無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗

文字の大きさ
上 下
139 / 476

騎士団長と副団長

しおりを挟む
 エドゥとテオドールの帰りを待つこと一時間。どうやら、元奴隷の女の子達を家に案内して生活の仕方とかも教えたようだ。

 これで彼女たちは普通に暮らせるだろう。
 しばらくは様子見にして、俺は全員にさっきのことを話した。


「そういうわけで、まずはドヴォルザーク帝国へ向かう。異議のあるものは?」


 ――なし。
 あとは同行メンバーだが、俺、スコル、ストレルカの三人で決定。

「って、余はお留守番か!?」
「悪い、ハヴァマール。お前はまだ魔王としての認識が強いんだ。特に、ドヴォルザーク帝国ではね。だから下手をすれば殺されるぞ」

「そ、それは困るのだ……」

 かつて俺の親父は、ドヴォルザーク帝国の皇帝陛下だった。だけど、その正体は『魔王』だった。あのアントニンこそが魔王であり、ハヴァマールに不名誉を与えた張本人だ。
 魔王なのだから、人間に化けてやりたい放題。

 聖魔伝説によれば、一度は、ルドミラたちに押されて弱体化。死に追いやられたらしいが、世界聖書……実は『破壊の書』に“魔王ドヴォルザーク”の魂の一部を封印。その後は、ただの人間として皇帝陛下の座についていたようだ。いつしか“魔王ドヴォルザーク”として君臨する為に――。

 思えば、俺はなんてヤツに育てられていたんだか。いや、正確に言えば、俺の親は『アルフレッド』といっても過言ではない。

 俺をずっと傍で見守ってくれて、たくさん大切なことを教えてくれた。


 ……そうだ、アルフレッド。


 アントニンがこの島に攻めてきて、彼は帰らぬ人に。


 今は、湖の中心にある小島に作った立派な墓で永眠している。

 あれから、しばらくは辛く、悲しい毎日を送ったけど、みんなに支えられたおかげで俺は今も何とか挫けずに前向いて生きていた。

 みんながいなかったら、今頃俺は廃人になっていたかもな。


「そんなわけで、ハヴァマールはこの島を守ってもらう」
「分かったのだー…」

 しょぼんと猫耳を垂らす我が妹。向こうで散々な扱いを受けるよりはマシだろう。

「あと、ルドミラとエドゥ、そして、テオドールだが」

 先にルドミラが反応した。

「こちらは気にしないでいいですよ。私は帝国の騎士団長ではありましたが、三日前、正式に辞任しましたから。これで晴れて私はこの島の住人です」

「騎士団長を辞めちゃってよかったのか?」

「はい、もともと私は騎士団長代行のような存在でした。本来・・の騎士団長が復帰するはずです」

 ルドミラの前任の騎士団長らしい。理由は分からないけど、しばらくの間はルドミラに騎士団長の席を譲っていたようだが。
 俺は前の騎士団長は見たことがないんだよな。

「そうか。後はエドゥだが」

 副団長であるエドゥもレオポルト騎士団を退団した。そのせいか、騎士団は混乱中らしい。トップがいないのも異常だが、副団長すらいない異様な状況となっていた。

「自分も帝国に未練はないです。今後、ラスティ様の背中を支えますので」
「分かった。となると、テオドールは特にないか」

 一応、話を振るとテオドールは憤慨した。

「特にないとは失礼な!」
「す、すまん。でも、テオドールってボロディンにいたじゃないか。ほぼ無関係では」
「その通りだ!!」
「なんでそんな自信満々なんだよ!?」

 じゃあ、やっぱり無関係じゃないか。

「いや、そうでもない。ルドミラとエドゥをレオポルト騎士団に紹介したのは、この私でね。もともとはドヴォルザーク帝国の『城塞伯』だったんだよ」

「そうだったのか!?」
「百年前にだけどね。でも、アントニン皇帝に勇者ルドミラとの関係がバレちゃってさ。それで帝国を追放された過去がある」

 マジか。
 テオドールってドヴォルザーク帝国出身だったのかよ。意外な事実が発覚した。そうか、騎士団に紹介したり、無関係ってわけでもないのか。

 ちなみに、ルドミラはエドゥの力で名前や外観を変える魔法を使って、皇帝を含む周囲から正体をバレないようにしていたらしい。

 そういえば、帝国は何気に『勇者』と『魔王』が実質協力関係になっていた時期があったわけだ。しかし、お互い正体が分からなかったようだし、まさか皇帝陛下が魔王だとは思わない。

 でも、世界聖書がキッカケとなって――あの決戦となった。

 となると、ルドミラ達の知識もあった方がいいのかもしれない。連絡手段が欲しい所だな。

 う~ん、と考えているとスコルの視線に気づいた。気になって俺は見つめ返した。すると、スコルは頬を赤くして困惑。なんなんだ~?


「どうした、スコル」
「い、いえ……何でもないんです」
「ん~? そうか。とにかく、この後直ぐに出発しようと思う。エドゥ、テレポートとか可能か?

「はい。この『島』と『帝国』をメモにしていますから、飛ばせますよ」


 おぉ、なら移動は一瞬だな。
 準備が出来次第、出発だ。
しおりを挟む
他にも作品を連載しています↓
作品一覧

無人島Lv.9999は他のサイトでも掲載中です↓
なろう版:【無人島Lv.9999
カクヨム版:【無人島Lv.9999
感想 14

あなたにおすすめの小説

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。 魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。 『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...