無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗

文字の大きさ
上 下
140 / 476

帝領伯のお屋敷

しおりを挟む
 ――準備完了。

 いよいよ出発だ。
 予定通り、俺、スコル、ストレルカの三人。大広間に集まり、ルドミラ達に見守られながらエドゥのテレポートを待つ。

「では、行ってくる。ルドミラ、エドゥ、テオドール……そしてハヴァマール、島を頼む」

 四人とも不安気に俺を見つめる。なんでそんな余裕のない顔なんだか。どうせなら、笑って見送って欲しいものだがな。


「あ、兄上……」
「心配すんな。ちょっと帝国を見て回ってくるだけだ。直ぐ戻る」
「うん。絶対に戻ってくるのだぞ」
「約束する」

 手を振って別れ、ついにテレポートが開始した。


 * * *


 二千年以上の歴史を誇る『ドヴォルザーク帝国』は、あまりに広大。ルサルカ大陸の三分の一が帝国の領土。残る範囲が『グラズノフ共和国』や小国だ。

 二つの国家は領土を巡り長い間、戦争を続けていた。

 けれど、突如現れた魔王によって戦況は大きく変化。甚大な被害を受けた帝国と共和国は、一時的に共闘。オラトリオ大陸に位置する『エルフの国ボロディン』にいる大神官アルミダを頼り、勇者ルドミラを迎えた。

 勇者の活躍により、魔王軍は一気に傾いたのだが――。


「――帝国の歴史は以上ですわね」


 俺の頭を優しく撫でるストレルカ。今、俺はなぜか膝枕されていた。どうしてこうなった……?


 さかのぼること、一時間前。


 エドゥのテレポートでドヴォルザーク帝国に到着早々――噴水に落ちた・・・・・・。おかげで全員が“ドボォ~ン”と着水。ずぶ濡れとなった。


 なんで噴水の中に出るんだよぉ!


 もしかしたら、クソ兄貴も強制テレポートを食らって、こんな目に遭っていたんだろうか。

 おかげで風邪を引いてしまうところだ。そんなわけで、ストレルカのお屋敷に招待され――風呂というか大浴場を借りたわけだ。


「帝国の話をしてくれてありがとう。俺は、どうも帝国に関心がなくって、その辺りの知識が皆無ゼロだったんだ。おかげで歴史を知れた」

「これくらいお安い御用です。それより、スコルさんですが」


 スコルは今、入浴中で戻ってこない。この流れからして、ストレルカもずぶ濡れのはずだが……彼女は特別だった。

 なぜなら『大精霊オケアノス』と契約を交わしているからだ。だから、ストレルカ自身も“水属性”となり、雨だろうが海だろうが服は濡れないし、海なんか海底を歩けるらしい。

 ただし、魔力は使うようで長時間は無理のようだけど。それでも便利に変わりはない。なんだか羨ましいな。

 その効果のおかげで、ストレルカは着替える必要はなかったわけだ。

 俺は先にスコルを風呂へ行かせようとしたが、彼女が拒否した。俺の体の方が大切だからと聞かなかった。

 いやいやいや、スコルの体の方が大切だ。だから俺は必死に説得したが――スコルは頑なに俺を優先させた。


 で、その結果がこれだ。


 見られたら殺されるかもな……。


「ああ、スコルが戻ってきたら街へ戻るか」
「それなのですが、今日はわたくしのお屋敷で過ごしませんか? というより、お父様とお母様に紹介したいんです」

「ストレルカの両親に? でも、俺はもう皇子ではないよ。ただの島の主だ」

「皇子であろうとなかろうと関係ありません。それに、島はいずれ国となるのですから、一国の王様ですよ。そんな王様をご紹介できるのですから、両親も光栄でしょう」


 そんな大層なものではないけどなぁ。
 でも、普段お世話になっているし……少し会っておくか。なんて思っていると、大広間の扉が開き――ストレルカの両親らしき男性と女性が入ってきた。


「ストレルカ! 帝国に戻って来たか!!」
「この馬鹿娘!! 今までどこに行っていたのです!!」


 いかにも貴族な格好をした爽やかなイケメンの男。それと煌びやかなドレスを着る女性。二人とも若っ。

 両親は、ストレルカの前に立って早々――彼女の体を羽交い絞めして、往復ビンタを食わせていた。


「ひぃぃいっ!! 痛い、痛いですわ!!」

「ス、ストレルカ!?」


 なんて親だよ。
 実の娘に容赦なしかよ!!


「まったく、お前というヤツは商船と取引アイテムを横領しおって!! 大事件になっていたんだぞ!!」


 バシバシバシバシバシ……と、ビンタが続く。

 こんなの暴行じゃないか。
 見過ごすなんて俺にはできない。

 俺は居ても立っても居られず、父親の腕を掴んだ。


「やめてください、ストレルカのお父さん」
「貴様、何者だ! 私は『ゲルンスハイム帝領伯』だぞ! 気安く触れ……あれ。君の顔、どこかで……」

 俺の顔を見て顔色を変えるゲルンスハイム帝領伯。どんどん青くなっていき、ついにストレルカの手を離すと――土下座した。


「ここここ、これは! 第三皇子のラスティ・ヴァーミリオン殿下!! 娘の前でなんて恥さらしを……死んで詫びます」

「死ななくていいし、俺はもう第三皇子ではない。王位継承権もないし」

「……え? そうなのですか? って、なら、ただの平民ではないか!!」


 もう、直ぐ態度変える~。
 これだから貴族ってヤツぁ。
 だけど、我慢だ。


「お父様、止めて下さい。彼は第三皇子ではありませんが、ある島国の王様です! ラスティ様は、わたくしを助けてくれたんですよ」

「な、なんだと……しかしだな」

「わたくしの人生は、ラスティ様に捧げる覚悟です。もし勘当なされるなら、どうぞ」

「なッ! 船もろくに操作できず、船長でもないくせにお前というヤツは!!」


 またビンタが飛んでこようとしていたが、俺が止めた。


「お義父さん、それ以上の暴力は俺が許さんのですよ」
「誰がお義父さんじゃ!! ラスティ、貴様はもう第三皇子でもないのなら、関係のないお前は家庭の事情に突っ込まんでくれ! めざわりだ!!」

「関係はおおありだ。ストレルカは、俺の大切な仲間。あの島には、彼女の力が必要なんです。船の操縦も完璧だし、水だって常に綺麗にしてくれている。海が穏やかなのもストレルカのおかげだ。なぜそれを認めない! つーか、お義父さんが認めなくとも、この俺が認める!!」


 おや? 一気に言い返したら、帝領伯が言葉に詰まっていた。次第に汗を流し――ついに泣き出した!?


「ぐっ……ぐおおぉぉぉぉぉおぉおおん……!!」

「えええッ!?」

「ストレルカがそんなにも人の役に立っていたとは……お父さんは嬉しいぞおぉぉぉぉぉおおうおうおうおう……」


 怒ったり泣いたり、この人、実は情緒不安定なのか?
しおりを挟む
他にも作品を連載しています↓
作品一覧

無人島Lv.9999は他のサイトでも掲載中です↓
なろう版:【無人島Lv.9999
カクヨム版:【無人島Lv.9999
感想 14

あなたにおすすめの小説

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。 魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。 『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...