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剣聖青年の魔剣・クリントヴォルト
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ワープポータルを抜けると、そこは見知らぬ土地だった。
周囲は荒野で何もない。
――いや、あった。
「……これは」
「ラスティ様……! この残骸はいったい……」
ストレルカが不安の声を漏らした。
周辺に家らしきものが灰になっているからだ。恐らく、ニールセンの軍が襲ったのだろう。
少し歩くと、人らしきもの転がっていた。
ここまでするのか、ニールセン。
グラズノフ共和国を襲った時も容赦がなかった。人をなんとも思わないんだ。……アイツは、破壊を純粋に楽しんでいやがるんだ。
早く止めないと、この惨状が帝都でも再現されるだろう。
「こんなの酷過ぎるのだ。兄上!」
ハヴァマールの怒りも尤もだ。俺だって憤りを感じている。許せん。男だけじゃない、女子供も死に絶えていた。
これが戦争か……。
いや、違う。
こんなのは戦争じゃない。
一方的な虐殺だ。
一刻も早くニールセンを――そう思った時だった。
「ラスティ様、邪悪な気配がひとつ来ております」
エドゥが反応し、警戒態勢に入った。……確かに、感じたことのない気配だ。これは恐らく、神聖王国ガブリエルの……!
予想通り、それは“敵”だった。
黒い渦を纏わせて現れる若い男。
まるで騎士のような……だが、白いタキシードで爽やかに微笑む。なんだ、コイツ。
俺たちの前に姿を現すと、男は胸ポケットから黒い薔薇を摘まんで香りを楽しんでいた。そして、それを俺の元へ投げた。
「はじめまして、ラスティ」
「俺を知っているのか」
「知っているとも。僕の名はラファエル・フォン・ベル。偉大なる支配者・ニールセン様に仕える“剣聖”でね」
剣聖……聖騎士に並ぶ最強のクラスか。
なにが違うかと言うと、具体的には分からないが……剣聖は凄まじい剣技と魔力を合わせ持つという。聖騎士みたいに極端な馬鹿火力とは違い、バランス重視なのだとか。
「ラファエル……これはお前がやったのか」
「だとしたら、どうする?」
「お前を倒す」
「僕を倒すだって? ラスティ、君の噂は聞いている。けれどね、力を過信しすぎない方がいいよ。特に君は仲間が多い。それが仇にならなければいいけどね」
黒い薔薇を投げ捨てるラファエルは、腰に携えている剣に手を伸ばす。コイツ、やる気か……!!
俺は万能つるはし『ゲイルチュール』を即召喚して構えた。
「ラスティさん!」
「大丈夫だ、スコル。みんな、離れていろ……この男は、俺に用があるらしいからな」
男は貼り付けたような笑みを浮かべ、黒い剣を抜いた。なんだあれは……真っ黒だが、赤い血管のようなものが張り巡っている。不気味だ。
「これは我が魔剣・クリントヴォルト。ただの剣と侮らない方がいいぞ」
「どうでもいい。お前を倒してニールセンの居場所を吐いてもらう」
「それは不可能だ。この僕を倒せるはずがないからね」
「そうか、なら倒してやる」
妙に自信満々なのが気になるが、俺だって今まで散々レベルアップしてきたんだ。守るべきものも多い。負けるわけにはいかないんだ。
こんな得体のしれない男にな。
「……フ。ラスティ、お前がここまで愚かだとはな」
「言ってろ、作り笑い野郎」
「ならば、お前に実力の差というものを分からせてやる」
その直後、ラファエルの姿が消えた。
なッ、嘘だろ。
どこだ、どこに!!
「ラスティ様、上です!!」
エドゥのおかげでラファエルの姿を捉えた。空に飛んでいたのか……いつの間に!
「くらええッ、サンダーブレイク!!!」
「秘奥義・葬送行進曲……!」
俺の稲妻と、
ラファエルの禍々しい黒い渦が衝突する。
な、なんだこの感じたことのない死の臭い。コイツ……生への欲求があまりになさすぎる。もはや、虚無でしかない。
やがて、俺のスキルとヤツのスキルは拮抗し、直ぐに弾け飛んだ。
「ご、互角だと」
「……いや、どうやら僕の魔剣の方が敗れたようだ」
ボロボロと崩壊していく剣。
マジか。
ほとんど手応えがなかったけど、俺の方が強かったか。
「ラファエル、諦めるなら意味だぞ」
「……というのは冗談」
「なに!?」
「魔剣はいくらでも生成できる。こんな風にね」
俺のゲイルチュールと同じように魔剣を生成するラファエル。……そうか、あの男の剣も俺と同じ召喚系ウェポンか。
まだ戦いは始まったばかり――ということか。
いいぜ、とことんやり合ってやる。
そして、この男をぶっ倒してニールセンの情報を引き出す。今はそれでいい。
「第二ラウンドってとこだな、ラファエル!」
「そうだな、ラスティ。僕は久しぶりに血が滾っているよ。これほど生を感じられるのは……ニールセン様と戦って以来だ。君は素晴らしい人間だ。僕をワクワクさせているからね……!」
ゲイルチュールと魔剣・クリントヴォルトが激突する――。
周囲は荒野で何もない。
――いや、あった。
「……これは」
「ラスティ様……! この残骸はいったい……」
ストレルカが不安の声を漏らした。
周辺に家らしきものが灰になっているからだ。恐らく、ニールセンの軍が襲ったのだろう。
少し歩くと、人らしきもの転がっていた。
ここまでするのか、ニールセン。
グラズノフ共和国を襲った時も容赦がなかった。人をなんとも思わないんだ。……アイツは、破壊を純粋に楽しんでいやがるんだ。
早く止めないと、この惨状が帝都でも再現されるだろう。
「こんなの酷過ぎるのだ。兄上!」
ハヴァマールの怒りも尤もだ。俺だって憤りを感じている。許せん。男だけじゃない、女子供も死に絶えていた。
これが戦争か……。
いや、違う。
こんなのは戦争じゃない。
一方的な虐殺だ。
一刻も早くニールセンを――そう思った時だった。
「ラスティ様、邪悪な気配がひとつ来ております」
エドゥが反応し、警戒態勢に入った。……確かに、感じたことのない気配だ。これは恐らく、神聖王国ガブリエルの……!
予想通り、それは“敵”だった。
黒い渦を纏わせて現れる若い男。
まるで騎士のような……だが、白いタキシードで爽やかに微笑む。なんだ、コイツ。
俺たちの前に姿を現すと、男は胸ポケットから黒い薔薇を摘まんで香りを楽しんでいた。そして、それを俺の元へ投げた。
「はじめまして、ラスティ」
「俺を知っているのか」
「知っているとも。僕の名はラファエル・フォン・ベル。偉大なる支配者・ニールセン様に仕える“剣聖”でね」
剣聖……聖騎士に並ぶ最強のクラスか。
なにが違うかと言うと、具体的には分からないが……剣聖は凄まじい剣技と魔力を合わせ持つという。聖騎士みたいに極端な馬鹿火力とは違い、バランス重視なのだとか。
「ラファエル……これはお前がやったのか」
「だとしたら、どうする?」
「お前を倒す」
「僕を倒すだって? ラスティ、君の噂は聞いている。けれどね、力を過信しすぎない方がいいよ。特に君は仲間が多い。それが仇にならなければいいけどね」
黒い薔薇を投げ捨てるラファエルは、腰に携えている剣に手を伸ばす。コイツ、やる気か……!!
俺は万能つるはし『ゲイルチュール』を即召喚して構えた。
「ラスティさん!」
「大丈夫だ、スコル。みんな、離れていろ……この男は、俺に用があるらしいからな」
男は貼り付けたような笑みを浮かべ、黒い剣を抜いた。なんだあれは……真っ黒だが、赤い血管のようなものが張り巡っている。不気味だ。
「これは我が魔剣・クリントヴォルト。ただの剣と侮らない方がいいぞ」
「どうでもいい。お前を倒してニールセンの居場所を吐いてもらう」
「それは不可能だ。この僕を倒せるはずがないからね」
「そうか、なら倒してやる」
妙に自信満々なのが気になるが、俺だって今まで散々レベルアップしてきたんだ。守るべきものも多い。負けるわけにはいかないんだ。
こんな得体のしれない男にな。
「……フ。ラスティ、お前がここまで愚かだとはな」
「言ってろ、作り笑い野郎」
「ならば、お前に実力の差というものを分からせてやる」
その直後、ラファエルの姿が消えた。
なッ、嘘だろ。
どこだ、どこに!!
「ラスティ様、上です!!」
エドゥのおかげでラファエルの姿を捉えた。空に飛んでいたのか……いつの間に!
「くらええッ、サンダーブレイク!!!」
「秘奥義・葬送行進曲……!」
俺の稲妻と、
ラファエルの禍々しい黒い渦が衝突する。
な、なんだこの感じたことのない死の臭い。コイツ……生への欲求があまりになさすぎる。もはや、虚無でしかない。
やがて、俺のスキルとヤツのスキルは拮抗し、直ぐに弾け飛んだ。
「ご、互角だと」
「……いや、どうやら僕の魔剣の方が敗れたようだ」
ボロボロと崩壊していく剣。
マジか。
ほとんど手応えがなかったけど、俺の方が強かったか。
「ラファエル、諦めるなら意味だぞ」
「……というのは冗談」
「なに!?」
「魔剣はいくらでも生成できる。こんな風にね」
俺のゲイルチュールと同じように魔剣を生成するラファエル。……そうか、あの男の剣も俺と同じ召喚系ウェポンか。
まだ戦いは始まったばかり――ということか。
いいぜ、とことんやり合ってやる。
そして、この男をぶっ倒してニールセンの情報を引き出す。今はそれでいい。
「第二ラウンドってとこだな、ラファエル!」
「そうだな、ラスティ。僕は久しぶりに血が滾っているよ。これほど生を感じられるのは……ニールセン様と戦って以来だ。君は素晴らしい人間だ。僕をワクワクさせているからね……!」
ゲイルチュールと魔剣・クリントヴォルトが激突する――。
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