに!?」
「フハハハハハ! ラスティよ、まさかこの私が心臓だけを埋め込んだと思うか!? そうだ、魔物を聖書に“保管”しておいたのだよ」
モンスターを世界聖書に?
こんなの反則レベルだ。
何匹いやがるんだよ、これ!
「兄上! こ、これはいくらなんでも……まずいぞ」
「ハヴァマール、いざとなったら逃げろよ」
「いや、兄上を信じているのだ。それに、こちらは“雷神”なのだぞ。そろそろ本気を出してもいい頃合いなのだ」
「なにかしてくれるのか、ハヴァマール」
「おう。兄上の力には無限の可能性がある。無人島開発スキルの神髄を見せてやるのだ」
「そっちか。俺はてっきり大魔法を教えてくれるのかと」
「いやいや、兄上は島の王だからな」
「それもそうだ。よし、やってやろうぜ!」
「その意気なのだ。では、無人島開発スキルの『緊急招集』を追加するのだ!!」
き、緊急招集!?
なんだそれは!?
「ミカエル、ここから先は俺ひとりで行く」
「そ、そんな無茶な……」
「無茶でもやるしかない。スコルとハヴァマールも分かってくれるか?」
視線を向けると、案の定二人とも不満顔だった。
「ラスティさん!」
「兄上!!」
「二人とも分かってくれ。これ以上は危険すぎるんだ」
それでもスコルもハヴァマールも食い下がった。
「だめです。ラスティさんに万が一があったら……わたし、生きていけません」
「そうなのだ。兄上がいなくなったら皆困る! よ、余だって……泣く」
既に目尻に涙を溜めるハヴァマール。
ここまで思ってくれるなんて……俺は幸せ者だ。だからこそ、守りたい。
「ミカエル、ひとつ聞きたい」
「なんでしょう」
「俺も出来る限り二人を守る。でも……」
「分かりました。命に代えてもスコルさんとハヴァマールさんをお守り致しましょう。それでいいですね」
「ああ、頼む。その代わり、神聖王国は任せた」
「それで構いません」
交渉は成立した。
ミカエルにスコルとハヴァマールの守護を守ってもらう。もちろん、可能な限りは俺が守るけどな。
決まったところで、また濃霧の中へ戻っていく。
きっとどこかにニールセンがいるはずだ。
気配を探りながら歩く。
かなり歩いて――やがて、なにかの気配を感じた。これは、まさか。
その先には……。
「…………」
地面に倒れているシベリウスの姿があった。……な、なんだ。ボロボロだぞ。
「シベリウス!! お前、なんでこんな……瀕死じゃないか」
「…………お、遅かったじゃねぇか、ラスティ。僕としたことがヘマをした……」
「誰にやられた! それにお前は戦場にいたはずだ」
「ニ、ニールセンだ。奴が突然こっちの陣地に姿を現しやがったんだ。ラスティ、お前の仲間を狙ってな……。元副団長のエドゥアルド殿がストレルカ嬢を守ってくれたが……しかし、ヤツの力は圧倒的だった。そこで僕がヤツの気を引くために……ぐッ」
「もう喋るな、シベリウス……死ぬぞ!」
シベリウスの腕や足の骨が折れていた。えぐらるような傷跡も酷い。彼を殺さなかったのは俺に対する挑戦であり、警告でもあるのか。
いや、そんなことよりも俺はスコルにヒールを頼んだ。
「い、急いでシベリウスさんを治癒しますね」
「分かった、頼む」
シベリウスの傍に座るスコルは両手をかざし、ヒールを発動した。これで少しは……。
くそっ、まさか陣地に現れるなんて……
「兄上、このままでは戦況が悪くなるのだ。一刻も早くニールセンを撃破せねば」
「ああ……俺の親友に大怪我させた罪は重い。ハヴァマール、ここでスコルとシベリウスを見守ってやってくれ。ミカエル、守護を」
うなずくミカエル。
この場は彼女に任せよう。
俺はニールセンを叩く。
この近くにいるはずなんだ。
瞼を閉じ、周囲の気配を捉えていく。ヤツは濃霧に紛れてこちらの様子を伺っているはずだ。
……シベリウスがやられて、俺は今怒りに震えているが――なるべく感情を押し殺した。そうしなければ奴に隙を与えてしまう。
ラルゴの王たるもの、常に冷静でなければ。
ヤツは今、恨みを募らせて俺を殺したくてたまらないはずだ。第三皇子の立場を奪った張本人だからな俺は。
それに支配王としてのプライドもあるはず。どんな手段を使ってでも、この戦に勝ちたいはず。だからこそ、俺の仲間を狙う……狙った。
もうこれ以上、好き勝手はさせない。
アルフレッドが言っていた。
恨みを持つ者には明確な殺意があるって。
つまりヤツは殺気立っているはず。
その気配を追えば――。
「――! そこだああああ!! 聖槍・グングニル!!」
殺意の方向へ槍を投げると、濃霧から姿を現すニールセン。
「この槍は厄介だ」
面倒臭そうに闇を何重にも展開して俺の槍を押し出した。闇の重ね掛けか。
「ニールセン、今度こそ決着をつけるぞ」
「……いいだろう」
ニヤリと笑い、世界聖書を浮かせる。
野郎、本気ってことか。
「いいのか、そこにはお前の弱点が埋め込まれているんだろ」
「知られているのなら隠していても同じことだ。それに、真の世界聖書は使い方次第では神器を超える究極のアイテムとなるのだ。その力を見せてやろうと言うのだ。光栄に思え」
勝手にページがめくられていく。
な、なんて膨大な魔力なんだ。
身構えていると、濃霧が晴れて――そこには無数の魔物が現れ、俺たちを取り囲んでいた。百を優に超えていやがる。
「な、なに!?」
「フハハハハハ! ラスティよ、まさかこの私が心臓だけを埋め込んだと思うか!? そうだ、魔物を聖書に“保管”しておいたのだよ」
モンスターを世界聖書に?
こんなの反則レベルだ。
何匹いやがるんだよ、これ!
「兄上! こ、これはいくらなんでも……まずいぞ」
「ハヴァマール、いざとなったら逃げろよ」
「いや、兄上を信じているのだ。それに、こちらは“雷神”なのだぞ。そろそろ本気を出してもいい頃合いなのだ」
「なにかしてくれるのか、ハヴァマール」
「おう。兄上の力には無限の可能性がある。無人島開発スキルの神髄を見せてやるのだ」
「そっちか。俺はてっきり大魔法を教えてくれるのかと」
「いやいや、兄上は島の王だからな」
「それもそうだ。よし、やってやろうぜ!」
「その意気なのだ。では、無人島開発スキルの『緊急招集』を追加するのだ!!」
き、緊急招集!?
なんだそれは!?
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