無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗

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デビルクラーケン襲来

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 船は『ラルゴ島』を目指していく。
 新たな仲間トレニアさんを迎えて。


「トレニアさんの役職は、そのまま“ギルドの受付嬢”としよう。その方がイメージにぴったりだ」
「まあ、嬉しいです! ラスティ様のお優しいご配慮に感謝します」


 上品に笑うトレニアさんの笑顔に、俺は顔が逆上のぼせた。
 こ、これは……可愛すぎる。


「ちょっ、ラスティさん、鼻の下伸ばし過ぎです!」


 デレデレしているとスコルから怒られる。いてくれたのか。うん、この表情は間違いないな。頬をぷくっとさせているし。


「ごめんごめん。でも、トレニアさんが仲間になってくれるとはな」
「私も最後まで悩んでいました。ですが、ラスティ様についていきたいと思ってしまったんです。なんだか心がソワソワしちゃったんです」

「え、心がソワソワ?」

「はい、なぜかソワソワして……ドキドキもするんです。ラスティ様を見ていると、胸が痛んで辛いんです。なぜでしょう……?」


 そのトレニアさんの症状に、スコルとストレルカが顔を合わせて『ヤバイ』みたいな表情を浮かべていた。

 どうしたんだか。


「んー、それは大変な病気かもしれないな。島にいるルドミラかエドゥあたりに診てもらうか」

「はい、ありがとうございます。ラスティ様は、やっぱりお優しいです」


 手を握られ、俺は一瞬で顔が真っ赤になった。わぁ、トレニアさんの手……折れちゃいそうなほど細い。

 動揺していると、スコルとストレルカが俺をやや強引に引っ張る。――って、どこへ連れていくつもりだ!?


「ラスティさん!!」
「ラスティ様!!」

「ど、どうしたの二人とも。顔が怖いよ?」


 スコルは、ぷくぅっと膨れているし、ストレルカは唇を噛んで悔しそうにしている。どうなっているんだ。


「ラスティさん、わたしにはあんな顔してくれないですよね……」
「え、そんなことないよ。スコルには、いつも感謝してるし」
「そういうことではありません。だって、だって……さっきの表情はまるで……恋しているような」

こい? ああ、でも鯉モンスターは、巨大で骨が多くて……泥臭いんだ」

「……ラスティさんのバカあああああああ!!」


 スコルは叫んで船内へ戻っていく。
 何事……だ?
 俺、なんか言ったかな。


「そ、それより、どういうことですか、ラスティ様」
「どういうことって?」
「そ、そのぉ……わたくしだってラスティ様をお慕いしておりますのに」

 語尾が弱々しすぎて聞こえなかった。
 えっと、なんだろう?

 いや、とにかくスコルを追い駆けたい。

「ストレルカ、俺は君を頼りにしているよ。この船がなかったら何も出来ないし」
「えっ、それってつまり、わたくしは必要とされているってことですよね?」

「当然だ。君が必要だ」

「……う、嬉しいっ。泣いてしまいそうなほどに。――ああ、ラスティ様、誤解をして申し訳ありませんでした。スコルさんを追い駆けてあげてください」

「うん、そうする」


 * * *


 船内へ入り、俺とスコルの部屋へ入る。
 中にはやっぱりスコルがいた。

 ベッドで丸くなっていた。


「スコル、その……悪かった」
「トレニアさんみたいな清楚せいそな人がいいんですね」

すねねるなって。ほら、スコル」


 こうなったら頭をでる作戦だ。
 サラサラすぎる金髪に触れる。
 けど、それでもスコルは背を向けたまま。

 ……ん?
 でも、なんだか体を揺らしている。
 背中からは『嬉しい』と語っているようだった。ふむふむ、このまま撫で続けてみるか。


「ごめんなさい、ラスティさん。わたし……」
「いいんだ。俺の方こそスコルに構ってやれなくてごめんな」
「そ、そうですよ……もっとわたしに構ってください」


 ようやくこちらを向くスコル。頬を紅潮させ、やや涙目。そうか、寂しい思いを――『ドォォォォォォン!!』――と、いきなり船体が激しく揺れた。


「なにごと!?」
「そ、そんなぁ……こんな大事な時に」

「スコル、ここは危険だ。上へいくぞ」
「は、はい……」


 部屋を出て甲板へ向かう。
 ストレルカが大精霊『オケアノス』を召喚して大津波を止めていた。……な、なんだ。

「来られましたか、ラスティ様、スコルさん!」
「なにがあった!」

「ボスモンスターの『デビルクラーケン』です!」
「なんだって!?」


 [デビルクラーケン]
 [属性:水]
 [種族:動物]
 [詳細]
  海に潜む巨大な悪魔。
  遭遇すれば船は一瞬にして沈むと呼ばれている。触手は高い攻撃力を持ち、クリティカル率が高い。弱点は不明。


 船の前に現れる巨大なイカ。
 な、なんて大きさだよ。
 山のように大きくて、触手を何本もうねらせている。


 大きな触手が伸びてきて、船体を破壊しようとする。まずい!! 俺がなんとかするしかないな。


 戦闘態勢に入ったその時だった。


 ドンッと激しい音がして、敵の触手を弾いた。……え? って、あれは……あの空高く飛び跳ねている乙女はトレニアさん!?

 嘘でしょ……!
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