無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗

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世界聖書とエルフの聖女

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 エドゥがいつの間にかお酒を飲んでいた。
 べろんべろんに酔った彼女は、なぜか愚痴っていた。

「聞いてよ、ラスティ様ぁ! ルドミラちゃんってば、最近冷たいのぉ!! 一緒にお風呂に入ってくれないし……一緒に寝てくれないの」

 どうやら、エドゥは酒が入ると“素”に戻るらしい。これが本来のエドゥアルドなのだ。いつものクールなエドゥはどこへ行ったのやらね。

「飲み過ぎだぞ、エドゥ」
「テオドールは最近、結婚しちゃうし……嫁二人もいるし! 自分はもうラスティ様しか……うあぁぁぁぁん」

 そんな風に泣いたりで……大変なことになっていた。なぜか俺がなだめることに。

「助けてくれ、ハヴァマール」
「……よ、余はドラゴンフルーツを食べるので忙しいのだ……」

 ハヴァマールは明らかに面倒くさそうに距離を取った。おま……。

「ストレルカ!」
「ごめんなさい、ラスティ様。わたくし、ブレア様とお話し中で……」

 くぅ、ストレルカも逃げたな。

 となると、残りはスコルだけだ。


「スコル!」
「わ、わたしはマーカス将軍と……」


 スコルも逃げるなんて……くそぉ。
 仕方ない、俺がエドゥの相手をするしかないか。


「てか、エドゥは酒を飲める年齢なのか?」


 俺がそう聞くとエドゥは、ピシッと固まってしまった。……やっば、聞いてはいけない質問だったか。


「ラスティ様のあほぉぉぉぉ……! 自分は三百歳ですよ! 三・百・歳!」


 そういえば、ルドミラもテオドールも神器エインヘリャルの“不老不死”の恩恵を受けているんだったな。

 スコルの父さん、守護聖人聖ヴァーツラフ・ズロニツェが作ったという神器アイテム。
 魔王との関係もあったようだが。


「悪かった、エドゥ。そんなつもりはなかったんだが」
「じゃあ、お嫁に貰ってくれるよねっ!?」
「え……」

「うあああああああん、ラスティ様が自分を貰ってくれないぃぃ! 自分だけひとりぼっちなんだぁぁあ」

「おいおい、ヤケになるなって」


 こりゃもうヤケ酒じゃないか。
 あぁ、俺が相手をするしかないんだなぁ……。

 観念した俺は、エドゥの相手をすることに。


 * * *


「――――やっと寝てくれたか」


 あれから時は流れ深夜。
 ようやく眠りについてくれた。

 その間、俺はずっとエドゥの苦労を聞かされた。大賢者も大変なんだな。

 とりあえず、もう酒は飲ませない方がいいと俺は判断した。絶対に。絶対に!


 お爺ちゃんみたいに足元ヨロヨロの俺は、スコルに支えられながら部屋へ戻った。


「お疲れ様です、ラスティさん」
「あ……ああ。百歳くらい老けた気分だよ。エドゥがあんな豹変するタイプだとは思わなかった」

「ですね。エドゥさんって、あんなにお酒を飲まれるなんて……」
「俺も意外だったよ。風呂でも入ってサッパリするかな」

「では、わたしもご一緒します」
「え……」

「ラスティさんのお背中を流したいんです」
「…………っ」


 そんな純粋な眼差しを向けられて、俺は顔が真っ赤になった。スコルとお風呂なんて、ほとんど――いや、多分ない。あるとしても温泉を作った時くらいかな。


「行きましょ……」


 積極的に手を引っ張られて、俺は動揺しまくった。……ウソ、スコルが俺をお風呂に連れていく?

 めっちゃ嬉しいけど、スコルは耳まで真っ赤にしていた。


「スコル、本当に良いのか」
「……はい。わたし、ラスティさんにもっと近づきたいんです」
「わ、分かった」


 断る理由もない。
 俺は流れるままに大浴場へ。


 深夜帯のせいか衛兵とかすれ違う人はいない。静かなものだ。


 やがて、大浴場の前にある脱衣所へ入った。


「「…………」」


 俺もスコルも黙ったまま、背を向けた。


「先に行っていいぞ、スコル」
「……あ、あんまり見ないでくださいね」
「信用してくれ」
「常に信用しています。でも、恥ずかしいので」

 しゅるしゅると服を脱ぐ音が聞こえる。スコルはシスター服だが、普通のシスター服と違って、ちょっと特殊なんだよな。少し脱ぐのが大変そうだ。

 しばらくしてスコルは先に向かった。

 さて、次は俺だ。

 乱雑に服を脱いで、適当に押し込めた。あとは腰にタオルを巻いて完了。……さて、行くか。


 大浴場に入ると、湯気が立っていて視界が悪かった。少し歩いた場所に魔導式のシャワーがあると聞いた。そこへ向かう。きっとスコルもいるはずだ。


 やがて、スコルの姿を発見した。


『……クク、クククク』


 そこには気絶するスコルを抱える――オッフェンバックの姿があった。

 コイツ、いつの間に!!


「……なッ!」
「長く待ちわびたぞ、ラスティ……!!」

「てめえええええ、スコルを!!」

「あぁ、今は眠らせただけだ。このエルフはいただく」
「放せ!! スコルを放せ!!」

「そうはいかん。聞いたぞ、世界聖書はエルフの聖女しかページを開けぬとな!! この女こそその聖女だ!」


 そうか、ずっと陰に潜んでこのタイミングを待っていたんだ。


「オッフェンバック……スコルを傷つけたら、お前を絶対に殺す」
「……これは驚いた。貴様ごときガキが、ここまでの殺気を放てるとは。……あぁ、そういうことか。この女とデキているんだな」


 ニヤリと笑うオッフェンバックは、毒々しいナイフをスコルの首元に向けた。……コイツは絶対に許さん。
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